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勇者ゲーム ~ネトゲ廃人共、チート無双で異世界救ってこい!~  作者: ミネルヴァ日月
第四章 さんざめけ☆めけ! 勇者だヨ全員集合! 天下一武闘会!
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第16話 言論バトル? 街中での勧誘合戦!

「あっ! みんなー、こっちだよーっ!」

 丁度最後の参加希望者の受付を終えたみこが、真太郎達に気付いて元気に手を振る。

 

 簡素な机と立て看板が二つ並べられただけの受付会場では、元気いっぱいに笑顔を振りまくみこと、参加者希望者達にキモがられないように面貌で顔を隠したイナバが、受付業務にいそしんでいた。


「やっと、合流でござるな。こっちは大変だったんでござるよっ!」

 苦手な接客をやらされていたイナバが、のこのこやって来た真太郎にぶーたれた。


「お疲れ様です。コミュ障なのに、受付けを引き受けてくれて感謝していますよ。師匠とみこちゃんが受付をやってくれたおかげで、安心してギルド会談に臨むことが出来ました」

「という事は、ギルド会談の首尾は上手くいったのでござるな?」

 

 仲間と合流した真太郎は、ギルド会談に参加しなかったイナバとみこに、会談での事を話して聞かせた。


「あはは~。無理矢理詭弁で丸め込んじゃうなんて、シンタローさんらしいなぁ」

「あの面子を相手に強引に話をまとめるなんて、狂気の扇動者クレイジー・アジテーターの腕は、錆ついていなかったみたいでござるな」 

 みことイナバが揃って、成果をあげた真太郎を褒める。


「そのあだ名、ダサいからあんま呼んでもらいたくないなぁ」


「むっ! なんだ、バトロワは参加費を取るのか?」

 真太郎があだ名を嫌がるその横で、刹那が机に置かれていたチラシを手に取った。


「参加費は……金貨一万ーっ!?」

 バトルロイヤルのチラシを見た刹那が、目を丸くして驚いた。


「高けーよっ! 誰がこんな金払って参加すんだよっ!」

 刹那がチラシを突き付けるなり、みこが参加者名簿を見せた。


「参加費はお高いけど、優勝者の総取りだから、みんな喜んで参加したよ~」

 そこには、参加希望者の名前がギッシリと書き連ねられている。


「とはいえ、腕自慢達を大体集め終わった後は、集まりが悪くなっているのでござるがね」

 イナバはため息交じりにそう言うと、受付会場を遠巻きに見ているプレイヤー達を指さした。


「なんだ、あいつら? 遠巻きに見てるだけで、全然こっちに来ないじゃないか。このままで、バトロワは大丈夫なのか?」

 受付会場を遠巻きに見つめる多くのプレイヤーを指さす刹那が、不安げな視線を真太郎に向ける。


「絶対大丈夫」

「ほんとかよ?」

「多分、大丈夫」

 それに対して真太郎が、いい加減な返事を返す。


「どっちだよ!」

「多分絶対大丈夫!」

「余計わかんねーよっ!」

 わからないのは、真太郎も同じだった。

 

 というのも、腕自慢達が作った流れに続いて、中堅プレイヤーも流れに乗って来るとばかりに思っていたからだ。


「なんか、ゲームの時もそうだったけど、プレイヤー主催のイベントを開催すると、斜に構えてる人達が盛り下げて邪魔して来るんだよねぇ~。なんでだろ?」

 上手い具合に乗って来ない連中を眺める真太郎が、困り顔で愚痴を漏らす。


「ノリの悪い連中は変にプライド高いから、釣られるのが何よりも嫌いで、何でも『つまんね』、『馴れ合いだせぇ』のスタンスだし、遊びを楽しめないガキが多いんだよ。最近の冷めた新参共は、バカタローみたいに全力でバカをやったりしねーのさ」

 訳知り顔の刹那がそんな事を言って、ニヒリストっぽい顔をする。


「最近のって、お前も新参者じゃん」

「うるせぇ!」

 真太郎のツッコミに対して、刹那が小動物のように荒ぶった。

 

「とはいえ、確かに最近の勇ゲーは、チュウみたいに『とりあえず叩いとけば正解』みたいな感じのセンスとユーモアの無い連中が増えてたのは、事実なんだよなぁ」

「おい! 俺を冷めた連中の代表みたく言うなっ!」


「チュウはともかく。実際の所、遠巻きに見ている連中のほとんどが、ひねくれ野郎の冷めた態度っていうよりも、これ以上の面倒事を恐れている、って言うのが真相だろうな。それになにより、ゲームでのお気軽な『バトル』が本当の『戦闘バトル』になった今、みんな上位プレイヤーの強さにビビってる可能性がデカいし」


「おい! 急に真面目な話をすんじゃねーよ! お前のそーいう所、あのババアに似てるぞっ!」


「切り替えが早い俺と、情緒不安定なだけのさくにゃんを一緒にしないでくれ。あと、いちいち茶々を入れるのを止めろ。俺はこれから、スカした顔してる激寒ひねくれ兄貴と、ビビって遠巻きに眺めてる日和見姉貴たちに、火をつけて回らなければならんのだ。邪魔するなら、きらりちゃんはどっかに行ってなさい。ほら、お小遣いあげるから」

