第27話 修羅VSロリ海賊&お馬鹿くノ一ズ!
「この十七歳のピチピチギャルの事を、ババアだとか抜かしたクソ野郎共ッ! 今から、一人残らず皆殺しにすっからッ! 死ぬ準備しとけやあああああああーっ!」
人間には、その実力に応じた相応しいステージというものがある。
実力に見合った場所で分をわきまえていれば、痛い目に遭わないで済む。
世の中には、そんな当たり前の事も分からない世間知らずが多過ぎる。
「お、お助けええええええええええええええええええええええええええっ!」
ハイステージに足を踏み入れる資格のない人間が、化けの皮を無理矢理引き剥がされて泣きながら助けを求めて来ても、修羅は決して手を差し伸べたりしない。
修羅はただ――弱者を嬲り殺すのみ!
「このさくにゃんが、ぶっ殺すと言った時にはッ! 既にぶっ殺しているのよッ!」
己の力量をわきまえない弱者は、修羅によって命を刈り取られる定めなのだッ!
「さくにゃん……心底恐ろしい奴だ。やって来るなり一瞬で、参加者の半分を狩りとるとはな……」
自分をババア呼ばわりする人間を手当たり次第にぶっ殺していくさくにゃんを遠巻きに見つめる真太郎が、恐怖の面持で呟く。
すると、蒼天海賊団のカイリが敵を倒しながら、隣にやって来た。
「シンタロー君! アンタの言う『さくにゃん』は、本当に俺達が知ってるあの『さくにゃん』なのかっ!?」
さくにゃんの虐殺を目の当たりにしたカイリも、真太郎と同じく顔に恐怖を滲ませている。
「認めたくはないが、アレは正真正銘『ラブリーマジカルアイドル☆さくにゃん』だ……っ!」
ゲーム時代の『ロリ可愛いさくにゃん』の姿とまったく違ってしまっている『今の荒ぶるアラフォーさくにゃん』が、同一人物だとは認めたくない真太郎だった。
「魔王と戦った事で、この世界で最も恐ろしい存在と対峙したことになるこの俺だが、あのババアからはそれ以上の『恐怖』――『どう足掻いても絶望』ってやつを感じる……ッ!」
「はぁ? 誰がババアなのよっ!?」
「しまった! さくにゃんイヤーは地獄耳ィーっ!」
真太郎の失言を聞きつけた地獄耳のさくにゃんが、鬼の形相で襲来する。
「なぁ、お前。『さくにゃん』なんだろ? なんでババアのかっこうなんてしてるのだ? それはなんのコスプレなのだ?」
カイリにくっついて来たかなこが、子供らしい無邪気で残酷な質問をさくにゃんにぶつける。
「そんな奇怪なコスプレしてる訳ないでしょっ!」
さくにゃんがかなこにキレるなり、カイリが割って入った。
「つまり、今の見た目は『素』って事か?」
「『素』よ」
「そうなのか~。さくにゃんの素は、素のババアなのか~!」
「ゲーム時代の幼女風の見た目と違って、素は狂おしいほどのババアだな」
兄妹揃って割と無邪気に残酷な事を言う海賊兄妹だった。
「誰がババアよ! 目を覚ましなさいッ!」
「グハッ!」
さくにゃんの逆鱗に触れたカイリが、思いっきりビンタされる。
「あんちゃんっ!?」
「だ……大丈夫だ……何とか生きてる……」
どうやらカイリは、イケメンである事によって面食いのさくにゃんに手加減され、瞬殺を免れたようだ。
「今の目覚めの一撃で、『ラブ』が入ったかしら?」
さくにゃんは職業が『狂戦士』だけあって、どこか狂気じみた所があった。
「そ……そんな妙なものは入ってないっ!」
さくにゃんの醸し出す『ヤバさ』に、本能的な恐怖を感じたカイリが剣を構える。
「なら、お死にっ!」
愛を拒む者には容赦しないさくにゃんの冷酷な一撃が、カイリを襲う。
「グハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーッ!」
強烈な打撃を喰らったカイリが、会場の外までぶっ飛ばされた。
「あんちゃああああああああああああああああああああああんーーーーーっ!」
兄の死を目の当たりしたかなこが絶叫を張り上げる。
「ちびっこ。死にたくなければ降参しなさい」
意外な事に、流石のさくにゃんも、子供を問答無用で殺すようなむごい真似はしないだけの良心を持っているようだった。
「い、いやだっ! これは真剣勝負なのだっ!」
勝ち気な性格のかなこが、兄の仇討ちだとばかりに、さくにゃんに剣を突き付けて威嚇する。
「己の弱さも理解出来ないのならば、しょせんはその程度の器……死んで当然ね。安易な死を選ぶのならばそれもいいでしょう――」
言い終わると同時に、さくにゃんがかなこにデコピンを食らわせた。
「ぎゃぼおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーっ!」
かなこ、デコピン一発で撃沈!
