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勇者ゲーム ~ネトゲ廃人共、チート無双で異世界救ってこい!~  作者: ミネルヴァ日月
第四章 さんざめけ☆めけ! 勇者だヨ全員集合! 天下一武闘会!
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第4話 交渉決裂!

「アダー君。君ってば綺麗な顔して、なかなかにえげつないファシストだねぇ」


 板垣がそんな事を言うなり、アダーが心外そうな顔をする。


「治安回復政策の施行当初は、確かに独裁的な振舞いもする事になるでしょう。ですが、目指したい完成形は、ここにいるメンバーによる独裁ではありません。目指す完成形は、信頼と友好関係に基づくプレイヤー間の助け合いと、それによって発生する自発的な秩序と平和の形成です。ボク的には、参加者全員がこの志を共有出来る互助会の様な組織が創れればいいな、と思っています」


 板垣の嫌味に対して、アダーは一切動揺する事なく、クールな眼差しで誠実な答えを返した。


「成程、悪くはないね。しかし、君が言うその計画を実行するには、人、金、物、そして時間が、膨大に必要になるだろう。今は、ゲームでのギルド運営とは違う現実的な組織運営の思考が必要だ。分かっているのかい? 君が今言った事は、学生の政治家ごっこで出来るような生易しいものではないのだよ?」

 板垣が社会を知っている大人の眼差しで、青臭く政治を語るアダーを見つめる。


「おっしゃる通り、ごっこ遊びでは不可能でしょう。当然、全身全霊を懸けて取り組む所存です。なにせ、ボクらは何を犠牲にしてでも、このオリエンスの街に平和と秩序を構築しなければならないのですからね」

 この世界でサバイブする覚悟を決めているアダーは、手厳しい大人を相手にしても一歩も引かない。

 

「ここは元いた世界とは全く道理が違う危険な世界なんです。自分達の手で安全を手に入れなくては、誰も守ってはくれません。それになにより、一握りの異常者や犯罪者達によって、大多数の平穏を望む人々が危険に晒されるいわれはありません。そんな理不尽、ボクは許容できない」

 厭味ったらしい板垣の質問に、アダーが毅然とした態度で答えを返す。


「アダー君の意見には、私も全面的に同意するよ。しかし、君の理想に至るまでの、犯罪者や反対者の排除に関しては、私達みたいな大規模ギルドや戦闘系ギルドの助けが必要不可欠だよね?」

 アダーの考えに同意を示した板垣は眼鏡をかけ直すと、ちらりと斬人を横目で見た。


「だが、ある意味で一番頼りになりそうな『渾沌騎士団』は、会談を投げ出そうとしている。仮に私達が自治組織を発足させたとしても、彼らが敵対してきた場合、どう対処するつもりだい? 話し合いで解決出来ればいいが、出来なかった場合は? やはり戦闘かい? 戦闘も結構。だが、私達が負けた場合はどうするんだね?」


 板垣のいやらしいながらも的確な質問は、確実にアダーの計画の盲点を突いていた。


 それに気付いた参加者達が、口々に意見を言い出し、会場にざわめきが広がる。


「仮に。勿論、仮にだが、私達、『魔術結社JMA』が反旗を翻せば、傘下も合わせ総数は熟じょ――もとい、1910名。それだけの人間が集まっていれば、小さな軍隊だ。事実上、誰にも手出しは出来ないだろう。更に、実際に戦闘になったとして、街中での戦闘行為は禁止されているよ。となると、街の外での捕縛やPKと言う事になるのだろうが、それに勝利した所で、私達に決定的なダメージは与えられないよ。なにせ、死んでも復活するのだからね。敵対者に対して『死』という絶対的な懲罰を与えられない状況で、どう違反者を抑えるのかな?」


 圧迫面接的じみた板垣の質問に続いて、テンテンもアダーにツッコミを入れる。


「ついでに言わせてもらえば、兵糧攻めって案も実現性が低いわね。この世界では、生産職についていれば、もうそれだけで、その道の一流職人みたいなものなのよ? 生活必需品はギルド内の生産職が自給自足してしまうわ。となると、兵糧攻めは、材料調達が出来る戦闘職と物が作れる生産職が一定数揃ってるギルドには、効果が無い。そんな奴らに、どうやって言う事聞かせるつもりなのかしら?」


 言外に自分達が反旗を翻す可能性をテンテンが臭わせるなり、アダーが腹立たし気に目を細める。


「……テンテン。なかなかいい質問をするじゃあないか――」

 しかし、アダーがテンテンに反論するよりも先に、カイトが話を始めた。


「板垣の旦那達の質問を踏まえると、アダーさんが提案した案が成立した所で、『魔王討伐軍』は、力関係の結果、大手ギルド連中の意向のみが重視されるだろうな。そんなんじゃ俺達中小ギルドは、無駄に責任と負担が増えるだけじゃねーのか?」

 中小ギルドを代表する様なカイトの意見に忍蔵が同調する。


「そうでゴザルな。『魔王討伐軍』として、某達が一つにまとまるのは賛成でゴザル。だが、大手ギルドばかりが優遇されるようだと、膨大な負担を引き受けてまで、某達の様な中小ギルドが、同盟を組む理由が無くなるでゴザルよニンニン」

