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第16話 祝・勇者シンタロー、遂にパーティー結成

 物分かりのいいみこが納得するなり、真太郎は「チュウって、どうなのよ?」みたいな顔でイナバに話を振る。

「見た目がちょっと可愛げな中学生の女の子だろうと、チュウはチュウって事みたいっスね」


「チュウは、やはり地雷キャラでござるなぁ。しかもゲームの時より、凶暴になっていて、まるで手におえない猛獣でござるよ」

 真太郎とイナバが、傍若無人で無駄に攻撃的な地雷キャラだったゲーム時代の刹那を思い出すなり、揃ってため息をつく。


(危うく怪我する所だったなぁ。だが、チュウを煽りまくって凶暴な所を見せる事で、奴が気の強い厄介者って事を師匠に印象付けられたはずだ。ものの話では、小児性愛者は大人しそうな子しか狙わないっていう話だから、これでチュウが師匠に狙われる可能性は低くなったと言っていいだろう。いや~、こんなアホを気遣ってやるなんて、俺って超良い奴だなぁ)

 実は、先程の真太郎の会話の全てが、ロリコン疑惑濃厚なイナバから刹那を守る為のものだったのだ。


「まぁ、いずれにせよ。チュウを一人にさせるのも色々と危ないですし、ゲーム同様に俺らがまた引き取るしかないでしょう」

 刹那は悪質なPKとして運営にアカBANされそうだった所を、真太郎達に拾われて命拾いしていたという情けない過去があった。


「凶暴なチュウといえど、実際はただの女子中学生なのでござる。しかも黙っていれば美少女なのだから、危険なロリコンや更に凶悪な変質者に襲われても仕方がない、と言えるでござる。守ってあげられるのならば、男の拙者らが守ってあげなくてはいけないでござるよ」

 お前が言うか、という様な事をイナバが割とカッコいい顔で言う。


「出来れば、女の人に引き取って貰った方がいいんだろうけど、『勇者ゲーム』では、そうそう頼りになる女性プレイヤーなど見つからないだろうしねぇ」

 真太郎の弁に反して、『勇者ゲーム』は、とある大手ギルドの存在により、他のMMORPGに比べると女性プレイヤーの人数が随分と多かった。

 だが、男女比で見れば、女性プレイヤーの数は全体の四割弱という所だろう。そう言う意味では、真太郎の言う通り、女性プレイヤーを見つけるのは難しいと言えた。しかも、今の状況では至難の業になるだろう。


「チュウ。お前、俺の仲間になれてよかったな。ひとりぼっちでいたら、もう俺の口からは言えないぐらい酷い事になってたと思うぞ」

「はぁ? なんだソレ? つか、その妹を慈しむ兄の様なキショい顔はなんなんだよ? やめろよ、吐きそうになるだろ!」

 そんな何気に仲間思いの真太郎の気苦労を知らない刹那が、彼に悪態をつく。


「チッ、人の気も知らないで。俺は今、お前を守ってやったんだぞ!」

「はぁ? 何の話だよ? お前が時折見せる意味不明な言動は、フツーに怖いぞ」

 真太郎と刹那はゲームの中だけの関係であり、顔を合わせるのは今回が初めてである。

 だが、何故かここでは、キツめの罵り合いをしても本気の喧嘩にならず、まるで兄妹喧嘩をしているみたいに妙に打ち解けていた。

 やはり、ゲームとはいえ、長年の付き合いがあると言うのは、それなりに人間関係を濃くするものらしい。 


「チュウめ、相も変わらず本当に口の悪い奴だ。その口の悪さで、無駄に喧嘩売ったりして、誰にも相手にされなかったらから一人でいたんだろ? お前、コミュ障っぽいもんな」

 悪口に少し苛立ってきた真太郎が、口の悪い刹那に対して嫌味を言う。

すると、刹那が急に伏し目をして、しおらしくなった。


「……うるせーな、俺は一人が好きなんだよ」

(ふ~ん。コミュ障って言われても突っかかってこないんだ。つー事は、結構コミュ障で悩んでるっぽいな。こいつ、学校でいじめられてたりして。その鬱憤とかリアルのコミュ障な性格の裏返しで、こんなに強気で凶暴なんじゃねーだろうな? 多分、そーなんだろうなぁ。中学ん時、こいつみたいな奴いたもんなぁ)

 何気に洞察力がある真太郎は、なんとなくだが刹那の正体を垣間見た気がした。


「コミュ障サバイバーか。お前らしくていいんじゃないの?」

 とりあえず、女の子の心の傷を弄ぶのは嫌だったので、遠回しに気遣う真太郎だった。

 すると、何故か刹那ではなく、イナバが反応した。


「小生もコミュ障サバイバーでござるよ。シンタロー殿と出会うまで、禄に人と話す事すら出来なかったでござるからな。ゲームではあんなにリア充だったのに……まったく、お笑いでござるよ。デュフフフ……」

