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第30話 結果報告

「やっぱり、ギルマスはすごいなぁ! あのひねくれ者のテンテンを一発で落としちゃうんだもんっ!」

「ひゃー! アダーさんって、本当に王子様みたいですねぇ!」

 テンテンを一撃で落としたアダーのお嬢様界最強の王子様っぷりを見た刹那とみこが、きゃーきゃー言って大はしゃぎする。

 

 そんな二人を尻目に、真太郎は今日の成果をアダーに報告していた。

「とりあえず、さっきもちょろっと話したけど、渾沌騎士団、JMA、獣人同盟、蒼天海賊団のギルド会談への参加は確定だよ」

「あと、インヤン飯店もだね。ところで、飛龍忍軍は?」

「師匠に任せてるし、大丈夫なんじゃない? ダメでも、インヤン飯店がいれば、忍者はいなくても問題ないよ」

「簡単に諦めちゃダメじゃないか。一度がダメなら、二度三度頼んでみるべきだろ

う?」

 アダーがそんな事を言うなり、真太郎が肩をすくめる。 


「馬鹿忍者ごときに三顧の礼なんてしたら、こっちが逆に馬鹿みたいだよ」

「人を馬鹿にするのは構わないが、それを口に出すのはよくないよ。それより、『七☆剣』はどうなんだい?」

「勧誘失敗。なんか冒険がしたいとか言って、『西のガルブ』に行っちゃった」

「あはっ。彼ららしいな」

 呆れ顔で真太郎が言うなり、どこか楽しそうにアダーがくすりと笑った。


「しかし、あれだね。取り逃がしが出るとは、やはり真太郎だけで勧誘に行かせたのは間違いだったかな? 頼りになるボクが付いて行ってあげるべきだったかい?」

 お姉さんぶるアダーが、からかう様な口ぶりでそんな事を言う。

 すると真太郎が、再び呆れ顔をした。


「何言ってんのさ。俺だけだったから、ここまで出来たんだよ。アダーがいたら、この成果は出せなかっただろうね」

「ほぅ、妙な事を言うじゃあないか。なぜだい?」

 教え子の生意気な態度をアダーが面白がる。


「アダーは基本嘘つきだから、賢い奴は策略に気付いて警戒しちゃうからだよ。でも、俺は真面目なだけが取り柄の誠実な男じゃん? そんな奴が真剣な顔して話をしに来たら、皆思わず話を聞かざるを得ないよね?」

 真太郎がしょうもない事を言うなり、今度はアダーが呆れ顔をする。


「おいおい、冗談はよしなよ。嘘つきは、シンタローの方じゃあないか。それにそもそも、キミは誠実って訳じゃなく、ただの馬鹿だから、一見邪心が無く見えるだけだよ。無邪気さは人の警戒心を解くから、それで皆話を聞いてくれただけさ」

「自分の愛しの教え子を馬鹿呼ばわりとは、なんて人だっ!」

「ふふん。自分の愛しの教え子だからこそ、言えるんだなぁ」

 アダーと真太郎は家庭教師と教え子の関係だけあって、悪口の応酬すらも楽しげだ。 


「ま、それはそれとして。そもそもアダーじゃ、斬人とか板垣さんとかコージさんの説得は無理だと思ったんだよ」

「だから、なんでさ?」

「なんでって。男だったら誰しも、プリッとしたケツと、ボインとした巨乳の女の子が好きだろう? なのにアダーは、王子様みたいな見た目で話し方も男そのもので、見た目も態度も女らしさの全てに欠ける貧乳女だろ? 折角ポム・アンプワゾネの女の子がやって来たのに、それが男女のアダーなら、皆がっかりしちゃって話を聞くどころじゃないだろ? なら、男の俺の方が行った方がマシだからだよ」

