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勇者ゲーム ~ネトゲ廃人共、チート無双で異世界救ってこい!~  作者: ミネルヴァ日月
第四章 さんざめけ☆めけ! 勇者だヨ全員集合! 天下一武闘会!
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第2話 最初から喧嘩腰!

「一つ、質問していいか? 何故、アダーが場を仕切っている?」


 言葉少なく尋ねたのは、オリエンスの街きっての武闘派ギルド『渾沌騎士団』の紅だ。

 その名の通り、燃え盛る炎のような紅蓮の髪の毛をしている肉感的な美女だ。

 

「ボクは、このギルド会談の開催者兼発案者として、司会を務めさせてもらっています。無論、この場において、ボクに強行採決などを可能とする絶対的な権力などはありませんので、ご心配なさらず」

 敵意のにじむ紅の質問に対して、アダーはにこやかに笑って即座に応える。


 すると、何を思ったか、紅が目を細めて棘のある目つきをした。


「私が言っているのは、そういう事ではない。このギルド会談は、この街の有力ギルドを集めたものだったな?」

「ええ、そうですよ」

 アダーが「おや?」といった顔で紅の質問に答える。


「そうか、そうだろうな。この場にいる参加者を見た限り、有力ギルドという条件は、全参加者がクリアしていると言っていいだろう」

 何を言い出すんだ、という顔つきのアダーが、紅を訝しげに見つめる。


「君達、『名無しのギルド』を除いてはな」

 紅はそう言うと、アダーを睨みつけながら詰問を開始した。


「私達と同じ、『有力ギルド』に名を連ねる資格が、君達にはあるのか? 短期間の活動実績しかない上に、所属メンバーのほとんどが札付きの迷惑プレイヤーと狂人共、しかも現在は欠員ばかりで、六人しかメンバーがいない極小ギルド――いや、ただのパーティーだ。そんないかがわしい連中が、私達の未来を決める重要な会談に参加する資格はあるのか?」


 真太郎の小癪な奸計にハマって無理矢理この会談に参加させられていた紅は、元々、真太郎達に良い感情を持っていない事もあって、随分と攻撃的だった。

 言動から察するに、真太郎達『名無しのギルド』に『ギルド会談への参加資格なし』、という烙印を押して、この場から追い出そうと画策しているのだろう。


 そんな紅の剥き出しの敵意を察するなり、真太郎がアダーにそっと耳打ちした。


「早速、問題発生ですな」

「問題は無いよ、紅さんの抵抗は想定内だ。ある意味で出だしは好調と言えるね」

 アダーは、ピンチに対して、どこか楽しそうに口の端を吊り上げて笑った。


「MCとは『マスター・オブ・セレモニー』の略。この場を支配するのはボク達だ」

「つまり、俺が、俺達がMCだ! って事ですね」

「その通り。このギルド会談、ボクらが最高の形でまとめてやろうじゃないか」

 アダーは難しいゲームに挑む子供の様に無邪気に瞳を輝かせると、厳しい視線を向けて来る紅の顔を見据えた。


「紅さんの言う通り、ボクら『名無しのギルド』は、ボクら自身が招集した貴女達『有力ギルド』の選定基準からは外れるでしょう。この会談への参加資格の有る無しで言えば、無いと判断する事も出来ます」

「では、参加資格の無い君達は、退場してもら――」

 自分の攻撃がヒットした事に気を良くした紅の言葉を、アダーがさっと遮る。


「だが、それは『参加者』としての資格の話。ボクらは『主催者』としてここに存在しています。そして、主催者としての資格は、十分すぎる程に満たしています」


「何?」

 虚を突かれた紅が、訝しげな顔をする。


「ボクは、この状況になってから、一日目にして各地に散った『ポム・アンプワゾネ』のメンバーと無所属で寄る辺を失くしていた女性プレイヤーを集め、その後はポムの参謀として、誰一人として怪我人も死亡者も出すことなく、ここまで守り抜きました。加えて、誰よりも先に、誰もが実行できなかった有力ギルドを集めたこの会談の開催を実現させました。これだけやれば、主催者として充分な働きですよ」

