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勇者ゲーム ~ネトゲ廃人共、チート無双で異世界救ってこい!~  作者: ミネルヴァ日月
第四章 さんざめけ☆めけ! 勇者だヨ全員集合! 天下一武闘会!
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第30話 激闘! お嬢様界最強のお嬢様VSお嬢様界最強の王子様!

「バトルロイヤル最大の注目カードッ! お嬢様界最強のお嬢様エリーゼ選手VSお嬢様界最強の王子様アダー選手の戦いが、今まさに始まらんとしておりますッ!」


「エリーゼ様あああああああああああああああああああああああああああっ!」

「なつきお姉様ああああああああああああああああああああああああああっ!」


「早くも双方の応援団が、ヒートアップしている模様ですッ!」

 この街で最も有名な二人が戦うのだから、観客たちはみこが煽るまでもなく既にヒートアップしていて当然だった。

 

「まさか本当に、この街全体を巻き込んだバトルロイヤルなんていう馬鹿げた計画を実現させるとは……予想だにしませんでしたわ」

 アダー達の得体の知れない実行力を目の当たりにしたエリーゼが、素直に驚いてみせる。


「ボクがやると決めたんだ。何があっても実現するに決まっているだろう?」

 それに対してアダーは傲慢さを微塵も見せずに、ただ当然だといった風に涼やに応える。


「なんでも出来て当然って感じなのかしら? 相変わらず、嫌味な人ね」

「嫌味だって? 失礼だな、ボクは自己を正当に評価しているだけだよ」

 いつものように皮肉をぶつけあうやり取りを終えると、アダーが爽やかに笑った。


 それと同時に、地面を強く蹴って駆け出した。


「さぁ、おしゃべりは終わりだよッ!」

 エリーゼに肉薄したアダーが、空中かかと落としを放つ。

 

「会話の隙を狙ったみたいですけれど……半端な動きですわ」

 エリーゼが体を素早く回転させて、回し蹴りで応戦する。


「体の動かし方から勉強し直しなさいっ!」

 

 麗しき乙女の蹴りが激突する!


「それに、会話の途中で攻撃するなんてルール違反ですわっ! 悪役だってヒーローの変身シーンを待つというのにっ!」

「そんな頭の悪い悪役は、本当の悪役じゃあないのさ。ボクの邪魔をするキミみたいにね」

 

「おだまらっしゃいっ!」


 エリーゼは、皮肉で煽って来るアダーを一喝すると、流麗な動きで腰に下げていた白い鞘から剣を抜いた。

 豪奢な百合の装飾が施された金の鞘から引き抜かれたのは、眩いまでに光を放つ十字架を模した白銀の騎士剣だ。


「ガツンと痛い思いをさせて、寝ぼけた事ばかり言う貴女の目を覚まさせてあげますわっ!」


 ズビシ! と剣をアダーに付きつけたエリーゼが、大きく一歩前に踏み出す。

 一歩前に出た瞬間、エリーゼが弾丸のような速さでアダーに肉薄した。


「これは真剣勝負! 大怪我しても怨みっこなしですわよっ!」


「速いッ!?」

 エリーゼの『素早さ』を予想していなかったアダーが、完全に虚を突かれた。

 

 目を丸くして驚くアダーに、エリーゼの剣が無慈悲に振り下ろされる。

 

 勝負あり!

 

「……やはり、この世界はゲームのシステムが全てに行き渡っているんだな」


 誰もがそう思ったが、エリーゼの剣が体に触れる直前、アダーの羽織っている漆黒のコートが、鋭いスパイクを生やして攻撃を弾いた!


「んなッ!?」

 想定外の防御をされたエリーゼが声を出して驚く。

 

「驚いただろう? ボクの着ているこのコート・『冥姫の外套』は、生きている服でね。宿主を守るために、自らの形を変えて防御や攻撃を行うんだよ」

 アダーがそう言うと、彼女の言葉に応えるかのように、漆黒のコートのスパイクがガチャガチャと蠢いた。


「とはいえ、防具で攻撃するような真似はしないけれどね」

 アダーがそう言って乱暴に右腕を振るう。


 すると突然、アダーのコートの裏側から、柄にチェーンが結ばれた大きな鎌が飛び出し、エリーゼに襲いかかった。


「キャッ!?」

 大鎌の刃がエリーゼにぶち当たる寸前、彼女ドレス風の鎧から大輪の花が咲いてバリアの様に攻撃を守る。


「チッ、恵璃華の装備も自動防御付きか。一撃で仕留めたと思ったのに、ゲームシステムに足をすくわれたな……」

 エリーゼの鎧に弾かれた大鎌を見たアダーが、目を細めて舌打ちをした。

 

