第22話 さんざめけ☆めけ! 勇者だヨ全員集合! 天下一武闘会!
「紳士淑女、そしてネトゲ廃人の皆さん、こんにちわっ! これより、『さんざめけ☆めけ! 勇者だヨ全員集合! 天下一武闘会!』を開催しまーすっ!」
大会の司会を務めるみこが、元気いっぱいにバトルロイヤルの開催を告げる。
「それでは、皆さんお待ちかねっ! 出場選手の入場ですーっ!」
みこの合図と同時に、ポム・アンプワゾネの鼓笛隊の女の子達が、ファンファーレを吹き鳴らす。
「なんか、運動会みたいでゴザルなニンニン」
「あはは~! なんだかわくわくするのだーっ!」
陽気なラッパの鼓笛隊の音色に導かれるようにしてバトルロイヤルの参加者達が、コロシアムにぞろぞろと姿を現した。
「たった今、全ての出場選手が入場いたしました! さぁ、皆様! この街の未来の為に立ち上がった勇気ある勇者達に盛大なる拍手をお願いしますっ!」
みこが拍手を催促すると、コロシアムに集まった観客たちが盛大な拍手で参加選手たちを出迎えた。
「みんながんばれーっ!」
「わーい! なんだか、お祭みたいっ!」
「お前に全財産かけてんだ! 優勝しろよーっ!」
参加者、観客の多くの人が、このバトルロイヤルを一種のイベントだと思っているので、みんなテンションアゲアゲでノリノリだ。
その賑やかに過ぎる盛り上がりようは、まさにお祭り状態と言ってもいい。
「お前らぁーっ! 異世界最強の勇者を見たいかーーーーーっ!?」
「「「おおおおおおーーーーーーーーーーっ!」」」
「わたしもです! わたしもですよ、みなさんっ! それではこれから、注目選手の発表だぁぁぁーっ!」
場の空気に染まってノリノリで司会進行をするみこが、参加者の紹介を始めた。
「伝説の龍殺し(ドラゴンスレイヤー)は実在していたッ!! 俺はオリエンス最強じゃねー、異世界最強だッッ!! 『渾沌騎士団』騎士団長・斬人選手ッッッ!!」
「俺様が優勝だ、コノヤロー! 有り金全部俺に賭けやがれ―ッ!」
気合を入れて磨き上げた金ピカの鎧をまとった斬人が、龍を模した白と黒の大剣をブンブンと振り回して観客たちにアピールする。
「魔法でのどつきあいなら絶対に負けんッ!! 大魔導師の闘争が君の常識を破壊するッッ!! 『魔術結社JMA』の大魔導師・板垣選手ッッッ!!」
「悪いが、優勝するのはこの私だよ。この私には、成し遂げなければならない大志があるのだからね……!」
いつものサラリーマンじみた格好ではなく、ゲーム時代の大魔導師の格好をした板垣が、黒いローブをたなびかせて登場し、威風堂々とした姿を観客に見せつける。
「赤い血風吹き荒れる戦場に、一輪の白百合が揺れるッ! ウィスパーボイスのおっとりお嬢様が、優勝をかっさらいに来たッッ! 『ポム・アンプワゾネ』の麗しの刺客・白鳥百合子選手ッッッ!」
「えっ!? わわっ! う、麗しき刺客っ!?」
シスターみたいな格好をしている百合子が、観客の注目を一身に浴びたせいどぎまぎする。
「美少女? 美少年? ノンノン、お嬢様界最強の王子様だぁぁぁーッ! 女神も思わず恋に落ちる麗しの美技に酔えッッ! 『元・魔王討伐軍司令官』アダー選手ッッッ!」
「やぁ、みんな! 応援よろしくねっ❤」
大勢の注目を浴びても物怖じしないアダーは、観客に笑顔で手を振って余裕の態度を見せた。
「なつきお姉様あああああああああああああああああああああああああああ!」
「がんばってくださいましいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
