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勇者ゲーム ~ネトゲ廃人共、チート無双で異世界救ってこい!~  作者: ミネルヴァ日月
第四章 さんざめけ☆めけ! 勇者だヨ全員集合! 天下一武闘会!
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第36話 ここからは地獄! 激闘! ラストバトル!

「詐欺師はいつだって、自分が騙す側になる事しか考えていないのね。誰だって騙されるのは嫌よ。だから、抵抗するし反撃だってする……。世の中、こんな当たり前の事を分からない小賢しい馬鹿が多すぎる……やれやれだわ」


 社会の荒波を幾度も超えて来たと思わしきさくにゃんが、お局OLのような顔で世を憂いて嘆く。

 

 そんなさくにゃんの足元には、真太郎の死体が転がっていた――。


「このバトルロイヤルのルールは、参加者全員が最後の一人まで潰し合う事……」

 乾いた風がコロシアムに吹き込み、血で赤く染まったさくにゃんの髪を撫でる。


「だけど、おかしいわね……まだ死にぞこないがいる……そこにいるんでしょう、出て来なさい……ッ!」

 さくにゃんが一喝すると、その闘気で衝撃波が発生した。


「何っ!?」

 死体の下に隠れていた刹那が、さくにゃんの衝撃波で炙り出された!


「みぃーつけたぁ☆」


「はわわ……!」

 隠れ蓑を失った刹那が、捕食者に見つかった小動物のように小さい体を震わせる。


「アンタみたいな雑魚が、あの状況で良く生き延びれたわね」

 小さな体を震わせて怯える刹那に、さくにゃんが絶対的強者の余裕を持って話しかける。


「お前らみたいに、行き当たりばったりで暴れまくる馬鹿と違って、俺はしっかり生存戦略を立てていたからな……」

 

 策士的な事を言ってはいるが、ゾンビパニックの際はアダーの気遣いによって攻撃を免れ、その後の真太郎のアダー裏切りの際には、ゾンビから死体に戻ったやつの下敷きにされていただけで、刹那は積極的に生存戦略をとっていたわけではない。


 ただ、ここで強がらなければ、さくにゃんのプレッシャーに飲まれてしまう、と本能的に察知して精一杯強がったのだ。


「ふーん……」

 刹那の話をつまらなそう聞いていたさくにゃんが、不意に一歩踏み出した。


「一つ! 一つ……質問いいか?」

 本能的に死を直感した刹那が、慌てて時間稼ぎの交渉を試みる。


「冥土の土産ってやつかしら?」


 既に優勝した気でいるさくにゃんが、特に警戒もせずに話に乗って来た。

 完全に格下の刹那ならばいつでも殺せると勘定して、気紛れに付き合ってやったのだろう。


「ま、まぁな……」

 怯える刹那が、出方を窺うようにさくにゃんを見る。

 すると、さくにゃんが、さっさと話せとでも言うかのようにジェスチャーした。


「お前、『狂戦士』なのに、なんで『バーサク状態』じゃないんだ? 狂戦士は通常、戦闘中一切のコマンド入力を受け付けないはずだ。このゲームシステムで考えると、この世界でのテメーは、戦闘中そんなに自由に動いたり話したり出来ないはずだ。なぜだっ!?」


「さくにゃん、しらな~い☆」

 刹那の割と真剣な問いかけに、さくにゃんは超適当な返事した。

 

 これは別に、知っていてはぐらかした訳ではない。

 さくにゃんは、本当に知らないのだ。

 というのもさくにゃんは、勇者ゲームにあまり入れ込んでいないライトユーザーだからだ。 


 そんなさくにゃんの基本的なプレイスタイルは、『仕事で溜めたストレスをゲームにいるネト充共にぶつけて、彼らが苛立ったり、苦しんだりする姿を酒を飲みながら観戦してキャッキャする』という、クッソゲスいものだった。


 バーサク状態で自動的に戦ってくれて、自分でいちいち操作する必要のない狂戦士は、そのプレイスタイルに最も適していた。


 そんな自動操縦のキャラが、上手い具合に敵を殺してくれるわけないだろ! いい加減にしろ! ――と思うだろう。


 だが、『狂戦士』の装備可能な武器・防具は、特殊効果を持つものが非常に多く、それらを装備するためのアビリティも豊富で、しかも職業自体の各種ステータスも非常に優良、かつ覚える技も極めて強力なのだ。