「その鎌が、なつきさんの武器なのかしら……?」

 異様な大きさの大鎌を驚きの面持で見つめるエリーゼが、右手をクンッと引いたアダーに尋ねる。

 

「こんな三日月みたいに大きいバカげた見た目の大鎌が、武器じゃなくてなんだっていうのさ?」

 すると、アダーの袖口から伸びているチェーンが引っ張られ、地面に突き刺さっていた大鎌が彼女の手元に戻った。

 

「とはいえ、正直かなり使いづらくてね。ゲームシステムと『冥姫の外套』の補助がなければ、か弱い乙女のボクには動かす事すら出来なかったんじゃないかな?」


 そう冗談めかして笑ったアダーは、大鎌を軽々と持って、くるりと回した。

 三日月のように青白く輝く刃が、回転に合わせてギラリと妖しく光る。


「まったく、貴女って人は。こんな状況でも飄々として余裕の態度なのね」


 アダーの掴めなさに呆れるエリーゼだったが、警戒を解くことは決してなかった。

 というのも、アダーが持つ大鎌が、まるで死神の鎌のように不気味な妖気を纏っており、一見して『ヤバい』ものだと理解出来るからだ。


「さぁ、仕切り直しだ。存分に咲き乱れようッ!」

 アダーはそう言うと、再び大鎌を振るった。

 

 すかさずエリーゼが後ろに飛び退き、アダーの攻撃をかわす。

 だが、アダーはチェーンを使って器用に追撃した。

 

「クッ! 攻撃範囲が読めないッ!」

 チェーンを使う事で鎖鎌のようにトリッキーな動きをするアダーの大鎌に、エリーゼが翻弄される。


「なんて厄介なのかしらっ! 攻撃を防ぐだけで精一杯じゃないっ!」

 戦いに慣れていないと見えるエリーゼは、アダーの攻撃に対して防御一辺倒になってしまっていた。


「どうした恵璃華、防戦一方かい? でも、この黙示録の死神の大鎌・『黄泉』は、触れるだけでHPを刈り取るよッ!」

 防御するエリーゼのHPを削りながら一方的に攻撃を仕掛けるアダーが、トドメを刺そうと大鎌を大きく振った。


「しまったっ!」

 エリーゼの剣が弾かれ、ボディががら空きになる。


「派手に登場して期待させた癖に、随分とあっけなかったね」

 剥き出しになったエリーゼの体に、アダーの振るう大鎌が襲いかかる!


「そう簡単に! やられませんわッ!」

 アダーの大鎌が体に触れた瞬間、エリーゼの自動防御の花のバリアが展開する。

 

「防御量を上回るダメージを与えれば、自動防御のバリアは破壊されるぞッ!」

 しかし、アダーの大鎌の一撃によって、無惨にも打ち砕かれてしまった!


「そんなっ!」

 驚愕するエリーゼの顔の前を、砕け散った花びらがひらひらと舞い散る。


「自分の命をゲームのシステムに預けるなんて、とんだ間抜けじゃあないか」

 魔女のように微笑むアダーが、薄紅色の花弁を斬り裂いてエリーゼに肉薄する。


「きゃあっ!」

 今や死神と化したアダーが振るう大鎌が、エリーゼの命を刈り取る。


「さよなら、恵璃――何ッ!?」

 次の瞬間、アダーの大鎌が、光の矢によって弾かれた!


