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第31話 ここにいないギルメン共の行方

「ネトゲなんてのは、スマホゲー全盛の今の時代、コアなゲーマーか暇人しかやらないもんだ。それに、リリースから十年以上経ったタイトルは大抵、ライトユーザーがいなくなって、廃人やRMT業者、重度の物好きしか残ってないもんなんだ。つか、それが正しいMMOの状態なんだよ」

 真太郎はそう言って一旦話を区切ると、「でも」と言って話を続けた。


「でも、勇ゲーはお手軽なスマホゲーか、家庭用ゲーム機の黎明期ばりにユーザー層が幅広い。ゲーム時代から、勇ゲーのプレイヤーは、なんか他と違う感じがしてたけど、ゲームがリアルになった今の状況になって、それをはっきりと確信した」

「お前の話は回りくどいんだよ! バカタローは結局、何が言いたいんだよ?」

 真太郎の話にじれた刹那が、答えを急かす。


「さっき、ギルド巡りをして気付かなかったか? 明らかに、ネトゲ廃人とは程遠い人間ばっかりだっただろ? 元ヤンでDQNな斬人とその仲間達、自称とはいえ官僚の板垣さん、どう見てもリア充なカイリ君と取り巻きの女の子と、健全な小学生の海賊王、忍蔵はともかくアホな双子忍者は、ネトゲつかネットすら出来る感じには見えない」

「なんだよ、見た目の話かよ」

 真太郎の言葉を聞いた刹那が、馬鹿にしたようにぶーたれる。


「見た目ではない、人種の話だ。エリーゼさんや百合子さんを思い出せ。あの人達はどう考えても、ネトゲなんてやる人種じゃあない。上流階級の箱入りお嬢様と社会不適合者のネトゲ廃人、リア充と非リア、年齢は中年から幼女まで……なぜここまで、プレイヤー層がごちゃ混ぜになっているんだ? 本来ならあり得なくないか?」

「人気ゲームなんだから、色んな奴が遊んでるのは当然の事だろ?」

 真太郎の問いかけに、刹那がどこか馬鹿にしたように答えを返す。


「人気ゲームね。確かに、ビジュアルはハリウッドの大作映画にも負けないクオリティだが、ゲーム自体はいたってよくあるMMORPGだ。特殊な機械を使ってゲームの世界にダイブ出来るとかいう訳でもない、フツーのMMORPGだぞ。さっきお前自身が言った、中毒性の話と併せて考えてみろ」

 真太郎はそう言うと一旦、間を置いた。


「勇者ゲームは普通のゲームだが、普通じゃあない。きっと何か裏がある」 

 真太郎が深刻な感じで言うと、アダーがふむと言って腕を組んだ。

「……真太郎の言う様に、勇ゲーは確かに奇妙だ。生まれてこの方、ネットゲームになんて無縁だった箱入りのお嬢様の恵璃華達が、あんなにゲームにハマるなんて、おかし過ぎる。自制心を完全にコントロール出来るボクですら、勇ゲーには時間を忘れてハマったんだ、何か妙な仕掛けがあるのかもしれないね」 

 何かに思いを馳せるアダーが眉間に皺を寄せてそんな事を言うと、テンテンが呆れた様な顔で肩をすくめた。


「ま、ゲームをやっていたら、こんな事になっちゃうんだから、普通じゃないのは確かよねぇ。そう言えば、知ってる? 勇ゲーの基本システムって、ハーバード大学の天才オカマが作ったらしいわよ」

 真太郎達の話を聞いていたテンテンが、急に妙な事を言い出した。


「オカマ?」

 誰ともなく尋ねるなり、テンテンが冗談めかして答える。

「オカマは男よりも女よりも、言語能力に秀でているのよ。プログラムも一種の言語でしょ? そーいう事よ」

「へぇ~、テンテンの話は為になるなぁ。つか、オカマと言えば、新宿二丁目のオカマバーでぼったくられた挙句、あやうくケツまで掘られかけた仙人。あのもうろくエロジジイは、この世界に来てるのかな?」