それと同時に、彼女のファンたちが一斉に黄色い歓声を上げる。
「荒ぶる蒼海から『蒼天海賊団』が上陸だッ! 大海の覇者がバトルロイヤルも制してやるッッ! 『ロリっ娘海賊王』かなこクライシス選手と、その兄『白修羅』カイリ選手、兄妹揃って参戦ですッッッ!」
「うちら兄妹が、ぜ~ったいっ! 優勝するぞぉぉぉーっ!」
蒼いコートとオレンジ色の髪の毛を元気よく弾ませるかなこが、子供らしい無邪気さではしゃぐ。
「悪いが優勝は俺達がもらうぜ。かなこの邪魔する奴は皆殺しだ……!」
その横で、白髪を揺らすカイリが愛刀を構えて静かに闘志を燃やす。
「光ある所に影がある――。影ある所に忍あり――。闇に蠢く不埒な悪を、天に代わって我らが討つッ! 忍者は異世界でも最強だという事を教えてやるッッ! 『飛龍忍軍』のNINJAマスター・服部忍蔵選手ッッッ! ロリっ娘くノ一コンビ・猿飛うきょう選手と霧隠さきょう選手を従えて堂々の登場だッッッ!」
「「飛龍忍軍、只今参上ですよっ!」」
「合言葉はッ!?」
「「「ニンジャーッ!」」」
紹介と同時に煙玉が爆発し、カラフルな煙の中から忍蔵たちが戦隊もののヒーローみたいなポーズをとって出現する。
「NINJA! NINJA! NINJA! NINJA! NINJA!」
ヒーローショーみたいな演出をぶちかました忍者達の登場で、会場は大盛り上がりだ!
「請来、請来、インヤン飯店! 好吃了、好吃了、インヤン飯店ッ! 中国四千年の歴史を引っ提げてチャイナの雌豹が異世界にやって来たッッ! 『インヤン飯店』の敏腕女主人にして魅惑の霊幻道士・テンテン選手ッッッ!」
インヤン飯店の連中を従えたテンテンが、忍蔵たちに負けじとドラとバクチクを盛大に鳴らしながらド派手に登場する。
「アイヤー! ただいま売店で絶賛発売中のインヤン飯店特性の肉まん、アンマン、プーアル茶をバトル観戦のお供にしながら、ワタシが優勝するのを見届けるアルヨ!」
今日のテンテンはいつもの芋くさい地味な眼鏡女子ではなく、ゲームの時の姿である赤いチャイナ服を着た妖艶でセクシーなチャイナ美女になっていた。
今の彼女は、髪の毛は派手な紫色で、お化粧もばっちり、声も舌足らずで超可愛いし、まさにゲーム時代の魅惑のチャイナ美女テンテンだった。
「「「テンテンちゃーん! うぉーあいにいいいいいいいいいいいいいいいーっ!」」」
そんな彼女の姿を見た隠れテンテンファン達が、俄かにはしゃぎだす。
「そして最後は、このバトルロイヤルのきっかけを作った張本人であり、大会の主催者であるこの男ッ!」
主要な注目選手が全て出て来た後に登場するのは、この大騒ぎの仕掛け人である真太郎だ。
「狂気の扇動者か、はたまた、偉大なる先導者かッ!? 魔性の言葉で悪魔すら惑わす殺人ヒーラーは、何をしでかすか分からない超S級の危険人物だッッ! 『名無しのギルド』の『狂気の扇動者』・シンタロー選手ッッッ!」
「はい、よろしくちゃん。みんな、張り切っていきましょう!」
盛り上がるコロシアムに最後に登場したシンタローは、他の参加者達に比べて気合ゼロで超適当だった。ある意味で、彼らしいとも言えたが。
主要な参加者の紹介が終わると、みこが改めて自己紹介をする。
「申し遅れましたっ! 本日実況を務めさせて頂きますのは、『名無しのギルド』の期待のルーキーみこちゃんですっ☆ そしてお相手はっ!」
