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勇者ゲーム ~ネトゲ廃人共、チート無双で異世界救ってこい!~  作者: ミネルヴァ日月
第四章 さんざめけ☆めけ! 勇者だヨ全員集合! 天下一武闘会!
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第15話 ギルド会談における策略の種明かし

「? どういう事だ?」

 また妙な事を言い出したな、という顔で刹那が質問する。


「人間の心理操作方法に、PRS技法(問題Problem、反応Reaction、解決Solution)というものがある。今回の場合、①まず問題を作り出す――アダーによる幽閉と、命令に従えとの脅迫。②問題に対し反応が発生――参加者達の反発。③そこで解決策を差し出す――つまり、脅迫込みの一方的なアダーの命令に対して、俺のバトロワだ。勿論、これにも同じくPRS技法を盛り込んでおいた」


「したり顔で語ってるけど、まったく意味が分からんぞっ!」

 一気に手のうちを明かされたせいで理解が追い付かない刹那が、思わず荒ぶる。 


「俺とアダーは、最初から最後まで計算づくで動いていたという事だよ。つまり、アダーがキレてみんなを時計塔に閉じ込めたのは、会談に集まった連中の精神状態にショックを与えて俺のバトロワの誘いを受け入れやすいようにする為の『偽の暴走』だったと言う訳だ」


「なんだとっ!?」

 驚きの事実を聞かされた刹那が、カッと両目を見開いて驚く。


「最初から、街の皆を集めたバトルロイヤルを提案しても、絶対に誰も乗ってこないのは分かりきっていたからな。アダーに一芝居打って貰った。本当は俺がキレる役だったのだが、普段冷静なアダーがキレた方が効果があるだろ? まぁ、俺も思い付きではしゃいでいるように見えて、裏では色々と考えている訳よ」


 暴走している様に見えて、何気に策士だった所を見せつけた真太郎だった。


「とはいえ、まだ話をまとめただけ。本当の勝負はこれからだ」


「ううむ……なんか、釈然としない……」

 仲間なのに作戦を知らされていなかった刹那は、真太郎に一杯喰わされた気分になっていた。


「ギルド会談に集まった連中が、お前の策に乗っけられた理由は分かった。それより問題は、何でバトルロイヤルを開催したかだ」

 なんだか気持ちがすっきりしない刹那が、次の質問をぶつける。


「人は、『選択肢が多くなり過ぎると、選択するのが困難になる』という心理的傾向がある。お前も経験があるだろ?」

「食べ放題バイキングで種類があり過ぎると、選ぶのが面倒になって肉と麺類とデザートしか選ばなくなるやつか?」


「例えは妙だが、概ね正しい答えだ。人間は選べる選択肢が多いと、選ぶ事に疲れを感じる心理傾向にある、という事を言いたかっただけだからな。この傾向は逆に言えば、『少ない選択肢を与えてやれば、それを喜んで選ぶ』とも考えられないか?」


 また真太郎が小難しい事を言い出すなり、刹那がへの字眉毛になる。


「分かりやすく今の状況に当てはめると、今の状況を何とかしたいと誰もが思っている。だが、変える為には、やらなければならない事が多すぎる。赤の他人との話し合いだったり、PKの退治だったり、仲間を集める事だったり、この世界で安全を確保して食べ物や住み家を見つける事だったりな」


「街の連中は、やる事が多すぎるから何をやったらいいかを選べずにいる。だから、結果として、何も出来なくなっているって事か?」

 地雷キャラだが利発な刹那が、察しの良さを発揮する。


「俺はそう考えるし、実際にも大きく間違ってはいないだろう。つまり、今の『変える為の何かをしたい。だが、やらなければならない事が多すぎて何も出来ない状況』において、『魔王討伐軍』のボスを決めるバトルロワイヤルというのは、実に都合がいいんだよ。『魔王討伐軍』のボスになるって事は、今の状況だと独裁者になるのと同じ意味だしな。何をやればいいか分からん連中に指向性を与えてやる上に、色々と欲望を掻き立ててやるんだ、みんな寄って来るに決まっている」


 完全に邪な企みをしている真太郎が、人の悪い笑みを浮かべた。

 