 そう言って、かつての栄光に思いを馳せるイナバは、刹那よりも深刻な感じだった。


「じゃあ、二人合わせてコミュ障サバイバーズっスね。成程、半数がコミュ障という禄でもないパーティーがここに誕生した訳だな。こりゃ、実にめでたい!」

 暗くなって来た雰囲気を明るくしようと、真太郎が頑張っておどけてみる。


「しかし、チュウが自分から仲間になりたがるとは思わなかったな」

「勘違いするな、別にどうしてもお前と仲間になりたいという訳じゃない」

(『お前ら』じゃなくて『お前』って言ったな。こいつ、師匠をアウトオブ眼中してやがる。はぁ……これからは師匠に加えて、こいつ自身と、こいつと師匠の人間関係を取り持たなきゃならんのか。更にみこちゃんまで……あぁ、めんどくさいなぁ~、気いつかいな性格だと苦労するぜ)

 そんな事を思いながら真太郎は、拗ねている様な刹那の相手をする。


「おや? せっちゃんは、随分つれないじゃあないか。俺は君と仲間になれて、実は嬉しいんだよ?」

 コミュ障の二人に比べると大分、人間の扱いに慣れている様子の真太郎だった。

 というのも、ゲーム時代は一応、真太郎がこの面子のまとめ役だったからだ。


「所で、どうしても仲間になりたかった訳じゃない君が、俺達の仲間に加わったのは、どういう理由があるのかな? 良ければ、教えてくれないかい?」

 そんな真太郎は、早速昔取った杵柄とばかりに会話の司会進行を始めた。


「……ふん。お前は知らないだろうが、今、ギルド未所属とかパーティー組んでない奴は、変な奴らにスゲー絡まれるんだよ。ナンパや嫌がらせもあるけど、それ以上に、大手ギルドの連中が戦力増強でも企ててんのか、片っ端からソロプレイヤーにスカウトをかけてんだ。んで、それ見て、慌てて中小の木端ギルドも人集めしやがってさぁ。そんな訳で、今ソロでいると色々と面倒なんだよ」

「成程ねぇ。随分と街の方は、面倒な事になっているみたいだね」

「だから、変な奴らの仲間になるくらいだったら――」


「気心の知れた俺達と一緒にいた方が、いくらかマシって事か」

 本心は分からないが、なんとなく刹那の考えている事が分かった真太郎だった。

「おい、人の話を遮るんじゃねーよ! お前のそういう人の話を聞かない所は、マジでコミュ障だからな! 俺の事、馬鹿に出来ねーからなっ!」

 真太郎に振り回される刹那が、元気を取り戻して小動物みたいにキーキー騒ぎ出した。多分、顔見知りの真太郎と仲間になれた事で、幾分か安心したのだろう。

 

 すると、真太郎と刹那の話を脇で聞いていたイナバが、口を開いた。

「現実世界ならいざしらず、この異世界で女性プレイヤー、しかも、JCが見ず知らずの人間と一緒にいるのは危険でござるよ。チュウ、賢い選択をしたでござるな」

 イナバがゲーム時代と同じように師匠ぶりながら、荒ぶる刹那に接する。


「うっせーよ、キモオタ! つかお前、マジで誰だよっ!?」

「ござっ!? イナバでござるよっ! 知っているでござろう?」

「あのイナバが、お前の様なキモオタであってたまるかっ! 殺すぞッ!」

 しかし、ゲーム時代とあまりに違いするぎる見た目のせいか、刹那は完全に敵に対する態度でイナバに接してしまう。


(チュウ、気持ちは分かるがそれは言っちゃいけんよ)

 などと思いつつ、あえてフォローに入らない真太郎は、良くできたまとめ役だった。


「まぁ、チュウは、みこちゃんみたいに愛想がよい可愛い女の子って訳じゃないから――」

「あはっ! 愛想がよくて可愛いだって! シンタローさんったら、いやねぇ!」

 真太郎に可愛いと言われたみこが、ほっぺたを両手で押さえて嬉しがる。


「……。ま、とにかく、その性格のチュウには、この状況で一から人間関係を築くのは難しいだろうね。とりあえず、お前は俺達と一緒にいた方がいいわ」

 真太郎が自分の事を棚に上げて、偉そうに言う。

 

 だが、確かに刹那の無駄に攻撃的な性格は、トラブルの元になる事必至だ。そうなると、下手に一人にすれば確実に厄介事に巻き込まれてしまうはず。

 ここは彼女の為にも、多少面倒でも一緒にいてやるのが、男の優しさというものだろう。


「偉そうに語りやがって。いいか、勘違いするなよ。俺は、お前達に決して気を許したわけじゃないんだからな。もし、俺に妙な事をしたら、この剣で斬り殺してやるから、そのつもりでいろよ……?」

 などと言って、袖から仕込み剣を飛び出させて凄んでみせる刹那だった。


「はいはい。刹那お嬢様のご機嫌を損ねない様に、善処いたしますよ」

(まぁ、訳の分からん異世界で、リアルの知り合いでもなんでもねー男共と一緒にいるんだから、警戒して当然だよな。とりま、こいつの攻撃的な言動には目を瞑っておこう) 