「おいおい、女の戦いに水を差すなよ。そいつは美しくないぞ、乙女失格だ」

 トドメを阻止されたアダーが、光の矢が飛んで来た方向に顔を向ける。

 

「乙女失格は、どちらですかっ!」


 そんな怒りの声を上げるのは、アダーとエリーゼの親友である百合子だ。

 百合子の手には、黄金に光り輝く三日月のような弓が握られている。

 アダーに攻撃をしたのは、彼女で間違いないようだ。


「暴力を使って強引に街をまとめようとするばかりか、友達に手をあげるなんて乙女失格よっ!」


「乙女失格だって? ボクは笑顔を交えた話し合いを好むただのか弱い女だよ?」

 怒り心頭の百合子に対して、アダーは冗談めかして涼やかに笑うだけだ。


「とはいえ、闘ったとしても、ボクは誰にも負けないけれどね」


「戦いで全てを決めようだなんて、野蛮の極みよっ!」

 涼しい顔で挑発をしてくるアダーに、百合子が眉を吊り上げて怒りをぶつける。


「何を言う。人間っていうのは、本質的に野蛮な生き物だよ。どんなに綺麗に着飾り、偽りで本性を隠したとしてもね」

「たとえ仮にそうだとしても、話し合いもせずにいきなり戦うだなんて、間違っているわよっ!」

 戦いを嫌う真面目な百合子が、好戦的なアダーを叱りつける。


「人が言葉で動くのは、既存の社会があってこそだ。既存の社会から逸脱した今の状況で、人を動かすには暴力に頼り、本能に訴えかける他ないよ」


「言ってる事が無茶苦茶よっ! なつきちゃんは、ゲームの世界に来ておかしくなっちゃったの!? ここはゲームの世界かもしれないけれど、ここにいる人達は『現実』に生きてる人達なのよっ!? まさか、この世界をゲームだとでも、勘違いしているんじゃないでしょうねっ!?」


「そんな訳あるか。ボクはこのゲーム風の世界でも、現実世界と同じように対応しているだけだよ。現実世界も暴力によって秩序が作り上げられているんだ、この世界と一緒さ。肩書や金という欺瞞で本性が隠れているから、百合子みたいな世間知らずのお嬢様は、システムの欺瞞を見破れないのかもしれないけれどね」


 アダーは皮肉気に笑うと、怖い顔で睨みつけて来る百合子を見た。


「社会とはつまる所、イカサマが仕組まれた弱肉強食の茶番劇ってやつだよ。それに比べれば、単純な力比べで序列を決めようなんていうのは、ずっとずっとフェアだと思わないかい?」


「……本気で言っているの?」

 アダーの考えを受け入れられない百合子が、声を押し殺して尋ねる。


「ここで冗談を言う意味ってあるのかい?」

 口ぶりは軽かったが、アダーの目つきは冗談の介在を許さないほどに真剣そのものだった。


「……もう私が何を言っても、なつきちゃんは止ってはくれないの?」

 アダーの態度から何かを察した百合子が、どこかすがるような目つきで彼女を見つめる。


「こんな所で止まってボヤける訳にはいかないよ。まだ道は半ば……いや、歩み出してすらいないのだからね」

 しかし、アダーの決意は固く、百合子の願いはかなわなかった。


「話せば分かってくれるなんて甘かったのね……」

 失望したような顔で百合子が目を伏せるなり、エリーゼが口を挟んできた。


「百合子、もうお止めなさい。分からず屋のなつきさんに、わたくし達の言う事を聞かせようとしても無駄ですわ」

 エリーゼがそんな事を言うなり、アダーがムッとした顔をした。


「子供の頃から、『人の言う事をなぜ聞かないのか?』と問われる事が多かったが、そもそも『他人が自分の命令を聞いて当たり前だ』という傲慢な考えは、どこから来るんだい? 人に言う事を聞いてもらいたかったら、それ相応の誠意と報酬を用意しろよ。それが用意できなければ、合理的な心理操作が必要だと理解するべきだね」


 ひねくれ者のアダーが、エリーゼの言葉で機嫌を損ねる。


「説得を命令だと勘違いして癇癪を起こすこんなひねくれ者に、これ以上話しをするのは時間の無駄ですわっ!」

 アダーを説得できないと判断したエリーゼが、戦いを選んで再び剣を構えた。


「結局、こうなってしまうのね……喧嘩なんてしたくなかったのだけれど、仕方がないわ……」

 アダーに何を言っても通じない事を察した百合子が、弓を構えて戦いに挑む。


「なつきさんは、わたくし達が止めるっ!」

「なつきちゃんは、私達が止めるっ!」


 二人の純情お嬢様が燃えるような闘志を宿した瞳で、ひねくれ王子様を睨みつける。 

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