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第15話 素直になれなくて ~躾~

「お……おい。お前ら……大丈夫なのか?」

「二人とも、ちょっと怖いよ……?」

 色んな意味で心配になる真太郎とイナバから、思わず距離を取る刹那とみこだった。


「出たな、淫乱ガールズめっ! また拙者を惑わすつもりでござるなっ! そうはいかないでござるよっ! 臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前っ! ござ喝ーっ!」

 混乱したかのようにイナバが騒ぎ出したのを見た真太郎が、何を思ったか刹那を追い払う。


「なんか良く分かんないけど、JCのチュウがいると師匠の精神状態が不安定になるから、お前はもうどっか行けよ」

「嫌だよ! なんだよ、それっ!? どーいう事だよ!」

 無茶苦茶な要求を突き付けられた刹那が、当然の様に抗議する。


「お前の気持ちは分かる、そりゃそーだろう。だが、師匠はJCのチュウがいると、ロリコン故に心がかき乱されるみたいなんだよ。だから、お前はもう消えろ」

「意味分かんねーよっ! なんで俺はダメで、あの青髪の女はいいんだよっ!」


「みこちゃんの時は、師匠はあんな風にならなかったもん。やっぱJCってのがヤバいんだよ。JCはヤバいよ、JKやJDはまだしも、JCはヤバいんだよ」

「ヤバいヤバい、意味分かんねーよ! オメーの頭がヤベーよ! つか、なんでお前は俺より、そんなキモオタを取るんだよッ!? 完全に頭おかしいだろッ!」

 確かに刹那の言う通りではあった。

 

 だが真太郎は、この世界で生き抜く為には、美少女JCだが地雷プレイヤーの刹那と、ロリコンのキモオタだが手練れのイナバを天秤にかけた結果、イナバを取らざるを得なかったのだ。

「……悲しいけど、これってサバイバルなのよね。この世界で生きていく為には、まず戦力が必要なんだよ」

 どこか諦念を帯びる真太郎がそう呟くなり、イナバが師匠面して彼に話しかける。


「シンタロー殿。チュウはJC、いや、まだ十四歳の子供でござる。そんな子を放り出すなんて出来ないでござるよ。それにチュウは、控えめに言っても可愛いロリっ娘でござる。先程の輩の様な悪い男達が、良からぬ事を考えて近寄って来るのは、必定でござるよ」

(あんな事言ってた癖に、まだJCとか言ってるよ、このおっさん)


「平気でしょ。チュウは雑魚だけど、低レベって訳じゃないから、悪い奴らは自分で撃退できますよ」

「レベルは高くとも、中学生の女の子が一人でいたら、確実にトラブルに巻き込まれるはずでござるよ。さっきのみこ殿の一件を見たでござろう? この世界は、女の子にとって危険すぎる場所なのでござるよ」

 先ほどのみこを例に出したイナバが、面倒臭そうにしている真太郎に妙な事を提案した。


「やはりここは、ゲームで元々パーティーを組んでいた拙者、シンタロー殿、チュウ、それに合わせてみこ殿の四人で、ゲーム時代の様にパーティーを組むべきでござるよ」

「まぁ……形としては、それがいいのかもしれないっすねぇ」

(……このキモオタ。チュウとみこちゃんの事を心配している様に見せかけて、その実は女の子と一緒にいたいだけじゃねーのか?)

 などと、ロリコンを見る目つきでシンタローがイナバを見る。


 そんな目で見られているとは夢にも思ってもいないイナバが、ジト目で唸っている刹那に声をかける。

「チュウは、どう思うでござるか?」

 キモオタ丸出しのイナバを警戒する刹那が、低い声を作って吐き捨てる。


「ふん、勘違いするなよ。貴様らごときとパーティーなど組めるか。この俺は、神に滅ぼされた殺人鬼一族唯一の生き残り煉獄刹那だ。生まれてこの方、闇の世界しか知らない殺し屋よ。間抜けな人間共の仲間になる事などできるか……!」

