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第27話 来々! インヤン飯店! オカマパンダがお出迎え!?

『インヤン飯店』のギルドハウスでは、アダーと、道士風の服を着た眼鏡の少女が、顔を突き合わせて神妙な様子で話をしていた。


「この世界に来る直前に見せたデータの事って、覚えてる? こいつはアレの続きよ」

 眼鏡の少女はそう言うと、テキストデータをアダーに寄越した。

「どれどれ――アフラ・マズダ、ザラスストラ、ミトラ、イエス、そして『勇者達』……選ばれし者達は光の洗礼を受け、神々の楽園に携挙される――ね」

 貰ったテキストデータを読み上げたアダーが、ふむと言って銀髪を揺らした。


「では、今の状況は、キリスト教福音派が唱えるキリストによる携挙を受けた後という事なのかな? でも、携挙は艱難から人々を救う為のものだろう? 今の状況は携挙された事によって、逆に艱難状態に陥っているじゃあないか」

 アダーはそう言うと、円卓の上の茶器からお茶を注いだ。


「知らないわよ。わたしはテキスト読んだだけだもん。それより、問題はこの画像よ」

 自分もお茶を注いだ眼鏡の少女が、おもむろにステータス画面に表示させた画像データをアダーに見せる。


「これは……神様っぽい何かと人間が戦っている絵かな?」

「これはシュメール神話、インド神話、ギリシャ神話なんかの絵画や壁画ね。これだけだったら、ゲームの資料として何の問題も無いわ。でも問題なのは、最後のこの写真に付いてるキャプションが、『火星の遺跡で発見』って事なのよ」


「ほほう、それは面白いじゃあないか。それで?」

 話に興味を引かれたアダーが、好奇心旺盛な猫の様な目をして身を乗り出す。

「それでもなにも、話はここで終わりよ。このデータを抜いた所で、ハッキングがバレて回線切られちゃったわ。ご丁寧に、こっちのPCにクラックをかけてね」

 アダーの問いかけを、眼鏡の少女が鼻で笑って一蹴する。


「ただ、少ない情報ながら、わたしが手に入れてアンタに見せたデータは、先史時代の神話と関係している事が分かるわ。んで、手に入れたデータの神話の基本的モチーフは、『神と悪魔と人間の戦い』。今のわたし達の状況を考えると――」

 

「キミの言わんとする事は分かるよ。現在、ボク達は、何者かによって地球ではない、どこか別の惑星に連れて来られていて、下手すると、そこの神や悪魔と戦う事になるって事だろ?」

 察しの良いアダーが、眼鏡の少女の言葉を先読みする。

「そうだけど、最後まで言わせなさいよね。人の話を奪うんじゃないわよ」

 すると、眼鏡の少女が不満げな顔をしてお茶を啜った。それを見て、アダーがしてやったりと微笑む。


「今の状況って、よくあるファンタジーな感じの異世界転移じゃなくて、SFでよくある神を名乗る宇宙人に拉致されたみたいな感じの異世界転移なのかしら?」

「さぁ、ボクが知るかよ。でも、さっぱり訳が分からないファンタジーって意味なら、今の状況はすこぶるSFだよね」

 眼鏡の少女の真剣な問いかけに、アダーが冗談めかして応じる。


「面白くない冗談ね」

 アダーにからかわれた眼鏡の少女が、拗ねた様な顔でお茶を啜った。


「はてさて、ボクらは神に携挙されたのか、はたまた悪魔に拉致されたのか、どっちなのかな? 実の所、悪魔主義者達がゲームを使って、ボクらを悪魔への生贄にしたっていうのは、意外といい線かもしれないよ」

 アダーが妙な事を言い出すなり、眼鏡の少女が馬鹿にした様な顔をする。

「はぁ? アンタ何言ってんの? 宇宙人はいても、悪魔なんている訳ないでしょ」


「果たしてそうかな? 先進国ではオカルトを馬鹿にするけど、その先進国の支配者層は、占星術や錬金術、はたまた悪魔崇拝なんかのオカルトにご執心なのは、大衆に知らされていないだけで、純然たる事実だよ。日本でも財閥系の大きな企業や、地方の旧家は普通に人身御供や儀式殺人を行っているしね。親が公安警察で、かつ実際に生贄の儀式を見たボクが言うんだから、間違いないよ」

 アダーがさも当然事の様にオカルトチックで恐ろしげな事を言うなり、眼鏡の少女が鼻白む。


「アンタってば、わたしの科学に基づいた考古学は馬鹿にする癖に、陰謀論じみたオカルトを平気で口にするのね。これがキリスト教徒ってやつなのかしら?」

「ボクはキリスト教徒じゃないよ。カトリック系の学校に通っている人間が、皆キリスト教徒な訳じゃあないんだよ? そもそも、どんなに敬虔に祈っても、救ってもくれなきゃ助言すらくれない神を信じて、一体何になるっていうんだい?」