 攻撃をあっさり切り返されるなり、紅が言葉に詰まる。


「逆に質問しましょう、紅さん。貴女達『渾沌騎士団』は、ボクら『名無し』の数百倍の規模を持ちながら、ボクらに比肩しうる行為をしたのですか? 失礼ですが、身内同士でまとまってギルドハウスに引きこもっていただけではないのですか? その他の面々にも問いましょう。この状況になってから、『自分達以外の為に』、何か行動を起こそうとした事がありますか? 皆さん、お答えください」

 理路整然と語るアダーの剣幕に押されて、紅を筆頭に誰もが思わず黙り込んでしまう。


「皆さんの沈黙は、『否である』という答えと受け取ります」

 参加者達の無言の答えを聞いたアダーが、したり顔で微笑む。


「ならば、ボクらは貴方達、『受け身なだけで何もしなかった癖に、口だけ達者な参加者の皆さん』と違って、この会議を取り仕切る主催者としての資格を有していると、言い切ってしまっていいでしょう。異論はありますか?」


「な……無い」

 アダーの有無を言わせない言葉を受けて立場が悪くなった紅が、その攻撃の矛を渋々収める。


「分かった。アダー、君にはこの会議を取り仕切る資格が十分にあると認めよう。だが、そこのシンタロー! お前には何がある?」

 アダーにしてやられた紅は、彼女を相手にするのは分が悪いと判断して、せめて真太郎だけでも排除しようとした。


「紅さん、アンタさっきからなんなんですか? まさか、『俺達がクッソちんけな弱小ギルドだから、この場を仕切る資格が無い』とでも言いたいんですか?」

 紅に攻撃の矛先を移された真太郎が、うんざり顔で質問をぶつける。


「そうだ!」

 真太郎の言葉に我が意を得たりと、紅が思わず前のめりになった。


「得意顔になって張り切っている所、誠に申し訳ない。ですが、お忘れだろうから、ここで再度言っておきましょう」

 真太郎はそう言って紅の牽制を速攻で叩き落とすと、彼女に不敵に笑いかけた。


「俺はゲーム時代、曲者揃いの『魔王討伐軍』のギルド間の調整役を務めていた男であると同時に、本日ギルド会談に参加していただいている各界のパネリストの皆様のお家を一軒一軒回って、ギルド会談の開催を実現させた功労者です。因みに、魔王&四天王との戦闘経験が有り、レベルは110でこの中で最強の存在です。少なくとも、紅さんよりは、この場を仕切るに足る存在だと思うが、いかがですかな?」


「ぐぬっ!」 

 小癪な真太郎にしてやられた紅が、言葉に詰まる。

 そしてしばらく睨むと、おもむろに腰に下げている剣に手を伸ばした。


「おや? 剣なんかに手を伸ばして、何をするつもりですか?」

 紅を丸め込んでいい気になっている真太郎が挑発じみた事を言う。

 すると、紅が目を鋭く細めて戦闘態勢に入る。


「今すぐに確かめさせてやろう……!」

  

「ちょっと、質問してもいいでゴザルか?」

 今にも喧嘩を始めそうな二人の間に割って入ったのは、服部忍蔵だ。


 サポート系ギルドの最右翼である『飛龍忍軍』のギルドマスターは、喧嘩の仲裁に手馴れた様子でそれとなく真太郎達の間に割って入ると強引に話題を変えた。


「某は聞きそびれていたのでゴザルが、なぜこのメンバーを選んだのでゴザルか? 他にもここに参加するに足るギルドは、いくつもあるでゴザろう? なにせ、『魔王討伐軍』には、大小数多くのギルドが参加していたのでゴザルからなニンニン」

 不意に放たれた忍蔵の質問に、真太郎が紅から視線を逸らして答える。


「ここに集めた面子の選定基準はいくつかありますが、最も重視したのは、『一般プレイヤーに対する影響力』です。無駄に規模が大きいだけだったり、重課金者や高レベルが揃っているだけの『上辺だけ有力』な他のギルドと違い、この場に集まったギルドには、カリスマ性、あるいは求心力というものがありますからね」


