番外編1 勝手に開催! 裏バトルロイヤル!
全ての敗者は、死ぬわけではない。
敗者は起き上がり、勝者を殺す。
生き残った者が強者――それが、弱肉強食の基本ルール。
だが、強いから生き残った訳ではなく、たまたま生き残ったから強者と判断されただけ。
それが、弱肉強食の実相。
勝者と敗者の生死を分けた要素――それは、運。
弱肉強食の弱とは、運の弱さ。
頭脳的に優れていれば、あるいは肉体的に優れていれば、それだけで生き残れるほど、世界は単純ではない。
どうしようもなく馬鹿で病弱なハナタレのクズ野郎でも、資産家の子供なら一生安泰だ。
逆に、頭脳明晰で強健な体を持っていても、餅をのどに詰まらせて死ぬ事もある。
つまり、生命を左右するのは、運の強さ。
だが、全てを支配する運すらもねじ伏せる狂った者がいたとしたら……。
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大団円で終わったバトルロイヤルはその後、暫定的に作られた『魔王討伐軍』が主催の宴になだれ込み、オリエンスの街はちょっとした祝杯ムードに包まれていた。
そんなお祭り騒ぎを尻目に、少女たちは戦場にいた――。
「結局、いつもの下らねー茶番で終わりですかよっ!」
「卑怯な手を使って優勝しやがって、このマンカス女がっ!」
「お前ごときが優勝者なんて、気に喰わないのだっ!」
戦場に集まったのは、小さな修羅が三名――
ロリっ娘くノ一コンビ・猿飛うきょうと霧隠さきょう。
そして、『海賊王』かなこクライシス。
「「「ここで、真の優勝者を決めるっ!」」」
荒ぶる三人の修羅に戦いを挑まれたのは――
「ん? 各勢力のみそっかす共? オリエンス最強のこの俺に戦いを挑むとは、また死にたいのか……?」
ご存じ、バトルロイヤルの覇者・煉獄刹那だ。
「あ、あの~……なんで、あたしまで?」
そして、見届け人として修羅たちに拉致されて来たみこ。
「なんだ、その口の利き方はぁーっ!? すっかり最強気取りですかよっ!?」
「このぼぉけなすがぁっ! のぼせ上がってんじゃねーですよっ!」
刹那のライバル的ポジションである双子忍者が、強者を気取る刹那を口汚く罵る。
「お前を倒して、このかなこ様が真の優勝者になるのだああああーッ!」
バトルロイヤルで出番がほとんどなかったかなこが、ここぞとばかりに刹那に襲いかかった!
「ハッ! 雑魚が。飛んで火にいる夏の虫だぜっ!」
名実ともにオリエンス最強の女になった刹那が、勝者の余裕を見せつける。
そんな生意気な刹那の態度を見た瞬間、双子忍者がブチキレた。
「はああああああああ? うちらが虫だとぉー!? 上等ですよっ! 火に飛び込んだって死なない虫がいるって事を教えてやりますよっ!」
「そしてテメーを『虫恐怖症』にしてやりますよっ! 症状は毎晩大量のいろんな虫に○○○を○○○されて○○する悪夢を見るっ! これで決まりですよっ!」
「「ぶっこぶっ殺すっ!」」
「この子たち、可愛い顔して怖すぎぃーっ!」
ロリで馬鹿っぽい見た目からは想像がつかない凶暴さを発揮する三人の修羅たちの恐ろしさを目の当たりにしたみこが、目を丸くして驚愕する。
「この海賊王こそが最強なのだっ! 死ねいいいいいいいいいいいいいいーっ!」
サーベルを振り回すかなこが、真っ先に刹那に襲いかかった。
「そんなへなちょこソードが、この俺に当たる訳ねーだろ!」
歴戦の勇士である刹那に、キッズの攻撃など当たる訳がなかった。
刹那は攻撃をヒラリと避けると同時に、かなこの頭にチョップを叩き込む。
「うわああああああああああああああああん! 痛いのだああああああああーっ!」
クッソ雑魚いかなこが、大声で泣き出した。
「えっ!? あ、あのっ! ご、ごめん!」
マジ泣きするかなこにびっくりした刹那は、根がいい子ゆえに思わず謝ってしまう。
「強くやり過ぎちゃった?」
「嘘泣きなのだっ!」
そう言って泣きやんだかなこが、謝る刹那のすねに蹴りを叩き込む。
「ぎゃあっ!」
「この海賊王が、お前のへなちょこチョップぐらいで泣く訳ないだろがっ!」
アホの子に見えて意外に策士な所を見せつけるかなこだった。
「痛った! 変なピンポイント攻撃すんじゃねーよっ!」
すねを押さえてぴょんぴょんと飛び跳ねる刹那が、涙目でかなこを怒る。
そんな刹那を見るなり、双子忍者がギラリと野獣の眼光を放った。
「「隙ありですよっ!」」
漁夫の利を虎視眈々と狙っていた双子忍者が、刹那に襲いかかる!
「テメーらの考えなんか、お見通しなんだよっ!」
しかし、あっさり刹那に返り討ちに遭ってしまう。
「「ぶぅええええーん! 痛ーいっ!」」
刹那のラリアットを喰らった双子忍者が、ギャン泣きする。
「そんな泣くほど強くやってないだろっ!」
「頭蓋骨が折れたですよっー!」
「頸椎損傷ですよっー!」
双子忍者が大げさな事を叫びながら、地面をゴロゴロとのたうち回る。
「え? 大丈夫? バカタロー呼び出して、回復してもらう?」
根がいい子の刹那は、人を疑うという事を知らなかった。
「……お前、実はいい奴だったんですね」
「今まで誤解していたかもしれないですよ……」
敵であるはずの刹那の優しさに触れた双子忍者が、思わず感動する。
「だが、戦いは非情ですよっ!」
「涙は、くノ一の武器ですよっ!」
とはいえ、相手は忍の者。
迫真の嘘泣きなど朝飯前なのだ。
「「女の戦いとは! 情け無用のデスマッチなのですよっ!」」