 しかも、単純な属性攻撃から特殊な追加効果攻撃は当たり前、果ては魔法の乱れ撃ちまで使える鬼畜仕様だった。

 ただし、まったく自分で操れないという唯一にして無二の特性から、ネタ以外では、ほとんど使う人がいない不人気職業ナンバー1でもあった。


 だが、『酒飲んでんのに、自分で動かすのめんどくせ~! 寝落ちしている間にネト充共をぶっ殺してクレメンス~☆』というさくにゃんには、不人気だろうがなんだろうが関係なかった。


『勝手に戦ってくれる』――これが一番大事だったのだ。


 そんな感じでいい加減にゲームをしていたさくにゃんは、ゲームについて知っている事が少ないのだ。


「知らないってなんだよっ! はぐらかすんじゃねーよ!」

「ふーんだ! 知らないものは知らないも~ん☆」

 ぶりっこぶるさくにゃんが、荒ぶる刹那を適当にあしらう。


「レベルカンスト状態の『狂戦士』は、狂気を我が物にした事により、自我を保ったまま暴走する事が出来る……。つまり、さくにゃんは、狂戦士の職業レベルをカンストしているせいで、狂気を我が物とし、正気で暴れ回っているということだ……ッ!」


 さくにゃんの代わりに説明してくれたのは、死んだと思われていた真太郎だ。


「お前、死んだんじゃなかったのかっ!?」

 謎の復活を果たした真太郎に気付いた刹那が、驚いて声を上げる。


「一回死ぬ事で自動蘇生が発動して、HP全回復で復活した……」

 真太郎は、バトルロイヤルで死ぬ事も想定して、自動蘇生系のアイテムを装備していたのだ。


(ゾンビになったら全てのスキル系特殊効果が解除されちまうから、アダーの裏切りに備えて自爆を外して自動蘇生のアクセサリを装備していた訳だが……。さくにゃんを巻き添えにして自爆し、強引に再試合という戦略は取れなくなったな……)


 正攻法で戦っても勝てない、と思われるさくにゃんを退治する方法を必死に考える真太郎だった。


「へぇ~。やっぱゲームに詳しい方が、色々と有利なのね……でも、生き返るならまた殺せばいいだけの話だけどねっ☆」

 暴君であるさくにゃんにとっては、一回殺すも二回殺すも一緒ならば、一人殺すも二人殺すも一緒なのだ。

 

(この状況で、悠長に魔法を唱えてる余裕は、『そんなに』なさそうだ……魔法を使える時間があるとしたら『一回分だけ』……使い方を間違ったら終わりだ……!)


 選択のミスが死に直結する状況で、真太郎が導き出した答えは――


「師匠ッ! 死んでいる所、悪いが、生き返って貰うぞッ!」


 戦力の増強――つまり、イナバの蘇生だ。


「『リザレクション』!」

 真太郎が蘇生魔法を唱えると、天から光が差し込むエフェクトが発動し、死んでいたイナバが復活した。


「ハッ!? さくにゃんに殺されるでござるううううううううううううううッ!」

 さくにゃんに殺された直後の記憶が残っていたイナバが、ゲドゲドの恐怖面で悲鳴を上げた。


「落ち着くんだ、師匠ッ! 既にアンタは殺されたッ!」

「えッ!?」

 真太郎の大声に気付いたイナバが、ハッとした顔で彼を見る。


「そして、今生き返らせたッ! また死にたくなかったら、すぐに刀を抜くんだッ!」

「承知ッ!」

 真太郎の鬼気迫る様子を見て即座に戦況を理解したイナバが、素早く抜刀してさくにゃんに刃を向けた。


「おい、バカタロー! 俺も回復しろッ!」

 手傷を負っている刹那が回復をせがむ。

 

「ダメだ、意味がないッ!」

 だが、真太郎はそれを即座に却下した。


「はぁ!? 意味分かんねーよ、ふざけんなッ!」

 

「気に入らないものは、神だろうが悪魔だろうが絶対殺す――敵の全ての防御システムを無視して攻撃を叩き込むチートスキル『絶対暴虐』……ッ!」

「戦いを挑んだ事を後悔した時には、既に死んでいる――全てのスキル攻撃がオーバーキルダメージになるチートスキル『臨終懺悔』……ッ!」


 真太郎とイナバが、不敵に笑うさくにゃんを見つめながら冷や汗を流す。


「高ランクギルドを束ねて挑んでも勝てないレイドボスを、開幕の一撃で倒すのなんざ朝飯前! 存在そのものがチートの化け物――それがさくにゃんでござるッ!」

「奴の前では、HPなんていくらあってもなんの意味もないッ! 回復に回す時間は全て奴への攻撃に使うッ!」


「せっちゃん! 今の状況を瞬時に理解するでござるッ!」

「でなきゃ、瞬殺されるぞッ!」

 完全にさくにゃんを殺す気になっている戦闘状態のイナバと真太郎が、まだ戦闘状態に入っていない刹那を怒鳴りつける。

 

