第24話 JCなめたらいかんぜよ! 逆襲の刹那!
「良い武器持ってるぐらいで粋がんじゃねーよッ! 武器の性能の違いが戦力の決定的差じゃねーって事を教えてやるぜッ!」
ただならぬ妖気を発する魔剣に怯えた刹那が、強がることで恐怖を誤魔化した。
「今の聞きました? チュウが、キャスバル兄さんみたいな事を言い出しましたよ」
緊張感のない真太郎が刹那を茶化して、イナバに話を振る。
「それはともかく……せっちゃん、押されている感じでござるな。やはり、レベルと装備の差は決定的なようでござるよ。ここは一つ、助太刀に入るべきでござろう」
刹那の保護者を気取るイナバが、彼女の危機に剣を取った。
「なら、スキルの違いを見せてやるよ! この俺のみが使える『神速剣技』でなァッ!」
アキトは叫ぶなり、連続して攻撃スキルを発動した。
「ダークネスソード! ギルティブレイク! カオスブレイド! キリングパニッシャー! ブラッドスティール! デスクラッシュ!」
「さっそくチートスキルかよ! こんなの避けるだけで精一杯じゃねーかッ!」
目にも止まらぬ速さで連続して放たれる剣撃が、刹那に襲いかかる。
「ちょこまか逃げんじゃねー! ラスト一発決めてやんよッ! 暗黒破斬ッ!」
コロシアム中を必死に逃げまわっていた刹那を、アキトが捉える。
次の瞬間、アキトの斬撃のモーションに合わせて黒い影のような刃が発射された。
「クソ、遠距離攻撃もあるのかよッ!」
アキトの追撃のしつこさに驚く刹那が、攻撃を喰らう寸前のタイミングでヘッドスライディングみたいにして前方に大きく跳んだ。
大きく飛んで避けた刹那の頭上を、アキトの攻撃が物凄い勢いで通り過ぎる。
「あっぶねっ! つか、お前らボーっと見てないで、助太刀しろよなッ!」
アキトの怒涛のスキル攻撃を命からがら回避した刹那が、遠くで呑気に観戦している真太郎達に助けを求めた。
「助太刀なんてしなくても、あんなスキルに頼るだけのアホは簡単に倒せるでしょ。せっちゃん、一人で頑張りなさいっ!」
しかし、面倒なアキト退治を刹那に丸投げしている真太郎は、彼女を見捨てた。
「ちょっ、シンタロー殿! 何を呑気な事を言っているでござるかっ! 相手は、ただの高レベルプレイヤーではなく、『オリジナルスキル』持ちでござるよっ!」
オリジナルスキル――勇者ゲームは、多くのMMORPG同様に、各種職業毎に固有のスキルが存在する。
だが、この『オリジナルスキル』は『職業』にではなく、『プレイヤー個人』に割り当てられる特殊なスキルだ。
このオリジナルスキルを取得する為には、煩雑な手順を要する特殊な条件を満たす事が必要になる。
それゆえに、所持者は廃人プレイヤーや大規模ギルドの幹部、ルールに縛られない変わり者などのごく一部に限られていた。
そして、このオリジナルスキルは多くの場合――真太郎の『仲間との行動が連携技に変化する――コラボレーター』や、アキトの『キャストタイム・リキャストタイムを無視してスキルを連続発動できる――神速剣技』など――ゲームバランスを崩しかねないほどに、やたらと強力な能力を持っている。
「クソ! カス野郎の癖に『チートスキル』持ちなんてムカつくぜ!」
ゆえに『チートスキル』の異名を持つ。
「おい、バカ共! 三人で一気に潰すから、四の五の言わずに協力しろっ!」
見捨てられそうになってる刹那が、悪態をつきながら真太郎達に助けを求める。
「ええ~? あんだけ威勢のいい事言ったんだから、一人でやっつけろよな~」
などといい加減な事を言う真太郎だったが、脳裏では冷静に考えを巡らしていた。
(あのアホがチート持ちだったのすっかり忘れてたな。低レベのチュウには少し荷が重いか……手の内を見せたくないから、出来る限り自分が戦うのは避けたかったけど、今後の事を考えるとここでビシッと決めておいた方がいいのかもなぁ……)
「はぁ!? ちょっとは協力しろよ! そういう所がコミュ障なんだよッ!」
真太郎に邪険にされた刹那が、牙をむいて小動物のように唸る。
「助けてほしかったら、もっと可愛くおねだりしろよなぁ~」
「うるせぇ! 早くしろっ!」
刹那に煽られた真太郎が仕方ないな、という顔をしてアキトに声をかける。