「お前の邪悪な理論では、それが正しい答えだろうよ。だが、戦うのは嫌だって奴は多いと思うぞ」

 割と賢い刹那が、冷静な意見で反論する。


「かもな。だが、『今から街のみんなを集めて話し合いをしまーす!』なんて言っても人は集まらないし、さっきの会談を見て分かるように、話し合いで物事を決めるのはクッソ面倒で難しい。それに、この街には、頭のおかしいPKや性犯罪者が混ざっているんだから、最初からマトモな話し合いなどできはしないよ」


「むぅ。それは、そうだな……」

 反論しづらい真太郎の言い分に、刹那は渋々納得した。


「でもさぁ、なんでお前が開催したバトロワに、こぞって人が参加してんだよ? 今言った理由だけじゃ、あんなに人が集まってる理由にはならねーよ」


「なんだお前は? 知りたがりか? そーいえば、お前クレクレ厨だったもんな、情報もクレクレなのか? クレクレ厨ならぬ、クレクレチュウなのか?」

 知りたがりの子供のように何度も質問をして来る刹那を、真太郎がうざがり始める。


「誰が、クレクレチュウだよ! 変なあだ名付けんじゃねーよっ!」

「やだ、この子! 知りたがりの上、反抗期っ!?」


 刹那が小動物の様に荒ぶるなり、アダーが彼女をからかう真太郎を諌めた。

「真太郎。刹那が可哀想じゃないか、真面目に答えてやりなよ」


「先生がそう言うのなら、自分でちっとも考えようともしない知りたがりのチュウちゃんの為に、特別に教えてあげてもいいですよ」

「どうせ大した事ないんだから、もったいぶんなよっ!」

 小生意気な刹那が、兄に反抗する妹の様に勝ち気に振舞う。


「俺達『名無しのギルド』は、現状五人+ババア一人のクッソ零細ギルドだが、魔王討伐軍のリーダーであるアダーや最強格プレイヤーの剣聖イナバ、勇ゲー界のアイドル・さくにゃんなんかがいる有名ギルドだ。しかし、知る人にとっては聞き覚えのある名前であっても、俺達の名前だけで街中の人間を集める事は難しいだろう。なので、客集めに『魔王討伐軍』の名前と、『ポム・アンプワゾネ』の女の子達を使った」


「ポムの女の子達だと?」

 妙な話になって来たぞ、と刹那が訝し気な顔をする。


「そうだ。今はあんなにもバトロワ参加希望者が集まっているが、最初は人が集まらなかったんだよ」

「ガチ廃人が多いとはいえ、勇ゲーは割と民度が高くてそんなに殺伐としたゲームじゃなかったからな。特に最近はガチバトル勢より、まったりプレイ派が多いぐらいだし」


「そんな状況でどうするか? はい、回答者はせっちゃん!」

「クイズ形式にすんな! 普通に話せよっ!」

 知りたがりな刹那が、茶化す真太郎を急かす。

 

「はい、不正解! 答えは、『サクラ』を仕込むです」

「そのレスポンスの速さはなんだよっ!? ってか、『サクラ』?」

 すぐに返ってきた答えに刹那が思わず戸惑う。


「そう、『サクラ』。通販サイトで売れ筋商品を良い商品だと思ったり、行列になってるお店が気になったり、みんなが使っている商品が欲しくなったり――と、人が多数派のものに興味を惹かれる心理作用を『バンドワゴン効果』という。社会的動物である人間は、みんなが認めているものを手にする事で、失敗や損を回避しようとしたり、みんなと同調しているという安心感を得ようとしたりするんだな」

 

 大多数の人が「良い」、「賛成」と評価しているものは、自分にとっても良いものだろう、という思い込みを利用した心理テクニック『バンドワゴン効果』を出現させる為に、真太郎は『サクラ』を使って意図的にバトルロイヤルが盛り上がっている雰囲気を作り出していたのだ。


