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勇者ゲーム ~ネトゲ廃人共、チート無双で異世界救ってこい!~  作者: ミネルヴァ日月
第四章 さんざめけ☆めけ! 勇者だヨ全員集合! 天下一武闘会!
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第35話 これは悪夢か現実か……裏切りの代償

「最後に何か仕掛けて来るかと思ったけど……警戒して損したな」


 アダーの死体を見下ろす真太郎が、やれやれと頭を振る。


「このバトルロイヤルで、魔王と戦える奴がいるか調べた訳だけれども……まだ一人もいないな……。なつきちゃんには、期待していたのに残念だよ」


 コロシアムの地面に転がる参加者達を眺めた真太郎が、残念そうにため息をつく。


「ま、街の腕自慢の連中の戦闘力が分かったただけでも、良しとしよう」


 真太郎がそんな事を言う横で、ゾンビだった者達が、ただの人間に戻り始める。

 アダーが死ぬ事で『屍者狂宴コープスパーティー』が解除され、不死状態だったゾンビたちが、ただの死者に戻ったのだ。


「さて、これで生き残っている奴は、誰もいなくなり俺の優勝――」


 真太郎がそう言うなり、イナバが背後に現れた。


「師匠、ゾンビパニックを生き延びたんですか? 流石、勇ゲー一の侍ですね」


(やっぱ生き残っていたか……ゾンビパニックの時に死んでいてくれれば、面倒がなかったのに……)

 

 イナバが生き残っていた事を知った真太郎が、内心で毒づく。

 

「師匠。俺達が争うのは嫌なので、ジャンケンで優勝を決めましょうか?」

 これ以上の戦いを面倒臭がった真太郎が、そんな事をイナバに提案する。


「…………」


 だが、イナバは何も答えなかった。


「ぐ……はっ……!」

 その代わり、口から血を吐いてばたりと地面に倒れた!

 

「死んで――いや、殺されているッ!?」


 イナバが何者かに殺された事を察知した真太郎が、杖を構えて身構える。

   

「完璧な策略なんて存在しないわ。存在するのは、完璧な暴虐だけ――」

 

「グハッ!」

 

 何者かの声が聞こえたと思った瞬間、真太郎の胸が何者かの拳に貫かれた!

 

「悪いわね、シンタローちゃん。優勝は、このあたしがもらったわ……!」

 

 崩れ落ちる真太郎に笑いかけるのは、暴虐の虐殺天使さくにゃんだ!


「さ、さくにゃんが……優勝だと……ッ!?」


「そう、あたしが優勝」

 このバトルロイヤルを無傷で生き残っていたさくにゃんが、ニヤリと不敵に微笑む。 


「う、裏切ったのかっ!?」


「人聞きの悪い事言わないで頂戴。これはバトルロイヤル、勝者はただ一人――それ以外の敗者は、みんな死ぬの。そして、優勝者は敗者の屍の上に立つ修羅だけよ」


 修羅の笑みを浮かべるさくにゃんが、真太郎の血で赤く染まった指先をぺろりと舐める。


「そんな話は聞いていないッ! 俺を裏切ったのか、と聞いているんだッ!」


「さくにゃんズ・ルールその一――やられる前にヤレ。シンタローちゃんが、アーちゃんを裏切った瞬間、シンタローちゃんを殺す事にしたわ」


 どうやら、真太郎はアダーを裏切った事で、さくにゃんの裏切りを呼び寄せてしまったようだ。


(クソ! 失敗したッ! 先生と組むことでゾンビパニックを逃れ、最後に先生を倒してオレが優勝するはずだったのに……! っていうか、このババア! なぜ無傷なんだッ!?)


「アーちゃんのあの変なゾンビのやつで、味方もろとも皆殺しにして、アーちゃんと組んでて生き残ったシンタローちゃんが、アーちゃんをぶっ殺して労せず優勝を手にする――そんな事を企んでいたのだろうけれど……ちょっと脇が甘かったわね」


「俺の作戦を読んでいたというのかッ!?」

「当たり前でしょ? このさくにゃん様をなめんじゃないわよ」


 人生の荒波をうん十年も生き抜いて来たさくにゃんにとって、裏切りなど日常茶飯事なのだ。


「シンタローちゃん達の戦法は、孫子の兵法三十六計の第十四計・『借屍還魂しゃくしかんこん』――利用できるものはなんでも利用して目的を達する――よね? それを文字通り『屍を借りる』形で表現するとは思わなかったわ。ビックリして思わず笑っちゃったじゃない」


 そんなさくにゃんにしてみれば、小賢しいガキの悪だくみなどは、まるっとお見通しなのである。


「とはいえ、このあたしの敵ではなかったけれどねっ☆」


「ク、クソ……! アダーとの話に夢中になり過ぎた。手を汚さない勝ちにこだわり過ぎた。策略に囚われるあまり、最も注意しなければならない危険人物の存在を軽く見積もってしまった……!」


 さくにゃんを『ただのイカレたババア』だと思って甘く見ていた事を悔いる真太郎だった。


「勝利が確定するまで、アーちゃんを殺さないでおけば、あたしがシンタローちゃんを殺す事なんてなかったのに。勝ちを焦って馬鹿なことをしたわね」


 なんでもお見通しのさくにゃんが、呆れ顔でやれやれと頭を振った。


「ま、シンタローちゃんとアーちゃんが生き残っていたとしても、最後はあたしが優勝を頂いちゃうつもりだったんだけどねっ❤ だって、あたしは最初から、優勝するつもりで参加してるんだもんっ☆」


(クソ! 裏切る裏切らない以前に、最初から俺達を叩き潰すつもりだったのかッ! アダーを裏切らなくても、最後まで生き残っていればその時点で、どっちみちこのババアに殺されていたという事じゃねぇかッ! クソ、クソ、クソ! 最初から最後まで注意するべき敵は、このババアだったんだッ!)


 後悔しても遅すぎる後悔に、歯噛みして悔しがる真太郎だった。

 

「くそ、痛てェーッ! こんな事になるなら、バトルロイヤルなんてせずに、ゴボウしばき合い対決か、熱々あんかけぶっかけ対決にしておけばよかったァーッ!」


 真太郎が痛みと苛立ちに悶えるあまり、訳の分からない事を言い出した。


「そんなのどっちも嫌よ」

 それに対して、さくにゃんが勝者の余裕を見せながら、冷静にツッコミを入れる。

 

 さくにゃんがツッコミを入れ終わると、真太郎の頭上に死へのカウントダウンの数字が出現した。

 

「ゲームに勝とうと思ったら、まずはゲームのルールを知らなけばいけないわ。この『自分以外ぶっ殺しゲーム』のルールは、ただ一つ……」


「こ、こいつは……魔王と同じ……ッ!」

 さくにゃんの発する『死』そのものと同質の殺意を浴びた真太郎が、かつて魔王と遭遇した時のトラウマに襲われる。

 

「自分以外を全員ぶっ殺す事ッ! 小賢しく策を弄する事ではないわーッ!」


 優勝をかっさらいに来たさくにゃんが、死に損なっていた真太郎にトドメの一撃を叩き込むッ!


 これは悪夢なのか、現実なのか……。


「これで、このあたしが……優勝よッ!」


 過熱したさくにゃんの欲望は、遂に危険な領域へと突入する……!

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