 真太郎は説明の中に褒め言葉をさりげなく織り交ぜる事で、空気が悪くなった場を和ませる事を忘れなかった。

 勿論、選定したギルドにカリスマ性があるのは事実なので、嘘を言っている訳ではない。ただ、聞き手が喜ぶように事実を誇張しただけだ。

 

「人間は多くの場合、権威に従属し、長いものに巻かれるのが好きな為、近くにいる名も無き人の話には耳を傾けもしない。だが、それとは逆に、権力者の話や有名人の話にはにべも無く飛びつく習性がある」

 真太郎はそう言うと、対面に位置する麗しのお嬢様エリーゼを指さした。


「そこで、勇ゲー内で絶大な人気を誇る『ポム・アンプワゾネ』のギルマス・エリーゼさんの出番だ。彼女は、勇ゲー内で知らない人がいない程の有名人であると同時に、あの有名な財閥家の鳳凰院財閥家のお嬢様だ。ゲーム実況界で有名な重兵衛ちゃんも、同じく知らない人がいないアイドル的存在だ。更に、うちのギルマスのアダーは、『魔王討伐軍』を指揮した実績があり、魔王とのバトルイベントに参加した奴なら誰もが知っている有名人だ」

 真太郎はそこまで言うと、全員の顔を見回した。

 

「俺が重視したのは、『ゲームで知っているあの有名人達が動き出した!』という宣伝効果です。そして、ここのメンバーが『ゲーム時代に培った信用がもたらす安心感』です。ここに集まった皆さんがゲームで培った実績と知名度は、今の人心が乱れている状況下において、非常に強力な影響力を持っています」

 話を終えた真太郎に続いて、アダーがおもむろに口を開く。


「バトル系ギルドのカリスマである、斬人くんと紅さん。魔法に関する情報を知りたければ、必ず頼る事になる板垣さん。女子プレイヤーなら誰もが憧れるエリーゼと百合子。中小ギルドのお手本として男女問わず絶大なる人気を持つ、かなこちゃんとカイリくん。この街の八割のプレイヤーを顧客に持つインヤン飯店と獣人同盟。多くの人が一度はお世話になったであろう忍蔵さん」

 アダーは言いながら、円卓に座る各ギルドの面々の顔を流し見ていく。


「ここに集まって貰ったギルドは、誰もが知っている勇ゲーでの有名人です。皆さんは真太郎が言ったように、ご自分が思っている以上にオリエンスの街の人々に対する強い影響力があります」

 アダーがそう言うと、何故かかなこと双子忍者が得意げな顔をした。


「その上、ここに集まったギルドの構成員の総数は、ゆうに七千人を超えます。それが一つの組織になれば、不安と絶望に苛まれているプレイヤー達が、助けを求めて縋りつくのは自明の理と言えるでしょう」

 アダーは力強く断言すると、おもむろに話を締めた。

 

 少々強引に話をまとめた感があったが、反論は誰からも出て来なかった。

 褒められて気を悪くする奴はいないから、当然の結果だろう。


(とはいえ、問題なのは、こいつらも自らのポテンシャルを自覚しているからこそ、自分達の利益を主張して平等な同盟関係を結ばない、と予想される事だ。ゲームならともかく、今は全てが現実なんだ。半端な譲歩や迂闊な妥協は死を招く――ゆえに、自分達に損な条件で同盟を組む事は決してないだろうなぁ~……)

 

 真太郎の考える通り、ギルド会談に参加している面子は、この会談に利があると考えているからこそ、アポなしでいきなり参加を要請されたにも関わらず、この会談に出席しているのだ。

 

