第20話 遂に開催! バトルロイヤル! の前に作戦会議
最終的なバトルロイヤルの参加者数は、7146名。
そのうち、一般プレイヤーは、3636名。
これは、真太郎の予想をはるかに超えた数だった。
一般プレイヤー多数参加の主な原因は、参加申し込み締め切り時刻間際に、『渾沌騎士団』が、斬人と紅以外の中核メンバーの不参加を表明した事にある。
これは勿論、真太郎達の策略を警戒する紅の指示だ。
一見マズい事態になったと思えたが、意外にもこの件が面白い事態を引き起こした。
というのも、この一件を見て、自分でも優勝をかすめ取れると思った連中が大量に駆け込み参加し、一気に参戦人数を増加させたからだ。
更に、『ポム・アンプワゾネ』と『獣人同盟』の大半が戦いに参加せず、大会運営に回るとの情報が、最後の最後まで参加を渋っていた連中の背中をドンと押し、一気に参加者が激増したのだ。
このかつてない規模で盛り上がるバトルロイヤルには、誰もが呆れた。
「どうせトップギルドの幹部か、高レベ組が優勝するに決まっているのに」
「今の状況が分かってない廃人連中が、はしゃいじゃって馬鹿みたい」
「この状況でバトルなんかしてる場合じゃないだろ、いい加減にしろ!」
「そうだよ(便乗)」
そう思いつつも、誰もがバトルロイヤルから目を離す事が出来なかった。
それも当然だろう。
街の有力プレイヤーと有名人が全員参加しているのだから、このバトルロイヤルの結果によっては、この街の状況が一変しさえするだ。
よっぽどの馬鹿でない限り、バトルロイヤルから目を離す事なんて出来やしない。
「俺がサクッと優勝して、この世界で誰が最強かアホ共に知らしめてやるぜ!」
「ぬーわっははは! 海も陸もうちが支配してやるのだーっ!」
「熟女王国建国、熟女王国建国、熟女王国建国、熟女王国建国ッ!」
オリエンスの街にいる勇者ゲームプレイヤー達の様々な思惑が、奇妙な熱気と興奮に混ざり、人で溢れるコロシアムに満ちていく――。
「うわぁ~! なんだか、凄い事になっちゃったぞっ!」
予想を超えるバトルロイヤルの大盛況ぶりに、刹那が目を丸くして驚く。
「アダーを筆頭にポムの美少女達、チュウと海賊王と双子忍者、そして重兵衛ちゃん率いる猫人。これだけ素材が揃って、人が集まらない訳がない」
観客で溢れんばかりになっているコロシアムの客席を見つめる真太郎が、訳知り顔で答える。
「人が集まらない訳がないって、どういう意味だよ?」
「広告業界には、美人『Beauty』、赤ちゃん『Baby』、動物『Beast』を広告に使うと効果的という経験則がある。これを『3Bの法則』と呼ぶ。つまり、ポム・アンプワゾネのビューティーガールズ、きらりーベイビー、そして猫人の重兵衛ちゃんはビースト。この三つBの客寄せ要員の相乗効果で、ここまで人数が集まったという事さ」
「なんだ、きらりーベイビーって俺の事かっ!?」
子ども扱いされた刹那が、小動物の様にシャーっと唸る。
「そう、わさわさするな。本当はロリっ娘と言ってやりたいが、LだとBにならないから、便宜的にベイビーと言っているだけだ、そこは勘弁してくれ」
「別にロリっ娘って呼ばれたい訳じゃねーよっ!」
妙な勘違いをする真太郎に刹那が飛びかかる。
するとタイミングよく、アダーがやって来た。
「うちの連中も含めて、ギルド会談に参加したメンバーは全員参加みたいだね。何組かは不参加だと思っていたのに意外だよ」
アダーがそんな事を言うなり、真太郎が訳知り顔をした。
「そりゃそうよ。一旦、参加すると言った以上、一貫性バイアスが働き、『やっぱり、やめ~た』なんて言いづらくなるでしょ? しかも、ライバル同士が一堂に会している場所で言ったんだ、面子を保つ為には棄権なんて出来ないよ。ま、こうなる様に、あの場で無理矢理にでも話をまとめて承諾誘導させたんだけどね」
真太郎がそう言うと、刹那が驚きと感心が入り混じった様な顔をした。
「マジかよ。お前、そこまで考えていたのか」
刹那がどこか尊敬するかのような眼差しで、真太郎を見つめる。
「考えも無しトークショウをやっていると思ったのか? 行き当たりばったりで動いているのは、お前みたいなアホだけだよ」
「なんだとぉ!」
「しっかし、アホ共がまんまとまな板の上に乗せられちゃってさぁ~。有力ギルドだかなんだか知んねーけど、頭空っぽの良いカモ共だよ、ホント。この状況で優位性を維持したければ、俺達に対して無視を決め込むのがベストだったのにさ」