「ポムの女の子達には、『サクラ』になってもらうと同時に、勧誘込みのチラシ配りもやってもらった。そしてこの時、女の子達にチラシと一緒にこのクッキーを配らせた」

「クッキー? なぜ、クッキー?」

 真太郎に小さなクッキーが入った包みを手渡された刹那が、小首を傾げる。


「『返報性の原理』によって、誘いを断り辛くする為だ。返報性の原理とは『受けた恩は出来るだけ返したくなってしまう』という心理現象の事だ。その恩を感じる相手ってのが美少女なら、大抵の人間は喜んでバトロワに参加しちまうって寸法よ」


「さっきから専門用語を使いやがって。お前の話は、意味が分からないぞっ!」

 専門用語を当たり前の様に使う真太郎の話に刹那が付いていけなくなるなり、アダーが分かりやすく解説してくれた。


「刹那。駅前で募金やアンケートをしている人達を思い出してみたまえ。彼らは、道行く人が足を止めてくれるように、なんらかのグッズを配っているだろう? こういう客引きのテクニックを『返報性の原理』というんだ。可愛い女の子にバトルロイヤルに誘われ、仮に断ったとしても話を聞いてくれたお礼にクッキーをくれるんだ。そんな健気な女の子の誘いは、普通の人ならば断りづらいとは思わないかい? その与えられた恩義に応えたい気持ちを『返報性』というのだよ」


「なるほど!」

 アダーの分かりやすい説明に刹那が納得する。刹那はまた一つ賢くなった。


「ポムの女の子達によって、最初のムーブメントを作り出す事に成功すると、事態は一気に動き出した。なぜなら、人は判断基準や知識が無くて自分自身に確信が持てない時――つまり今みたいな状況の時、不安ゆえに他人の真似をする傾向が強くなり、人々は寄り集まる。そして、結果的に『集合的無知状態』に陥るからだ」


「? ギルマスと違って、バカタローの話は分かり辛いぞっ!」


「分かりやすく言えば、不安な人間が集団になると不安が増長されて、個人でいる時よりもパニクって馬鹿になるという事だ。そんな集合的無知状態に陥った人間の集団は、『扇動者に簡単にコントロールされる』。不安な気持ちを持っていて、どう行動するのがベストか知る為に、自分以外に手がかりを求めないといけない人間――今のオリエンスの街の大多数の人間――ほど、この罠にかかってしまう」


 真太郎が説明を終えるなり、刹那が次の疑問を口にした。


「つまり、街のみんなはまんまと、お前の策略にハメられたってことだろ? オーケー、街の連中がバトロワに参加した理由は分かった。だが、納得は出来ん」

 話を理解した刹那が、なぜか腕を組んで偉そうにする。


「お前が納得しようがしまいが、そんな事はどうだっていいんだよ。結果が全てだ」

「んだとぉーっ!」


 刹那と真太郎がしょうもない喧嘩を始めそうになるなり、アダーが話題を逸らして喧嘩を止めた。


「ところで、真太郎。受付は誰がやっているんだい?」


「師匠」

「キモオタかよ! 寄って来た人がキモがって逃げちゃうだろっ!」

 アダーに答えたはずなのに、刹那が出しゃばってきた。


「顔は隠すように言ってあるから、心配はないぞ。それに、師匠はコミュ障とはいえ、勇ゲーでは名の知れた存在、客引きにはうってつけだ。保険としてみこちゃんもつけているし、問題は何もないよ」


「おや? さくにゃんは受付じゃないのかい?」

「っていうか、あのババアどこ行ったんだよ?」

 アダーの言葉でさくにゃんの事を思い出した刹那が、急に姿が見えなくなった彼女を探した。


「あれ? さっきまで一緒にいたのに、どこかに行ってしまったみたいだね。真太郎は知っているかい?」

「知りたくない」

 面倒事ばかり引き起こすさくにゃんには、関わる気が一切ない真太郎だった。


「知ってる、知らないじゃなくて、お前の願望かよ。っていうか、ババアを探さなくていいの、ギルマス?」

「いいんじゃないのかな。さくにゃんは気紛れだから、どこかに行っちゃうのは仕方がないし、見つけた所で言う事を聞いてくれるとは思えないしね」


 そんな事をやっているうちに、三人はバトルロイヤルの受付会場に到着した。

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