 自分が想像するカッコイイ殺人鬼になりきっている刹那が、クールな素振りで吐き捨てる。


「あはは、何それ面白ーいっ!」

 中二病全開の刹那の痛い台詞を聞いた瞬間、みこが爆笑する。

「んなッ!? 笑うなっ! 俺は殺人鬼だぞ、お前らみたいなアホ共、何時でも殺せるんだ!」

 刹那が精一杯強がるなり、真太郎がため息をつく。

「怖いなぁ。俺、命を狙っている様な奴とは一緒にいたくないや」

 真太郎はそう言って、無駄に荒ぶる刹那からみこに視線を移す。


「みこちゃんは、見た所一人でいたみたいだけど、どっかのギルドかパーティーに入ってないの?」

「ううん。どこにも入ってないよ。あたし、一期一会を楽しむ野良派だから」 

「じゃあ、俺達と一期一会を楽しむかい?」

 真太郎がそう言うなり、みこが小悪魔チックに笑った。


「あ~! シンタローさんったら、またナンパかなぁ~?」

「そーいう訳じゃないんだけどなぁ」

「おやや~? 照れちゃって可愛い奴だなぁ。うりうり、素直になりたまえ!」

 女の子への免疫が無いシンタローを肘でぐりぐりするみこが、彼をからかって遊ぶ。


「ナンパじゃないよ。でも、こんな訳の分からない状況なんだ。まともそうな人とは是非一緒にいたいね」

「ふ~ん。素直にならない人だなぁ」

 真太郎が少し真面目な調子で言うと、みこがじーっと彼を見つめた。


「ま、及第点かな? いいよ、このみこちゃんが、シンタローさんの仲間になってあげちゃいましょう!」

 何を思ったか、みこが「えっへん!」みたいな感じのポーズを作る。

「とか言ちゃったけど、本当は一人で心細かったんだ。だから、赤の他人のあたしを仲間に誘ってくれて、うれしいよ。ありがとね、シンタローさんっ!」

 そう言って本心をさらっと告げたみこは、照れ笑いの様ににへっと笑った。


 女子高生ぐらいの年頃のみこは、ところどころ発育途中な所があったり、ちょっと足が太めだったりして決して完璧な美人ではなかった。

 だが、時々ハッとさせる程に魅力的な仕草をするのだ。

「いや、礼を言うのはこっちだよ。仲間になってくれてありがとう」

 そんなハッとさせる仕草をしたみこに、真太郎が思わず見とれてしまう。

(天真爛漫で太陽の様に明るいみこちゃんは、一緒にいるだけで、なんか気分が良くなるなぁ~)


「おい、バカタロー! いちゃついてんじゃねーよ! 殺されて―のかッ!?」

(それに比べてチュウは、なんて可愛げが無いんだ)

「じゃ、チュウはソロプレイ頑張ってね。俺達もう行くから」

 馬鹿には付き合わない真太郎があっさりそう言うなり、刹那が慌てて止める。


「あうっ! ちょ、ちょっと待てっ!」

「何、なんか用?」

「おい、なんだその険のある言い方はっ!」

「味方じゃないお前に、友好的な態度を取る必要ってあるのかな? お前ってば、俺をいつでも殺す気なんでしょ?」

「クッ! なんて憎たらしい顔をするんだっ!」

 刹那が言っている側から、真太郎はスタスタと歩きはじめていた。

 それを見るなり、刹那が再び慌てて止める。


「あぅ! ま、待てよっ!」

 刹那は真太郎を呼び止めると、思いつめた様な表情でもじもじし始めた。

「何、さっきから何なの? いい加減にしないと怒るよ?」 

 真太郎がイラついた感じでそう言うと、刹那がおねだりする様な上目遣いをする。


「あ、あの……その、あぅ。わ、わたしも……わたしも『仲間』に入れて……くれ……!」

 どうやら刹那は強がってはいても、本当は真太郎の仲間になりたかったようだ。

「え? 何? ごにょごにょ言ってて、よく聞こえないんだけど?」

 本当はしっかり聞こえていたが、あえて聞こえない振りをする真太郎だった。


「ふざけんなよ、難聴主人公かよっ! 俺を仲間にしろって言ったんだよっ!」

「はい。良く言えました。そういう大事な事はハッキリ言いましょう」

 あえて聞こえない振りをしたのは、地雷な刹那に礼儀を教える為だったのだ。


「はぁ? さっきからこっちが下手に出れば、上から目線で語りやがって。死ねッ!」

 何を思ったか、刹那は袖から仕込み剣を飛び出させると、真太郎に襲い掛かった。

「はいはい、『ホールドエネミー』」

 真太郎が軽くあしらうなり、刹那の体が魔法の鎖に雁字搦めにされた。


「はぅぅーっ!」

「ったく、あぶねー奴だな。いきなり刃物を振り回すとか、正気なの?」

「またこれかっ! お前、なんでそんなに魔法の扱いに手馴れてんだよっ!?」

「チュウは、俺達の仲間になりたいんでしょ? 仲間にいきなり襲い掛かるとかどうなの? まったく。仲間に攻撃しちゃダメよ、せっちゃん。分かった?」

 何故か真太郎がお母さんの様な口調で、荒ぶる刹那を諌める。


「うるせー! この俺に舐めた口きくから、教育してやろうと思ったんだよッ! それより、さっさとこれを解きやがれッ!」

 刹那が魔法の鎖から逃れようと、小動物の様にキーキー叫んで暴れる。

「んもう。この子は、本当に聞かん坊なんだから」

 そんな彼女を呆れ顔で見ていた真太郎に、みこが心配そうな顔で声をかける。


「ちょっと、やり過ぎじゃない? 相手は、中学生の女の子だよ?」

「そうは言っても、このチュウは、ゲームでは札付きの悪で、仲間すら笑って殺す様な、とにかく手におえない地雷キャラだったんだよ。だから、仲間になってから変な事しない様に、今のうちにちゃんと躾けてるんだよ」

「躾って……」


「殺すっ! テメーは、ぜってーぶっ殺すッ! 八つ裂きにしてぶっ殺すッ!」

 キーキー喚きながら剣を振り回す凶暴な刹那を見た瞬間、みこは真太郎の言葉の意味を瞬時に理解した。


「……まぁ、多少の躾は必要だよね」

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