 なつきがひねくれた事を言うなり、部屋の外から悲鳴が聞こえて来た。


「イヤー! 痴漢よォォォーッ!」


 そんな悲鳴に続いて、真太郎の声が聞こえて来る。 

「違うって! そんな見た目してたら、思わず触るのが普通じゃん!」

「女の子を見たら、お尻を触るのが普通って、一体どーいう事よォッ!」

 そんな事を怒鳴りながら、アダー達のいる部屋に入って来たのは、ピンク色のチャイナドレスを着たパンダだ。


「パンダがいたら、ふつー思わず触るでしょうがっ!」

 そして、そのパンダに首根っこを掴まれている真太郎が、続いて入って来た。

「普通は触らないわよッ! っていうか、女の子にセクハラしておいて、謝罪も無いなんて何考えてんのよォ!」

 流暢に日本語を話すパンダが甲高い声で喚き散らすなり、真太郎がキレた。


「うるせー! お前、ステータスの性別が『男』じゃねーかっ! 女じゃなくてオカマだろ! このカマパンダ!」

「んまァッ! 失礼しちゃうわねェ! 誰がカマパンダよォッ!」

 真太郎にオカマ扱いされたパンダが、オカマ特有の粘ついた声を出してブチキレる。


「なんでパンダがオカマなんだよっ! ふざけんなよっ! 色んな夢をいっしょくたぶち壊すなよっ!」

「オカマじゃないわよ、女よッ! っていうか、人のお尻を触っておいて、逆ギレで済まそうとしてるんじゃないわよッ!」

「尻じゃねー、尻尾だっ!」

「お黙らっしゃいッ! 言い訳無用よッ!」

 パンダは野太い声で真太郎を一喝してビンタをかますと、呆気に取られているアダーと眼鏡少女に視線を移した。


「アンタらの客が、またアタイにセクハラして来たわよッ! 一体どーなってんのよッ!」

「わたしの客じゃないわ。文句なら、そっちのスカしたひねくれ王子様に言って頂戴」

 眼鏡の少女が呆れ顔で、アダーを指さす。

「誰がスカしたひねくれ王子様だよ。スカしたひねくれ者はキミだろ」

 アダーが拗ねた様な顔でそう言うなり、パンダが彼女に抗議した。


「アダーさん。アナタの所のお客が、アタイにセクハラしてきたの、これで三人目よ? ギルメン達に、どういう教育しているのかしら?」

「三人?」

 パンダの台詞に引っかかるものを覚えた真太郎が、辺りを見回す。

 すると、部屋の隅の長椅子に横たわる刹那とみこを見つけた。


「なんであの人達、あんな所で寝てるの?」

 真太郎が誰ともなく尋ねるなり、アダーが答えてくれた。

「寝ているんじゃない。ジャスミンさんに殴り飛ばされて、気絶しているんだよ」

「マジでッ!?」

 衝撃の事実を聞かされた真太郎が、思わず声を出して驚く。 


「まったく、どいつもこいつもパンダと見れば、セクハラしやがってッ! お嬢っ! このドスケベ坊主を殺してやりたんですけど、構いませんねッ!」

 何を思ったか、オカマパンダ・ジャスミンが、物騒な事を言い出した。


「誰だか知らないし、別に構わないわよ」

 それに眼鏡少女が、一切の逡巡なく応じる。

「ジャスミンさん、お手柔らかに頼むよ」

 すると、とうとう真太郎に愛想が尽きたのか、アダーもそれに続いた。


 そんな冷酷なアダーを見た瞬間、真太郎が物憂げな顔でため息をつく。

「……なつき先生は、最愛の生徒を見捨てる様な人でなし女だったんですね」

「最愛の生徒とはいえ、見知らぬパンダのお尻を触る様なセクハラ少年に育てた覚えはないよ。一回お灸をすえてもらいたまえ」

 躾に厳しいアダーがそんな事言うなり、真太郎が殊勝な事を言い出した。


「成程。なつき先生の言う事にも一理あります。その罰、甘んじて受けましょう」

「あら。言い訳がましいセクハラ野郎の癖に、随分と諦めがいいじゃない?」

 真太郎の誠実な態度を見たパンダが、ちょっと意外な顔をする。

「じゃあ、遠慮なくいくわよ――」

 パンダが巨大な拳を振り上げると同時に、真太郎がおもむろに口を開いた。


「カマパンダ……いいえ、ジャスミンさん。貴女が、この俺を殺したいのならば、好きにして構いません。ですが、俺はHPがゼロになった瞬間、装備品の特殊効果により、自爆します。その自爆の際の爆発は、ここにいる全員を問答無用で爆殺するでしょう……」

 真太郎はそう言うと、問いかける様にジャスミンの顔をじっと見つめた。

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