「おみゃんらぁぁぁー、おはこんばんにちにゃぁぁぁーん! ゲームを飛び出しリアルにぢゃぢゃんと登場っ☆ 実況解説の重兵衛だにゃあああああああーんっ☆」
みこの隣にちょこんと座る重兵衛が、可愛げなポーズで元気いっぱい挨拶をした。
「おみゃんらぁーっ! もりもり盛り上がっていけよーっ!」
バトルロイヤルには反対の重兵衛だったが、「参加するからには全力で参加する!」 と自分の役に全力投球する彼女は、ゲーマーの鑑のような猫だった。
「それでは本戦を開始する前に、主催者からの挨拶として『名無しのギルド』のシンタロー選手より、開会の挨拶をたまわります」
みこに紹介された真太郎が、コロシアムの中央に進み出る。
「はい、どうも。ゲームにハマり過ぎて異世界にまでやって来ちゃったネトゲ廃人の皆さん、こんにちわ! 校長先生みたいに下らない長話はするつもりはないので、だらっとしたまま聞いてくださいね」
真太郎は話が手短に終わる事をアピールして、参加者と観客の耳目を集めた。
「とりあえず挨拶っつーか、参加に際しての注意事項をひとつ。今の状況でノリノリで参加しちまうバトルジャンキー共のことだから、派手に戦うつもりで意気込んでる奴ばっかだと思います。だけど、正直言ってバトルの後味は悪くしたくねーんだ。だから、勝っても負けても潔く笑って結果を受け入れてくれ。お前ら、勇者の器のデカさに期待してるッ!」
真太郎はそう言って、満員の会場をぐるりと見回した。
「そんな訳で、挨拶終わりっ! いっちょ、おっぱじめようぜッ!」
真太郎の言葉を待たずして会場のあちこちから喚声が湧き上がる。
どうやら、どいつもこいつもバトルロイヤルが早く見たくて仕方がないようだ。
「それでは、これより『さんざめけ☆めけ! 勇者だヨ全員集合! 天下一武闘会!』本戦を開始しまーすっ!」
観客たちの盛り上がりに負けじと、みこが元気いっぱいで開催の合図を告げる。
「おい、待てぃ!」
すると何故か刹那が、ツッコミを入れた。
「なんだお前、江戸っ子か?」
刹那に気付いた真太郎が、急に騒ぎ出した彼女の顔を見る。
「ちげーよ! なんだこれは!? 七千人以上参加者がいて、予選がないのかっ!?」
誰も触れないけれども重大な事に、ツッコミを入れる目ざとい刹那だった。
「普通は予選有りだろっ! なんでいきなり全員でぶつかるんだよッ!?」
闘技場内に溢れんばかりに詰め込まれた参加者達を指さしながら、刹那が吠える。
参加選手たちは、闘技場の壁に背中を預けながら、戦闘が開始されるのを、いまかいまか、とうずうずしながら待っていた。
「時間がねーからな。なにより、いっぱいで戦った方が無双シリーズみてーで盛り上がるだろ? それにこれはバトルロイヤル――つまり、総当たり戦だよ?」
「総当たり戦だとォ!?」
とんでもない試合方式に刹那が荒ぶるなり、みこがバトルロイヤルの説明を始めた。
「『さんざめけ☆めけ! 勇者だヨ全員集合! 天下一武闘会!』は、オリエンスの街の巨大コロシアムで行われる参加者全員の総当たり戦ですっ! 七千人オーバーの出場者達が、一斉にコロシアムに放たれ、最後の一人になるまで戦い続ける正真正銘のバトルロイヤルっ! それが、『さんざめけ☆めけ! 勇者だヨ全員集合! 天下一武闘会!』ですっ!」
みこのノリの良い説明が、熱気に浮かれる観客たちのボルテージを高めていく。
「コロシアムでの戦闘では、HPがゼロになっても瀕死状態になるだけで、決して神殿送りになる事はありませんっ! 加えて控室には、ポム・アンプワゾネのナース部隊が、万全の態勢で待機していますので、皆さん安心して戦って下さいねっ!」