真太郎が妙な事を言い出すなり、刹那が小首を傾げる。
「どういう事だよ?」
「『俺の誘いに乗ってやる気スイッチ入っちゃた状態に陥るよりは、無視して現状維持した方が、正常な判断と行動が出来たのに、なにやってんの?』つー意味だよ。俺達を無視していれば、大して状況は良くならなくても、大幅に悪くなる事は避ける事が出来たってのに、バカだよねぇ~。ま、考える暇を与えないように動いてそうなるように仕向けた訳だけどさ」
「おい! 勝手にしたり顔すんな、分かるように言えよ!」
真太郎の話の意味を理解出来ない刹那が、思わず荒ぶる。
「お前、俺とずっとに一緒にいたのに分かんないのか?」
「お前の事なんか分かるか! 俺はエスパーじゃないんだぞっ!」
「なるほど、もっともだ。ならば説明してやろう」
真太郎はそう言うと、不満顔の刹那に説明を始めた。
「俺は最初から、ギルド会談に集めた連中を罠にかけていたって事だよ。街にいる有象無象の連中を話し合いでまとめる事なんて出来る訳がないし、無理矢理言う事を聞かせるなんて事は絶対に不可能。だが、昨日の『実験』でお前も見た、なつき先生の『あのスキル』を使えば、バトルロイヤルに参加した連中全員に言う事を聞かせる事が出来るようになる」
悪だくみをしている顔の真太郎がニヤリと笑う。
「つまり、俺は最初っからあいつらを全員……いや、この街の全員をバトルロイヤルに引きずり込んで殲滅するつもりだったんだよ。どんな手を使ってでもな」
何やら邪悪な顔つきをする真太郎が、最初から話し合い度する気の無かった事を暴露する。
「おい! なんか悪どいぞっ!」
「悪どい? まさか、誠意がある方さ。俺が本当に悪どかったら、自作自演のテロと人工芝運動を仕掛けて街の連中を思い通りに誘導したり、不正選挙とかデタラメの多数決を使って民主主義を偽装して洗脳したり、恐怖や不安を煽る噂を流布して街の連中を潰し合わせた上でファシスト的にまとめたりとかしてたぞ」
根がいい子な刹那が責めるが、真太郎は涼しげな顔で邪悪な事を言い続けた。
「だが、俺がやったのは、バトルロイヤルの開催のみだ。しかも、参加するか、しないかは各人に任せ、自由意思の元で全てを決めさせた。罠にかけたとはいえ、無理強いをしていないのに、『悪どい』などと言われる筋合いはないね」
真太郎がそんな事を言うなり、アダーが呆れ顔をした。
「こら、刹那を騙しちゃダメじゃあないか。真太郎は、ギルド会談に集まったみんなに、自分の意思で選んだように思わせる誘導をしかけたんだろう?」
アダーがそう言うなり、話に付いて行けなくなった刹那が混乱する。
「???」
「刹那、難しく考えなくていいよ。真太郎は街の連中の欲望を煽って正気を失わせて操ったってだけの話さ」
「? どういう事?」
「今は、自分がゲームの自キャラと同じ強さを持っている状況だ。この強力な力を使って良からぬ事をしたい輩はいっぱいいる。そこに、魔王討伐軍のボスを決めるバトルロイヤルの誘い。しかも勝てば、負けた連中になんでも言う事を聞かせられるご褒美有り。騙されていると思っていながらも、思わず乗りたくなっちゃうだろ?」
アダーがそう言うと、刹那がぷぅとほっぺたを膨らませた。
「そんな誘いに乗るのは、アホだけだよ」
「お前が思う以上にアホは多い。この参加者の多さが、それを物語っているだろ? その証拠を見せてやろう」
真太郎はそう言うと、バトルロイヤルに備えて刀の手入れをしていたイナバに声をかけた。
「師匠っ! 気合十分じゃないですかっ!」
「拙者がどれだけ高レベ連中を倒せるか、が今回の作戦の肝になるでござるからな。気合も入るというものでござるよ」
イナバはそう言うと、慣れた手つきで刀を鞘にしまった。
「言い忘れていましたが、師匠がその気なら、優勝しちゃっていいですからね」
「え? アダー殿を優勝させるのではござらぬの?」
「一応そういう感じですけど、うちの連中なら誰が優勝してもいいんですよ。だから、師匠が優勝したらエロエロハーレム王国とか作っちゃってもいいっすよ」
真太郎がそんな事を耳打ちするなり、イナバの目が野獣の眼光のごとくギラリと光った。
「時は来れり! 出陣でござるぅぅぅーっ! いざ、ハーレム!」
すっかりその気になったイナバが、刀を天に突き上げ奇声をあげる。