 

「やめろ、子ども扱いすんなっ! っていうか、参加者が増えないって事は、また中小ギルドを回って参加者を集めるのか?」


「そんな面倒な事するかよ。今この場所には、街の連中のほとんどが集まってるんだぞ。バトロワに参加はしねーけど、無視もできず気になってずっと様子見してる冷笑キョロ充共を、一気に燃え上がらせるに決まってるだろ?」


 真太郎はそう言ってニヤリと笑うと、受付の机の上に飛び乗った。


「ちょーっといいですかぁ、街のみなさぁーーーーん! 『魔王討伐軍』の名参謀のシンタロー、一介のプレイヤーの前にわざわざ登場っ! こんにちはーっ!」

 真太郎は、あえて大げさなリアクションを取り、わざと煽るような出だしでプレイヤー達の耳目を集めた。


「何を迷ってんのか知んねーけど、ここはおめーらが死ぬほどやり込んだ『勇者ゲームの世界』だぞっ! リアルで背負い込んじまったクッソ下らないしがらみを捨てて、新しい自分の力を試してみろよっ! 俺達は、そうする事にしたぜっ!」


 真太郎は、『魔王討伐軍』というある種の権威ある存在の自分が、『現状をゲームだと捉えている』という所を強調して臭わせる事で、冷笑キョロ充達に『ギルド会談に集まった面子は、この世界をゲームだと思っている』と誤誘導させる。


 これによって、今感じている現実感を希薄にさせ、バトルロイヤルに参加させやすくしたのだ。


「俺達、『魔王討伐軍』は、腹をくくってこの勇ゲー風異世界でサバイバルする事に決めた! んで、この危険な世界でみんなを引っ張っていける強いリーダーを選ぶ為に、バトルロイヤルをする事にした! このリーダー選びには、魔王討伐軍に所属してなかった在野の実力者にも広く参加を呼び掛けたいっ! つー事で、参加者をガンガン募集してるから、我こそはと思う者は、景気よく参加してくれよなっ!」


 真太郎が心をくすぐるような話運びで景気よく煽るなり、参加を迷っていた高レベルプレイヤーらしき連中が、ちらほらと受付窓口にやって来た。

 どうやら、出だしは上々みたいだ。

 

(実力はあるが、女の子に誘われるとテンパっちまうチェリーボーイ純情派な奴らが誘いに乗って来たって感じか? とりま、俺はポムの女の子が掬えなかった連中を引きづり込めればいいな。残った女性陣は、なつき先生に任せりゃ一瞬だしな)


 真太郎がそんな事を思いながら、再び勧誘をしようとするなり、何者かが茶々を入れて来た。


「おい、コラ! なんで、魔王討伐軍ごときがしゃしゃって勝手な事してんだよッ!」

 口汚いヤジを飛ばして来たのは、真太郎がこの世界に来てから事あるごとに邪魔立てしてくるPKアキトだ。


「なんだテメーら、ここでも上から目線でリーダー気取りですかーっ?」

 現れるなり、速攻で煽って来たアキトを見た瞬間、真太郎は最高にうんざりした気分になった。


(またこいつか、疲れるなぁ)

 しかし、すぐに気持ちを切り替えて、迎撃態勢に移る。


「別にリーダー気取りって訳じゃないですよ。ただ、これ以上まとまりがつかない状況でパニックを起こし続けていると大変な事になるので、俺達だけでもまとまっておこうと思っただけですよ。別に、一般プレイヤーの皆さんをどうこうしようとする気はありません」


 明らかに害意を持ってからんで来ているアキトに対して、真太郎は丁寧かつ事務的に対応していなす事にした。


「どうこうするつもりが無いだと? テメーら魔王討伐軍には、三大ギルドが全部所属してんだぞ! オメーらが俺達一般プレイヤーに危害を加えようと思ったら、なんでも出来るじゃねーかッ!」


 アキトは真太郎の策を潰そうとでも思っているのか、魔王討伐軍を悪役に仕立てようとして来た。


 この状況は、思いがけないトラブルが発生したと言っていいだろう。


「ふざけんじゃねーぞ! テメーらが街で暴れるってなったら、一大事じゃねーか! なぁ、みんなッ!」

 アキトが危機感を煽るなり、日和見の連中が口々に彼に賛同した。


「そうよ、そうよ!」

「俺達は家に帰りたいんだ! 厄介事は勘弁してくれっ!」

「サバイバルも、戦いも、どうでもいいんだよ!」

「俺達を巻き込むんじゃねーよ!」


 いきなりのピンチ発生!


「テメーらみたいな危険な集団は、今すぐに解散しろっ! テメーらは、その存在自体が俺達、無力な一般プレイヤーに対する脅威なんだよっ!」


 だが、真太郎は困った顔をするのではなく、何故か嬉しそうな顔をしていた。


(いいねぇ、弱者を装った逆差別と誤誘導を使った詭弁かな? 煽り合戦なら負けないよ~!)