 当然、友好を深める為に来ている訳ではない。

 それだけに、ギルド間で揉める事無く同盟を組むのは限りなく難しいと言えた。


 よく見知った勇者ゲーム風の世界にいるとはいえ、ここは紛れもない現実なのだ。

 物事に取り組む時の態度は、ゲームの時とは気軽さが違う。

 だからこそ、この場には言いようのない緊張感が満ちているのだ。

 全ての参加者が護衛を何人も引き連れて来ているのも、その心の表れだろう。


(『魔王討伐軍』の再編成の件は、事前に直に会って話を聞かせておいて正解だな。手間だったが、結果的に話の理解が早くなった。しかし、ゲームで組んでいた事がる間柄とはいえ、ここで再び結成するのは、なかなかに骨が折れそうだぞ)

 真太郎は、先々の事を思って苦労性気味にため息をつくと、隣に立つアダーを見た。

 

(だが、今回は参加者集めのギルド回りの時と違って、頼りになるなつき先生がいるから、俺はマジで司会のアシスタントだけで終わるかもしんないけどねぇ~)


「ギルド会談への参加者の選定基準は以上です。ご了承いただけたかな?」

 アダーに対する強い信頼感を滲ませる真太郎の視線の先で、アダーが参加者たちに説明を終えた。


「なるほど。そういう事でゴザったか。あい分かったでゴザルよニンニン」

 質問者である忍蔵が納得するなり、板垣がおもむろにアダーにツッコミを入れた。


「ここに集められたギルドの構成員の総数から考えるに、君達はパレートの法則を元に動いていると思うのだが、それは自然法則ではなく経験則だ。街の人々を動かしたければ、こちらの人数は出来るだけ多い方がいい。数が多い方に主体性が移行するのだからね。ゆえに、この場にはもっと多くのギルドを参加させるべきだろう……例えば、クラン・ホワイトヒーラー、錬金術師集団マギクラフト、戦闘系魔法ギルド・ドラゴンウィザーズなどを」


「おい、オッサン! それ全部、テメーの傘下のギルドじゃねーかっ! 何さりげなく頭数増やそうとしてんだよッ!」  

 シレっと自分の仲間を介入させようとした板垣に、即座に斬人がツッコミを入れる。


「文句を言うぐらいならば、君達も同盟ギルドを加えればいい。いいか、政治は数だよ。ここで『魔王討伐軍』を結成したとして、その後、街にいる推定三万人超のプレイヤーを抑えられるとは到底思えないね。最低でも全人口の三分の一。せめて、一万強の人数をこちらの陣営に加えなければ、人民の制御などできはしないよ」


 いつもは熟女の話ばっかりしている癖に、意外とリアリストで賢い板垣がそんな事を言い出すなり、アダーが「あはっ」と笑った。


「あはは、板垣さんは面白いことを言うなぁ。現代社会とは、王侯貴族と資本家が作り出した人工的な人間牧場であって、そこで養成された現代人は家畜同然ですよ? よって大衆は、支配者階級が長い人民支配の歴史の上に導き出した経験則で無理矢理動かすものです。ボクらは、能無しの羊を導く羊飼いになる必要が――」

 ひねくれ者のアダーが悪い癖を出すなり、真太郎が即座に止めに入る。


「なつき先生ーっ! お言葉が少々アナーキストに過ぎます! そんな過激な話し方では、みんなドン引いてしまうっ! スタバでキャラメルフラペチーノ片手に政治談議をする意識高い系女子大生レベルに言葉遣いを和らげてくださいっ!」

 賢いが少々アナーキストな傾向があるアダーが毒気を見せるなり、真太郎がすかさずたしなめた。


「……我が祖国、日本の国体を思い出してみてください。実質的に国政を運営する指導者層は、全国民の二割にも満たない上、選挙で選ばれて政権を取った与党でさえ、日本全国を治めるのに、六割に満たない人間の同意だけで国家運営をしているんですよ? たった三万人ぐらいの集団ならば、指導者層は二割もいれば充分。実務は別として、指導部はここにいる我々だけで十分と思いますがいかがですか?」

 多少言葉遣いを押さえたとはいえ、アダーの物言いは少々乱暴だった。

 

 そんなアダーの言葉を聞き終わった瞬間、エリーゼがものすごい剣幕で声を上げた。


「なつきさん、いい加減になさいっ!」

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