「おい! そこのロリコンPK! 小さい女の子をいじめるな! ロリコン紳士にあるまじき恥ずべき行為だぞっ!」
「誰がロリコンだっ!」
真太郎の分かりやすい挑発にアキトが即座に食いついた。
「ブラインドフラッシュ!」
アキトが自分の方を見るなり、真太郎は即座に目潰しの閃光魔法を放った。
「協力奥義――」
「そう来ると思ったぜ!」
アキトは腕を顔の前にかざして閃光から目を守った。
「テメーらのふざけたやり口はお見通しなんだよッ!」
「ファッ!? 作戦が見破られただとおおおおおおおおおおおおおおおおおおーっ!?」
アキトが攻撃を防いだ事に驚いた真太郎が、奇声を上げて驚く。
「馬鹿が! テメーらは、やる事がワンパターン過ぎんだよッ!」
真太郎の攻撃を防いだアキトが反撃するべく、魔剣を握りしめる。
「ワンパターンなのは、『パターンを読んでいい気になった馬鹿を罠にハメる為』にそうしているだけでござるよッ!」
真太郎の魔法の発動と同時に閃光に紛れてアキトの背後に回っていたイナバが、目にも止まらぬ速さで抜刀する。
「何ッ!? いつの間に後ろにッ!?」
「ファッとして、ギュッとして! ホールドエネミー!」
アキトが振り返るよりも一瞬早く、真太郎が拘束魔法を唱えた。
「クソ! 調子に乗るなよッ!」
光で出来た鎖がアキトに絡みつき、彼の体を雁字搦めに縛り上げる。
「暴れんな、暴れんなよ!」
真太郎の拘束魔法がヒットするなり、イナバがすかさず攻撃スキルを発動した。
「秘剣・つばめ返し!」
電光石火で放たれた斬撃がアキトのHPを大幅に削り、防具を破壊する。
真太郎のコラボレーターのスキル効果により、イナバの攻撃が連携技に変化して武具破壊の追加効果を発動させたのだ。
「防具破壊に成功! あいつの防御力はゼロでござるよッ!」
「チュウ、ぼさっとすんな! お前がトドメを刺せッ!」
見事な連携技を決めアキトを無力化させた真太郎達が、呆気にとられている刹那に声をかける。
「今からやるつもりだったんだよッ! 急かすんじゃねぇッ!」
勝機を感じ取った刹那が、先程まで自分を包んでいた怯えを振り払って駆け出した。
それと同時に、アキトが力を振り絞って魔剣を乱暴に振り上げる。
「調子に……乗るんじゃねええええええええーッ!」
アキトに真っ直ぐ突っ込む刹那に、魔剣が振り下ろされる。
「殺ッ! 『デッドリースマッシャー』!」。
次の瞬間、刹那が必殺の一撃を放った。
「ハッ、雑魚がッ! まったく痛くねーなッ!」
刹那の攻撃を喰らっていきり立つアキトが、魔剣を乱暴に振るう。
目にも止まらぬ速さで振られた剣が、刹那の体を捉えた。
「うわっ!」
重い衝撃音と共に、刹那の小柄な体がゴロゴロと地面を転がる。
「ふん、雑魚の癖に俺の攻撃をしのぎやがったか」
地面に転がる刹那を見下すアキトが、苛立ち気味に毒づく。
「魔剣だかなんだかしんねーけど、大したことねーな。やっぱテメーは口だけぜ!」
真太郎のかけた無敵効果の魔法のおかげでノーダメージで済んだ刹那が、いつものように強がりを言う。
だが、その強がりはいつのも恐怖を誤魔化す為のものではなく、勝利を確信したかのような強い自信が垣間見れた。
「たかが一撃決めたくらいでいい気になる――ウグッ!」
アキトが次の攻撃に移ろうとした次の瞬間、血を吐いて地面に倒れる。
「どういう事だ!? 低レベの攻撃を一発喰らったぐらいで即死だとッ!?」
「俺を低レベだと思って油断したのが、テメーの敗因だ……!」
勝利を確信した面構えの刹那が、アキトに剣を突きつける。
「なん……だと……!?」
「低レベの俺の攻撃力は、大した威力はないだろう。だがな、『デッドリースマッシャー』の特殊効果は『即死』だ。高レベのお前でも一発で仕留める事が出来る!」
『デッドリースマッシャー』は、暗黒騎士の必殺技の一つで、敵に大ダメージを与えると同時に『即死』の追加効果をもたらす恐ろしい攻撃スキルだ。
真太郎の補助で即死効果の発生率が上がっていたおかげで、刹那の攻撃は低ダメージながらも必殺の一撃と化していたのだった。
「クソ……ッ! 最後まで舐めた真似しやがって……!」
HPがゼロになったアキトがその場に突っ伏し、動きを止める。
どうやらこの勝負は、刹那の勝ちに決まったようだ。