「ち……ち、ちっきしょォーッ!」

 真太郎達の鬼気迫る様子を見た刹那が、本能的に『自分も一緒に戦わないと死ぬ!』と理解して、慌てて戦闘状態に入る。


「お前らの言う通りなら、そんな化け物に勝てるのかよ……?」

 ただごとじゃない空気に飲まれてすっかり怯えてしまっている刹那が、泣きそうな目で真太郎に尋ねる。


「いくらさくにゃんが化け物じみた強さといえども、奴も人間……勝機はある!」

「それに、こちらは三人でござる。力を合わせて戦えば、勝ち目は充分にあるでござるよ!」

 真太郎に続いてイナバがそんな事を言って、怯える刹那を勇気づける。


「師匠の言う通りだ。この戦いは、死線を幾度も越えて来た俺達の『友情パワー』が、勝敗を決めると言っても過言ではない!」

 真太郎が自分自身を勇気づけるように言葉を紡ぐ。


「俺達の『友情パワー』で、あの化け物ババアを始末するぞッ!」

 

「やだ! 『友情パワー』とか恥ずかしい台詞を普通に言えちゃうのっ!? だから、好き! シンタロー殿っ!」

「ゆ、『友情パワー』……!」


 コミュ障ゆえに性格がひねくれがちなイナバと刹那は、ストレートに熱い言葉を吐く真太郎に惑わされがちだった。


「拙者達三人の『友情パワー』を見せてやるでござるッ!」

「ったく! 『友情パワー』なんてくだらねーが、今はお前らの友達ごっこに付き合ってやるぜッ!」

 その姿は、ダメな男にひっかかる小娘のごとし。


 だが、それがマズかった。


「喧嘩ってやつはなァッ! ちんけな友情で決まるもんじゃねェッ! 人間離れした凶暴さと『一人で戦い抜く決意』で、勝ち負けが決まるものなのよッ!」

 リア充が大っ嫌いな孤高の非モテ女子さくにゃんを、ブチキレさせてしまったのだ!


「来やがったッ! 一撃も喰らうなよ、一撃でも喰らったら即死だぞッ!」

「ひぃっ!」


「せっちゃん、後ろに下がっているでござるよッ!」

 男気を見せたイナバが、怯える刹那を庇って前に出る。

 

「クソガキがァーッ! キモオタに守られてお姫様気取りかいッ!」

 イナバに庇われた刹那を見たさくにゃんが、『オタサーの姫状態』になった彼女にブチキレる。


「せっちゃんは拙者が守るッ! かかって来いでござるッ!」

「このキモオタがッ! 『見せつけ』てんじゃないわよォーッ!」

 イナバが無駄に男を見せたせいで、さくにゃんの怒気が殺気に変貌したッ!


「ござあああああああああああああああああああああああああああああああッ!」

 イナバがさくにゃんに蹴り飛ばされた瞬間――消えたッ!?


「「な、何イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ――――――ッ!?」」

 イナバが突然消失したのを目の当たりにした真太郎と刹那が、驚き過ぎて腰を抜かす。 


「暴走アラフォーから女の子を庇って虐殺されて、異世界転生したのかッ!?」

「んな訳あるかぁーっ! 超高速で上空に蹴り上げられたんだッ!」

 刹那が上空を指さすと、そこには確かにイナバがいた。


「二度と甦ったりしないように追い打ちをかけて、完膚なきまでにぶっ殺すッ!」

 ギュン! と物凄い勢いでジャンプしたさくにゃんが、上空のイナバに追い打ちをかける。


「ラブリー虐殺真拳奥義・百裂惨殺脚ッ!」


「ござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござござッ!」


「トドメだオラァーーーーーーーーーーーーーッ!」


「ござああああああああああああああああああああああああああああーーっ!」 


 着地したさくにゃんが、真太郎達に背中を見せる。


「滅殺完了――」

 

 すると、肉塊と化したイナバが、血の雨と共に地面に降り注いだ。


「悪ふざけの暴力は、容赦なくへし折るッ! 戦う意志と戦う術を打ち砕かれた時……貴様らは、それでも立っていられるかしら……?」


 圧倒的な暴虐を見せつけて黙らせ、恐ろし気な台詞で心をかき乱し、戦いの興奮にのぼせあがった真太郎達を一気に恐怖のどん底に叩き落とす――。

 

「本当の地獄はこれからよ……ッ!」 

 

 さくにゃんは、ただひたすらに修羅だった。

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