みこが説明を終えると、彼女の脇に控えていたナース姿の女の子達が可愛くアピールした。
「みこのやつは、あんな事言ってるけど、ホントかよ?」
ナース姿の女の子達が会場を盛り上げるのを横目で眺める刹那が、不安げな顔で真太郎に話しかける。
「ホントだよ。入場前に斬人達がデモンストレーションをやってたのと、ナースのコスプレしたポムの女の子達が奴らを治療するのを見てなかったのか?」
「いや、見てたけど……なんか不安じゃないか……」
強がっていても性根は気弱な女の子な刹那が、戦いを前にして本音を漏らす。
「者共、これより合戦でござる! 気合を入れるでござるよっ!」
不安がる刹那に対して、野心をたぎらせるイナバは、開幕前からエンジン全開のようだ。
「おい、キモオタ! たぎってんじゃねーっ! それより、ギルマス。作戦はっ!?」
不安げな顔の刹那の問いかけに、アダーが爽やかな王子様スマイルで応じた。
「ボクたち以外、皆殺し❤」
アダーが物騒な事を爽やかな王子様スマイルで言うなり、司会席の重兵衛が声を張り上げる。
「よっしゃー、おめーらぁーっ! 重兵衛が叩くゴングが合図にゃん! そしたら、戦って戦って戦って! 自分以外を全員叩きのめすにゃん! 勝つのは、たった一人だけっ! しっちゃかめっちゃかになって大乱闘にゃああああああああーっ!」
重兵衛が熱血ボイスで盛大に煽ると、観客が一斉に歓声を上げてそれに応えた。
急遽開催されたバトルロイヤルだが、意外にも観客のノリは良く、出だしからテンションは爆上げだ。
その一方。
盛り上がるコロシアムの隅で、参加者達が不穏な面持ちで真太郎を見つめていた。
彼らは、一般参加の高レベ連中だ。
「あいつが、シンタロー。三大ギルドをこのバカげたバトルロイヤルに引き込んだ男か……」
「街中引っ掻き回したのが、たった七人の弱小ギルドだと?」
「なんで大ギルドの連中は、あんな変な奴の口車に乗ったんだ?」
「知るかよ。だが、アイツには感謝だな」
「ああ。この力を思いっきり使ってみたくててうずうずしてたんだからな!」
「偉そうにリーダーを気取ってる有名人どもを叩きのめして、誰が最強か教えてやるぜッ!」
不埒な思いを抱く彼らの心中に渦巻く思いは、ただ一つ――
「「「俺が優勝して、この街の支配者になるッ!」」」
「なんだよアレ。ゲームで強かっただけのネトゲ廃人風情が、実戦こなしてる俺らに勝つ気でいるよ」
「まったく、この世界の厳しさも知らないうつけ者共が、思い上がりも甚だしいでござるな」
大人数に喧嘩を売られた事に気付いた真太郎達だったが、彼らはビビるでもなく、呆れ顔をするだけだ。
そんな強者の余裕を見せつける真太郎達に、刹那がツッコミを入れる。
「お前らって、なんかしらんけど無駄に度胸あるよな……っていうか、ババアいなくね?」
急に姿を消したさくにゃんを訝しむ刹那が、辺りをきょろきょろと見回す。
「人間は年を取るとトイレが近くなるんだ、そっとしておいてやれ」
真太郎がそんな事を言うと同時に、みこと重兵衛が試合開始の合図を盛大に告げた。
「それでは、皆さんっ! いよいよバトルロイヤルをおっぱじめますよーっ!」
「戦闘開始にゃああああああああああああああああああああああーーーーっ!」
ついに始まった! 『さんざめけ☆めけ! 勇者だヨ全員集合! 天下一武闘会!』
波乱ぶくみのバトルロイヤルの結末はいかに!