 保身を考える忍蔵が渋い顔をすると、それにつられて双子忍者が騒ぎ出した。


「そうですよ! テメーら、規模がデカいからって調子乗りすぎですよっ!」

「まったくですよ! テメーらみたいなもんと手を組むぐらいなら、言う事聞く格下共をまとめ上げた方が、よっぽどマシですよっ!」

 双子忍者がそんな事を言うなり、カイリがいやみったらしいツッコミを入れる。

 

「おいおい、アンタら最初から、そんな思惑で初心者共を傘下に加えてたのかよ? 人の良さそうな顔して、ズル賢い連中もいたもんだなぁ。なぁ、かなこ」

「ホントなのだっ! お前ら、下衆の極み忍者なのだっ!」

 カイリに同調したかなこが、棘のある目つきで双子忍者を睨みつける。

  

「アタイ達は、かなこかなこ言いながら、ハーレム作って喜んでる馬鹿なアンタのお兄ちゃんとは頭の出来が違うのよォ」

「んだとぉ! おい、オカマパンダ! あんちゃんを馬鹿にすんなっ!」

 参加者達が腹に隠していた思惑を曝け出し、各々睨み合いや小競り合いを始めるなり、真太郎は呆れ顔で天を仰いだ。


(ほら、来た。やっぱ人間、いざとなると本性が出るね。力を合わせなきゃ、死んじゃうかもしれないって状況にもかかわらず、しょうもない言い争い始めちゃったよ。これも、自由をはき違えた拝金主義的な戦後教育のせいなのかねぇ~、それともこれが人間の本来の姿なのか……? 人間って、ほんとやーねぇ)


 真太郎はそんな事を思うと、やれやれと頭を振った。


(と、色々と思う所はあるが、ここまでは概ね想定の範囲内。確かに、『魔王討伐軍』を結成した所で、その後、利害調整の為に内輪揉めすんのは当然なんだよなぁ)


「ゲームん時みたいに、『打倒、魔王!』なんつー、分かりやすい目的があるといいんだけど、今は、『この世界でどう生き抜くか』っていうシビアでヘビーな問題だから、話し合いで物を決めるのは、ちっとばかし難しいかもなぁ~……」


 口喧嘩をヒートアップさせる参加者達を呆れ顔で眺める真太郎が、苦労性気味にため息をついた。


 すると、不安げな顔をしながらオロオロと皆を見ていた重兵衛が、「……にゃあ」と切なげに鳴いた。


「やっぱり、ギルド同士が一つにまとまるにゃんて、無理なのかにゃあ……?」

 会談が話し合いから喧嘩の様相を呈して来るなり、重兵衛が泣き出しそうな顔で真太郎に問いかける。


「またにゃ……前もこうやって喧嘩別れしちゃったのにゃん……もうどうすればいいかわからにゃいよ……なんで皆仲良く出来にゃいの……?」

 話が最悪の方向に転がり始めたが、それを収める術の無い重兵衛は、今にも泣き出しそうだ。


「俺の重兵衛ちゃんが、醜い争いを続ける愚かな人間共に心を痛めて……泣いているっ!?」

 そんな重兵衛を見るなり、真太郎は大げさに戦慄した。


「ふにゃあ……。やっぱり人間なんて、信用できないにゃ……」

 二度も人間に裏切られた可哀想な重兵衛を見るなり、真太郎の胸がキュッと締め付けられる。


「大丈夫、重兵衛ちゃん? 結婚する?」

「……しにゃい」

 重兵衛にあっさり振られた真太郎をよそに、エリーゼが皆の喧嘩を打ち切るような事を言い出した。


「もう、これ以上話し合いを続けるのは無理なようですわね。確かに、なつきさんが提案する案を成立させる事に意味はあると考えますわ。しかし、現時点において、わたくし達が利害を超えて一つにまとまるのは不可能でしょう。このまま言い争いに始終していても仕方がありませんわ。言い争いを続けるぐらいならば、殴り合いが始まってしまう前にギルド会談はお開きといたしましょう」

 エリーゼが厳しい現実を指摘して会談を打ち切ろうとするなり、アダーが無言で銀髪をかき上げた。


「……もういい」


 アダーは切れ長の目をナイフのように鋭く尖らせると、大きくため息をついた。


「旧知の間柄だからといって、キミ達に少しでも期待したボクが馬鹿だった……」

 ただならぬ雰囲気を纏うアダーに気が付いた参加者達が、ぱらぱらと彼女に視線をやり始める。


「まったく……どいつもこいつも度し難い愚か者だよ」

 アダーがいつになく鋭く冷たい声を出すなり、会議場にいる全ての人間の視線が彼女に集まり、その場に奇妙な静寂が訪れた。


「キミ達、いい加減、『ボクの家』で、好き勝手にわめくのはやめてくれないか?」


「は? 『ボクの家』?」

 アダーが妙な事を口走るなり、誰ともなくツッコミを入れる。


「キミ達にはあえて言っていなかったけれど、この会談の始まる直前、ボクはこの時計塔を個人購入していてね。故に、この場所はボクのプライベートエリアだ」


「「「え?」」」

 アダーの言葉を誰もが理解出来ず、皆がぽかんとする。


「このボクの言う事に従わない場合――キミ達は、死ぬまでここから出られないよ」

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