 何を思ったか、真太郎が突然無礼な事を言い放って謎の反旗を翻した。


「……真太郎。キミはボクに喧嘩を売っているのかい?」

 大抵の事は笑って許す器量のアダーだったが、女であることを軽んじられ男扱いされる事だけは、勘弁がならなかった。

 アダーが涼しげな顔に確かな怒気を滲ませるなり、珍しく刹那が止めに入る。


「落ち着け、ギルマス。バカタローは多分、特に意味も無く、思った事をそのまま口にしているだけだぞ」

「そっちの方が腹立たしいっ!」

 しかし、コミュ障の刹那に場を収めるトークスキルなど無かった。

「はぁ、まったくもう。刹那は、なにやってんのさ」

 アダーの怒りに油を注いだ刹那を見かねたみこが、さりげなく話題を変える。


「所で、イナバさんがまだ合流して来ないけど、上手くいってないのかなぁ?」

「便りが無いのは、いい知らせ。師匠と忍者はオタク同士だから、上手くやっているはずだよ。それに、後で念のため、俺がもう一回行くから問題ないさ」

 真太郎は一応、イナバの事を信用しているようで、その実、あんまり信頼していなかった。


「おい、何キモオタとの微妙な距離感を垣間見せてんだよ。つか、俺達は三組に分かれた意味はあったのか?」

 アダーをなだめられなかった刹那が、これ幸いと新しい話題に乗っかる。

「あったよ。『七☆剣』が、街を出て行く前に話が出来た。皆でちんたら動いていたら、コージさんとレジーナさん達に会えなかったはずさ」

 真太郎が話を一段落させると、アダーが少しブスっとしながら話しかけて来た。


「所で、なぜ最初に会うギルドをポムにしたんだい? 斬人くんや板垣さんの方が仲がいいだろう? やはり、可愛い女の子に会いたいという不純な動機なのかい?」

 先ほどの言葉を引きずっているのか、アダーが軽蔑しているかの様な目つきで尋ねる。


「ちょっと違うんだなぁ~。皆忘れていると思うけど、俺は皆と違って、この世界には昨日来たばかりなんだぜ?」

「だから?」

 真太郎の回りくどい話し方に、アダーが若干イラついた様に目を細める。


「俺は事態の深刻さを知る為に、この状況下で女性が、どういう精神状態になっているかを知りたかったんだよ。文明と常識に洗脳されがちな男と違って、女は本能と勘で生きているから、事態の『ヤバさ』を計るにはうってつけだからね」

 真太郎が妙な事を言うなり、アダーが意外そうな顔をする。

「ほぅ。面白い事を言うじゃあないか。それで、キミはどう判断したんだい?」


「状況は極めてヤバいが、どうあがいても絶望って訳ではないと判断した。女が生命の危険を感じている時の『ヤバさ』ってのは、もっと修羅場ってるからね」

「おいおい。彼女もいない真太郎が、なんでそんな事が分かるんだい?」

 訳知り顔で語る真太郎にアダーがツッコみを入れる。

「この前の東北の大地震を、学校で被災した経験があるからさ」

 ある意味で、日本人ならば誰でもが納得する言い分だった。 


「成程、ね」

「あの時と比べると、ポムの人たちの『ヤバさ』は、何ランクか落ちている感じだった。きっと、なつき先生が、彼女達を率いていたからだろうね。流石、俺の先生にして、お嬢様界最強の王子様だ。その溢れんばかりのカリスマ性に感服するよ」