 妙なきっかけでかつての仲間の事を思い出した真太郎が、仲間の行方をアダーに尋ねる。


「前に、うちのメンバーのログイン状況を調べた時は、いなかったよ。でも、真太郎みたいに、時間差を置いてこっちに来ているのかもしれないね」

 アダーはそう言うと、チャット機能を起動させ、フレンドリストを展開し、ギルドメンバーのリストに目をやった。


「ふむ。どうやら、仙人はこっちに来ていないみたいだね」

 アダーがそう言うと、真太郎は自分もステータス画面を起動させた。

 手元に展開したステータス画面を覗き込んで、フレンドリストに目を通す。

 

「文字が光っているのは、この世界にいる人間だったよね。アダー、チュウ、師匠は光ってるけど、仙人の所は暗いね。って事は、この世界にいないって事か」

 仙人がログインしていない事を確かめると、他の仲間のログイン状況を確かめた。

「仙人はいなくて、他は……ヴァン、ジェニファー姐さんがいて……」

 真太郎がメンバーのログイン状況を口に出すと、アダーが声をかけて来た。

 

「おや? やっぱり、ジェニファー姐さんは『こっち』にいるのかい? では、ログインはしているって事か……」

 アダーはそう言うと、真太郎のステータス画面を覗き込んだ。

「ボクが連絡を取ろうと思った時は、連絡がつかなかったのだが……真太郎の方ではどうだい?」

 アダーに言われて、真太郎はジェニファーの名前を指でタップする。

 すると、通信開始のマークが出た。


 しかし、何時まで経っても相手に繋がらない。

「あれ? チャットは起動するけど、通信ができないね」

 真太郎がそう言うと、アダーは刹那に声をかけ、彼と同じ事をするように頼んだ。

「むぅ。俺の方も駄目だぞ」

 刹那がそう言うなり、テンテンが彼らの話に割って入って来た。


「この世界にログインしてても、居場所が遠すぎるとチャット出来ないわよ」

「ん? どういう事だい? ゲームと違うじゃあないか。フレンドリストに登録しておけば、どんなに遠く離れいても連絡がとれるはずだろ?」

 テンテンの言葉を聞いたアダーが、訝しげな顔をする。


「この世界は、システム面も含めて勇ゲーに酷似しているけれど、同一ではないのよ。わたし達の見た目だったり、この街にいるNPCの数だったり、ゲームと微妙な違いがあるの。チャットもその一つ。多分、勇者ギルドとワープゲートが機能停止している事が、なんか関係しているんじゃないのかしら?」

 テンテンの話を聞いたアダーが、顎に手を添えてふむと唸る。

「ふむ……。そこら辺は、これから要調査だな」


「バカね。今の状況じゃ、調査なんて出来やしないわよ」

 テンテンがそんなツッコみを入れるなり、アダーが肩をすくめた。

「安心して調査が出来る状況にする為に、ギルド会談をするんだよ。それより、ヴァンは?」

 アダーが誰ともなく話を振るなり、刹那がそれに応えた。


「ヴァンなら多分、西の街だぞ」

 刹那が思いがけない事を言うなり、アダーが彼女に視線をやる。


「本当かい、刹那?」

「魔王退治が終わってうちのギルドが解散した後、たまたま奴に遭遇した事があってさ。その時、拠点を西のガルブに移すって言ってたよ」

 

「なるほど、だからヴァンにも連絡がつかないのか」

「あいつは無駄に好戦的だから、ここより荒れ気味な西だとトラブルに巻き込まれてそうだね」

「それはあり得るね。でも、ヴァンは勇ゲーでは負け知らずの最強のプレイヤーだったから、ゲームの設定が反映されるこの世界で簡単に死んだりはしないだろう。それより心配なのは、さくにゃんだ。この状況で、女の子を一人にしておくわけにはいくまい。誰か彼女の連絡先を知らないかい?」

 アダーの問いかけに刹那が肩をすくめると、真太郎が口を開いた。


「さくにゃんは出会い厨を警戒して、ジェニファー姐さん以外に連絡先を教えてないからなぁ」

 真太郎がどこかため息交じりで言うなり、刹那が呆れ顔で椅子の背もたれに寄りかかった。


「改めて思うが、うちのギルドはロクでもない問題児ばっかりだな」

 自分の事を棚に上げる刹那が、したり顔でそんな事を言う。

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