「とはいえ、俺もこの危険がいっぱいの訳分からん世界に来たばっかりで、そんなに余裕がある訳じゃないんだ。お前に気を遣ってばかりもいられない。俺の態度が気に入らなかったら、さっさとどっか行って他の奴とパーティーを組んでくれよ?」

 真太郎がシビアな所を見せるなり、刹那がうっと言葉に詰まった。


「あ、ああ……。そうだな……お前らが、ふざけた態度を取ったら、すぐにそうさせてもらうぜ。せいぜい、俺の気を損ねない様に万全の気を遣えよ?」

 とは言うものの、我儘で子供っぽく独善的な迷惑地雷プレイヤーの刹那に、真太郎達以外の友達や知り合いなどいるはずがなかった。仮にいるとすれば、得体の知れないキモオタを引きつれている真太郎などに寄りつくはずがない。

 

 実際、真太郎もそれは薄々分かっていた。

 彼の知る限り、刹那のフレンドリストはかなり少なく、十人いるかいないかだ。

 そんな狭すぎる交友関係の中で、真太郎が一番刹那と仲が良かったのだから、彼女が警戒しつつも、彼の側を離れたがらないのは致し方のない事だった。


「はいよ、出来る範囲でね。しっかし、こんな得体の知れない世界で、一人きりでよくここまで生き延びれたなぁ。チュウは、結構すごいよ」

 話が一段落するなり、真太郎が何気なく素朴な感想を漏らす。

 

 すると、何故か刹那が急に照れでもしたかの様に目を泳がせ、頬を微かに赤く染めた。

「は、はぁ? きゅ、急になんだよ? 俺が凄いのは当然だろっ!」

「ホント、そうだよ。ここは俺達が良く知る『勇者ゲーム』の世界にクリソツだけど、この世界は、とても能天気にゲームの中だとは言えない様相を呈している。殺人上等のイカレタPKやモンスターなんかが、普通にうろちょろしているこんな危険な世界で、一週間も無事に生き残ったお前は、女だてれらに凄い奴だよ」


(ゲーム時代のバカな地雷キャラ『チュウ』だと思っていたから今まで、軽視してたけど、冷静になって考えてみると、中学生の女の子が、この状況下で発狂もせずにたった一人で一週間生き延びたのって相当凄いぞ。話した感じ、ゲームでの印象に比べて大分マシな感じだし、仲間にしておいて損はないだろう)

 そんな強かな計算ごとをしながら、真太郎は刹那を新たな仲間として迎え入れた。


「んじゃ、とりあえずいい感じに人数も揃ったし、パーティーでも組みますか?」

「おい、軽いな。即席の野良パーティーみてーじゃねーか」

「和解の仕方が、全力で殴り合った拙者の時とは、大違いでござる」

「あたしの時は、感動の出会いだったよ。そう、お姫様を王子様が助けに来たみたいなっ! きゃー!」

「んじゃま、そんな感じでパーティー結成します。これから、シクヨロ」

 そんなあっさりした感じで真太郎達は、パーティーを結成した。


「おい。こういうのって、剣を合わせたり、拳を突き上げたりしたりするもんなんじゃないのか? 折角のパーティー結成なんだし、なんかやってもいいんじゃねーのか?」

 パーティー結成の儀式があまりにもあっさりし過ぎている事に、刹那が不満を漏らす。


「いいよ。そんなのは映画や漫画の中だけの話だろ? それに俺は、あんまりテンションが高いのは好きじゃないんだ。チュウを仲間にしたぐらいで、いちいちはしゃげるかよ」

「なんだその斜に構えた態度は、お前は中二病かよっ! もっと熱くなれよっ! 今からリアル『勇者ゲーム』が始まるんだぞっ!」

 妙に冷めた所があるクールな真太郎に対して、中二病の癖に意外に熱い所を見せる刹那だった。


「ま、いいや。お前のそういう、普通の人が熱くなる所で、妙に冷めてるひねくれ具合には慣れてるからな。しかし、馬鹿なお前らと、ゲーム以外でもパーティーを組む事になるとは思わなかったぜ」

 刹那が呆れつつもどこか嬉しそうに言うと、イナバがオリエンスの街を指さした。


「めでたくパーティーが結成された次は、街に行くのでござるよな?」

「おい、キモオタ。先に言っておくぞ、絶対に宿屋では部屋は別だからなっ!」

「こら、チュウ。ここはゲームではなく、リアルなのでござるよ。年上にはもっと丁寧な言葉遣いをした方がいいでござる。拙者はいいけれど、他の人にそんな態度だと喧嘩になってしまうでござるよ」

 イナバが大人らしい事を言って、キモオタを警戒する刹那をたしなめる。


「うっせ、キモオタ! お前ごときに話しかけてやってるだけ、ありがたいと思え、ボケ!」

「ござっ!? シンタロー殿ぉ~! チュウが拙者の事、キモオタって言ってイジメるでござるぅ~!」

 女子中学生に泣かされた情けないイナバが、真太郎に助けを求める。

 だが、真太郎が返した言葉は、あまりにも予想外過ぎるものだった。


「おめーら、何ぬるい事やってんだよ。これから魔王をぶっ殺しに行くんだぞ、気合入れろよな」

「「「え?」」」

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