「なるほど、なるほど。そういう考え方もできますね。ですが、このバトルロワイヤルのルールは、敗者は勝者の言う事を何でも聞くと言うものです。つまり、アナタが優勝したら、アナタの命令で魔王討伐軍を解散しちゃってもいいんですよ?」


 早速、アキトとの舌戦に挑んだ真太郎が攻撃を開始する。


「ですが、この危険極まる世界で、みんながバラバラになるのは、ちょっと危な過ぎると思いますけどもねぇ~。それになにより、なんで我々が一般プレイヤーに危害を加えるという前提なんですか? 勘違いにしては、ちょっと無礼過ぎですよ」


「はっ! とぼけんな! テメーらは既に俺達に危害を加えてるじゃねーか。知ってんだぞ、市場のアイテムを買い占めたり、安全な宿屋を独占してんのが、テメーらだって事をなァ!」


 アキトがそんな事を言うなり、聴衆たちが賛同の声を上げた。


 どうやら、こっちの世界に来てから『魔王討伐軍』の名前を使って好き勝手していた不埒な連中が、面倒事を起こしていたらしい。

(予想はしていたけど、ここでそれが露見するのは参ったなぁ~)


 元々、ゲーム時代の魔王討伐軍は、プレイヤーから絶対の支持を得ていたわけではない。

 というのも、魔王を倒す為と称して、狩場や市場を独占していた事があるからだ。


 それゆえに、反感を持っているプレイヤーが少なくない数存在している。

 そこに、ゲームが現実になった今の状況で、魔王討伐軍の名を騙る不届き者が狼藉を働いたせいで、魔王討伐軍の印象は、お世辞にも良いものとは言えない状況だった。


(やれやれ、魔王討伐軍を作った後も、仕事は多そうだ)

 真太郎は先々の事を思うと、なんだか疲れを覚えた。


(とはいえ、今はまず魔王討伐軍を作るのが先決。頑張りまっせ!)

 だが、すぐに気持ちを切り替えると、再びアキトとの舌戦に戻った。


「今の状況において、最も大規模な集団である魔王討伐軍は、街の外で俺達の命を狙っているモンスターに対する最も有効な抑止力になるはずですよね? それをゲーム時代の遺恨を理由に解散させるのは、どうなんでしょう?」


 絶妙に危機感と安心感の両方を抱かせる言葉を使って、聴衆に不安と希望というアンビバレンツな感情を抱かせて揺さぶりをかける真太郎だった。

 

「……言われてみれば、そうだよな」

「モンスターと戦うなんて、あたしには無理だよ……!」

「今は危険な状況だし、皆でまとまらないと……」

 これにより、感情を揺さぶられた聴衆は、アキトよりも真太郎の言葉に耳を傾けるようになる。

 

「はっ! ここがモンスターで溢れる危険な世界つったって、この街にはざっと見積もって数万人のプレイヤーが居るんだぜ? 境遇が同じ連中がこれだけ居れば、街を守る事ぐらい簡単なんだよっ! だから、オメーらみたいに、身内だけでまとまった閉鎖的で強欲な集団はいらねーんだよっ!」

 アキトがそんな事を言うなり、またも賛同の声が上がった。


 やはり、ゲーム時代の遺恨に加えて、今の状況で独善的行為を働いた魔王討伐軍のメンバーは、一般プレイヤーの反感を買っているという事なのだろう。


(参ったなぁ……。馬鹿の尻拭いまで仕事に含まれるのか。魔王討伐軍を再編したら、馬鹿共にはお仕置きしなきゃ気が済まないね)


 自分と関係の無い連中に足を引っ張られた真太郎は腹立たし気な顔をすると、再びアキトに向き直った。


「ほほう、街を守るのは簡単、ですか……。ならば、お聞きしますが、なぜに皆さん、そんなにも不安そうな顔をしているのでしょう? それは、その程度の曖昧なつながりの助け合いでは、とうてい安心できないと心の底で思っているからなんじゃあないんですか?」

 

「それは、この世界から元いた世界に帰れねーから不安になってるだけで、この世界でサバイバルする事に対しては不安なんて微塵も感じてねーよ」


「ほほぅ。それは何故です?」

 アキトが妙な事を言い出したので、思わず素で聞き返してしまう真太郎だった。 


「俺達は、ゲームのキャラと同じ強力な能力を持ってんだぞ? しかも現地のNPCと言葉も通じるし、食い物もそれなりに手に入るし、ここでしばらく暮らしていけるだけの財産も持っている。つまり、この世界で生き抜く力は、最低限備わってる事になる。だから、誰かに支配されたり、搾取されたくはねーんだよっ! そうだろ、みんなァーッ!?」


 アキトが自分の力に酔った風な事を言い出しながら、他プレイヤーを煽った。


「そうだ! 俺達はゲームキャラと同じ力を持ってんだ!」

「高レベの俺らは、テメーらに頼る必要なんてねーんだよッ!」

 すると、アキトにまんまと煽られた連中が、口々に気勢を上げ始めた。


(上手いねぇ~。群れるのが嫌いな、あるいは群れることが出来ない高レベプレイヤーを煽って味方につけたか。なら、俺はこうしようかな――)


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