だが、奇跡的にHPが一だけ残った。
「手加減し過ぎたようね……次は拳を叩き込むわ」
かなこを仕留め損ねたさくにゃんが、おもむろに拳を握る。
「ま、参ったのだあああああああああああああああーっ!」
瞬間、死を悟ったかなこが、ジャンピング土下座して命乞いをした。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああん! あんちゃあああああああああああああああああああああああああああああん!」
今にもおしっこちびりそうなゲドゲドの恐怖面をしたかなこが、物凄い勢いで逃げ出す。
「ったく、キッズがこんな所に紛れ込んでんじゃないわよ」
かなこをあっさり追っ払ったさくにゃんが、ふんと鼻を鳴らす。
すると、二つの人影がどこからともなく飛び出し、さくにゃんに襲いかかった!
「このクソババア! せっかく目立とうと思ってはしゃいでたのにっ!」
「クソババアばっかり、目立ってんじゃねーですよっ!」
飛龍忍軍のお騒がせ双子くノ一ズが、命知らずにもさくにゃんに襲いかかる!
「「死にやがれですよっ!」」
双子くノ一の持つ小太刀が、さくにゃんを捉えた。
ギラリと光る小太刀が、隙だらけのさくにゃんの首を狩るべく乱暴に振るわれる。
「誰がクソババアよ! テメーらが死ねや! クソガキ共ッ!」
しかし、次の瞬間、さくにゃんにカウンターをぶち込まれたッ!
「「ふひゃぶううううううううううううううううううううううううううううう!」」
かなこと同じ子供とはいえ、生意気なクソガキには容赦しないしつけに厳しいさくにゃんだった。
子供にも容赦ないさくにゃんの壮絶な戦いっぷりを見ていた参加者達が、近くにいた者同士で顔を見合わせる。
「こ、子供相手に容赦ねぇ……!」
「なんだあのババア!? 無茶苦茶じゃねーかッ!」
「奴が本当にあの『さくにゃん』だとしたら、俺らじゃどうしようもないぞッ!」
野心を抱いてバトルロイヤルに参戦した高レベルプレイヤー達だったが、さくにゃんという絶対的強者のせいで、その野心は今にも叩き潰されそうだった。
「あのババアは、戦い疲れて弱るまで放置だッ!」
「それまでに、あのコスプレ忍者を倒して名を上げるぞッ!」
このバトルロイヤルで功績を残したい高レベルプレイヤー達が、有名選手の一人である忍蔵に狙いを定めた。
「出来るだけ戦いを避けて、漁夫の利的に優勝を狙おうと思っていたのだが……そう上手くはいかないようでゴザルなニンニン……」
高レベルプレイヤー達の視線に気付いた忍蔵が、覆面越しの目を細めてため息をつく。
「仕方ない……。君達には、肩慣らしのお相手になってもらうでゴザルよニンニン」
「「「せーのでいくぜッ!」」」
忍蔵に狙いを定めた高レベルプレイヤー達が、一斉に武器を構える。
「では、こちらも『せーの』で行かせてもらうでゴザルよニンニン」
忍蔵はニヤリと笑うと、素早く手を動かし印を結んだ。
「「「せーのッ!」」」
武器を構えた高レベルプレイヤー達が、一斉に忍蔵に襲いかかる。
「「「忍法・多重一閃!」」」
次の瞬間、忍蔵の体が数十人に分身し、襲いかかる敵を忍者刀で一閃した!
「「「グハアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーッ!」」」
分身した忍蔵の攻撃を喰らった三十人以上の男達が、一瞬のうちに場外にすっ飛ばされていく。
「安心めされい。峰打ちでゴザルよニンニン」
ふざけた言動からは想像できない圧倒的な実力を見せつけた忍蔵が、刀を構えてかっこつけた。
「最近は他人のサポートばっかでヘタレたと思っていたけれど、最強の忍者マスターの腕は鈍ってなかったようにゃん。流石は、リリース当初からやり込んでる第一世代の廃人にゃ。レベルが高いだけのルーキーじゃ手も足も出ないにゃん」
忍蔵と同じく、勇ゲーのサービス開始初期の頃からゲーム実況をやっている重兵衛は、色々と物知りだった。
「場外に出た場合は、『即時敗退』ですよっ! 皆さん、注意してくださいねーっ!」
割と大事な事を今になって言う、うっかり者のみこだった。
「この世界での体の使い方を完全に把握出来ているとは、言い難いが……これだけ動かせれば十全でゴザルなニンニン」
手の平を開いたり閉じたりして体の動かし方を確かめる忍蔵が、顔を上げて前方をキッと睨みつけた。
その視線の先には、逃げ惑う選手を手当たり次第に葬り去っているさくにゃんがいた。
「うちの可愛い双子の仇を討たせてもらうでゴザルよ……ニンニンッ!」
仲間思いの忍蔵が忍者刀を素早く抜刀し、さくにゃんに襲いかかった。
砂煙を巻き上げて目にも止まらぬ速さで疾駆する忍蔵が、さくにゃんの頸動脈に狙いを定める。
いくら規格外に強いさくにゃんでも、首を刎ねてしまえば始末出来る、と判断したのだ。
「ラブリー虐殺真拳奥義・滅殺拳ッ!」
幸いな事に、虐殺に夢中なさくにゃんは、忍蔵の奇襲に気付いていない。
「お命頂戴ッ!」
というよりも、混乱を極めるコロシアムの中で、気配を消して動く忍蔵に気付いている奴など誰もいなかった。
「マズい! 貴重な熟女要員がッ!」
ただ一人、さくにゃんをガン見していた板垣を除いては――。