「今のは、お世辞かい?」

「いや、思った事をそのまま言っただけだよ」

 真太郎がお世辞で話を終えるなり、タイミングよくテンテンがやって来た。


「あらあら、またしょうもない悪だくみかしら? で、どっちが先に、ギルド会談の話を持ち掛けたの?」

「もち、俺」

 真太郎がそう言うと、テンテンが毒気を抜かれた様な顔をする。 

「ふ~ん、成程。馬鹿お得意の、いつもの行き当たりばったりの思い付きって訳ね」

 テンテンは心底呆れ顔でそう言うと、アダーに耳打ちした。


「アンタが最初に持ちかけて来た話だから、妙な裏があると思って警戒していたけど、黒幕はシンタローだったのね」

「キミやボクと違って、シンタローはお馬鹿だから、裏はないと考えてもいいよ」

「そーねぇ~。シンタロー、馬鹿だもんねぇ。わたしの裏かける頭なんてないか」 


「おい、そこの嫌味ガールズ! そのヒソヒソ話、しっかり聞こえてるぞっ!」

 明らかに聞かせている嫌味なテンテンとアダーに、真太郎がすかさずツッコミを入れる。


「良かったね、真太郎。テンテンに一発で信用されたみたいじゃあないか。やっぱり、真太郎は邪心の無いお馬鹿だと思われているんだね」

「今のは、嫌味ですか?」

「いや、思った事をそのまま言っただけだよ」

 そう言って真太郎をからかうと、アダーはしてやったりといった顔でニヤリと笑った。 


「アンタ達、相変わらず仲がいいわね」

 仲良さげにじゃれ合う真太郎とアダーを見たテンテンが、素朴な感想を漏らす。その顔は先程の警戒心が滲んでいた顔と違い、すっかり毒気が抜かれていた。

「羨ましいかい?」

 からかうような眼差しのアダーが、テンテンに笑いかける。

「まさか」

 テンテンは、そんなアダーをあしらうと、おもむろに話題を変えた。


「こういう状況だから、てっきり小ズルく立ち回って、美味い汁を啜るつもりでいるのかと思ったけど、街の安定の為に動くなんてアンタらしくないじゃない? キラーヒーラーのシンタローくん。本当は、な~んか悪い事企んでるでしょう?」

 真太郎のゲームでのハチャメチャな振舞いを知っているテンテンが、疑わしげな目つきで牽制をかけて来た。


「この状況で、そこまで頭は回らないよ。俺はとりあえず、この訳の分からない危険な場所で、少しでも安心出来る状況を作りたいだけさ」

 あっさりと語られたが、これは真太郎の嘘偽りの無い本心だった。

「ま、そりゃそーか。今はゲームじゃないしねぇ」

 あまりにも自然な真太郎の態度に、テンテンもツッコむ事なく納得する。


「そんな事より、テンテン」

「何よ?」

「テンテンって、勇ゲーの運営会社にハッキング仕掛けたりしてたよね? この状況について、なんか知ってる事ないの?」

 真太郎がそんな話題を振るなり、テンテンはわざとらしく肩をすくめた。


「ある訳ないじゃない、あったらもっと余裕あるし、アンタらに話してやってるわよ。そもそも、三、四年アタックかけ続けて、侵入できたのが一回だけよ? しかも、出来たのは、ラスボス退治した時のお祭り騒ぎ状態の時に、十分間だけ! アイツらのセキュリティ、無茶苦茶よ」

 テンテンはそう吐き捨てると、うんざりした様子で椅子にもたれかかった。


「無茶苦茶と言えば、どの言語で音声チャットしても瞬時にローカライズされるのなんて、今考えれば狂ってたよね。技術レベルが異常だよ」

 真太郎がそう言うなり、刹那が話に混ざって来た。

「異常と言えば、中毒性が異常だったぞ。ちょっとレベル上げしようと思ったら、朝までぶっ続けでやってたとか、ざらだったしな」

 すると、アダーがそれに続く。

「なんでも、最新の心理学と映像・音響技術を応用して、ドラッグ中毒に近しい作用を起こす様になっていたらしいよ。怖いゲームだよねぇ」


 アダーが言い終わると、真太郎がさりげなく話題を変えた。

「なつき先生の話も気になるが、それよりも気になるのは、勇ゲーのユーザー層だ。ゲームの時から妙な感じだったが、ゲームが現実になった今の状況だと、更に奇妙さが増す」

 真太郎が妙な事を言い出すなり、みこが小首を傾げた。


「ほよ? 奇妙って、どういう事ですか?」

「みこちゃんみたいなネトゲなんてやらなそーなフツーの女の子がいる事が、奇妙なのさ」

「ほよ? あたしみたいなのがいる事の、どこが奇妙なんですか?」

 真太郎の話を聞いたみこが、要領を得ない顔をする。

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