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第23話 忍者はもういいや。あと、久しぶりのなつき先生

「んな!? 拙者に面倒事を押し付けるつもりでござるかっ! いや、それより拙者を一人にする気っ!? 侍は寂しいと死んじゃうんでござるよっ!」

 何を思ったか、イナバがめんどくさい彼女の様な事を言い出した。


「師匠。『七☆剣(しちせいけん)』は、元ヤン格闘家のコージさんを筆頭に、バンドマン、ホスト、スポーツ選手、ヤンキー娘、キャバ嬢、人妻などのDQNとリア充が入り混じった集団です。ある意味で、師匠が最も苦手とする人種でしょう?」

「ファッ!? それマジでござるのっ!?」


「ゲームならともかく、今の師匠を見たら、意地の悪いあの人達が何をして来るかは、予想がつきすぎます。正直、あの人達から師匠を庇いきれる気がしません」

「オウフ……暗黒の学生時代がフラッシュバックして来たでござる……」

 リアルでのキモオタスクールデイズを思い出したイナバが、リア充とDQNに関するトラウマに蝕まれて暗い顔をする。


「ここで俺と師匠が分かれるのは、師匠とコージさん達の無駄な衝突を避けると同時に、時間の節約になります。それに、にんぞーちゃんとは、俺よりも古い付き合いでしょう? 俺よりも師匠の方が、説得には適任です」

「そ……そうでござるな」

 トラウマを思い出しているイナバが、心ここにあらずな様子で返事を返す。


「んじゃ、ここは師匠にお任せします。終わったら、『インヤン飯店』のギルド本部に来てください。そこで落ち合いましょう」

 真太郎はイナバにそう言うと、おもむろに次の目的地に向かった。


「おい、キモオタを置いて行っていいのか?」

 ちょこちょこと後を付いて来た刹那が、不思議そうな顔で真太郎に尋ねる。

「チュウ。お前も俺と別れて、みこちゃんと一緒に行動しろ」

「あん? 急になんだよ」

 刹那が眉を寄せて訝しげな顔をするなり、真太郎は空を見上げた。

 キラキラと眩く輝く太陽が、丁度頭の真上に見える。


「そろそろ昼を回る頃だろう。出来れば、今日一日で全てのギルドを回りたい。だから、俺が『七☆剣』に行っている間、チュウとみこちゃんは、『インヤン飯店』に行ってテンテンに『ギルド会談』の説明をして来てくれ」

「カイリの野郎の話だと、テンテンはなんかヤバい奴だって話なのに、俺達だけで行かせる気かよっ!」

 先程カイトから聞かされたテンテンに関する良くない噂に怯える刹那が、不安げな顔でぶーたれる。


「そうビビるな。テンテンは、陰険で執念深く、気立てが悪くて根もひねくれていて、おまけに口も悪い守銭奴だが、不思議と女子供には優しい所がある。だから、見た目がちんちくりんのお前なら、悪い様にはされまい」

「そうか、ちんちくりんで子供な見た目な俺なら大丈夫か……って、違うっ! 誰がちんちくりんだっ!」

 コミュ障だったはずの刹那が、器用にのりツッコミを繰り出した。ボケた事ばかり言う真太郎とのやり取りの中で、彼女のツッコミ力は急成長しているようだ。


 だが真太郎は、そんな彼女を無視して、みこに話しかけた。

「みこちゃん。チュウは当てにならないから、この仕事は君に任せるよ。いいかい?」

「おうっ! このみこちゃんに任されよっ!」

 みこが気前のいい返事を返すなり、刹那が小動物の様にキーキー騒ぎ出した。 


「おい、俺を無視するなっ!」

「とはいえ、二人だけじゃ不安だから、アダーを呼び寄せて、三人で動くのがベターだな」

「聞けよ! 無視すんなっ!」

 キーキーうるさい刹那を無視する真太郎は、アダーにチャット連絡を取った。


「もしもし、アダー?」

『真太郎かい? ギルド回りの首尾はどんな感じだい?』

 チャット画面にアダーの2Dキャラが現れ、涼やかなアルトボイスで話し始めた。 

「割といい感じだよ。街中に不安が充満しているけど、俺が回った連中は不安に飲まれて発狂している奴はいないみたいだ。俺が選んだ奴らだけあって、割と話が通じたよ」

『という事は、皆ギルド会談に参加してくれるのかい?』

 

「渾沌騎士団、JMA、獣人同盟、蒼天海賊団の参加は確定。飛龍忍軍も来てくれると思う」

『スゴイじゃないか。三大ギルドの参加を取り付ける事が出来れば上々だ、ぐらいに思っていたが、ボクの期待をいい意味で裏切ってくれたね』

 チャット画面の2Dキャラのアダーが、嬉しそうな声を出す。


「俺もこんなに順調にいくとは思ってなかったよ。それはともかく、アダーに連絡したのは……って、今動ける?」

「忙しいが、どうしてもと言うのならば、動けるよ」

「じゃあ、動いてくんない?」

『おいおい、早速かい?』

 真太郎に無茶ぶりされるなり、2Dキャラのアダーが呆れ顔をする。


「俺は拙速を貴ぶからね。俺らはこれから、『七☆剣』と『インヤン飯店』を回る予定なんだけど、時間が押しているので、二手に分かれる事にしたんだ。で、俺は『七☆剣』に行くから、アダーはチュウとみこちゃんを連れて『インヤン飯店』に行ってほしい。アダー、テンテンと仲良かったでしょ?」

『うん? まぁね』


「なんかカイリ君の話によると、テンテンってヤバい奴みたいなんだよねぇ。だから、インヤン飯店との交渉を任せられるなら、任せたいんだよ」

『こら、厄介事をボクに押し付ける気かい?』

 真太郎に無茶ぶりされた事を確信したアダーの機嫌が、明らかに悪くなる。


「俺は俺で別の厄介事を抱えているから、そこはお互い補っていきましょうよ。それに、最愛の教え子の頼みなんだ。勿論聞いてくれますよね、なつき先生?」

 だが、仕事第一の真太郎にとって、そんな事は知った事ではなかった。


『最愛の教え子ねぇ~、調子がいい奴だなぁ。でも、テンテンは普通の女の子だよ。キミが警戒する様な事は無いと思うけどな』

「何もないなら、それが一番だよ。でも、アダーと対等に渡り合うアイツ相手に、チュウとみこちゃんだけだと不安だからね。二人には悪いが、彼女達はなつき先生と違って、期待は出来ても当てには出来ないもん」

 真太郎がお世辞の様な事を言うなり、アダーがふむと言って一瞬黙った。


『……それは確かにそうだね』

 アダーの声のトーンから怒りが消えた。どうやら、真太郎のお世辞に気を良くしたようだ。

(なつき先生。意外とちょろい所が、素敵です)


「そんな訳で、『インヤン飯店』の件。任せてもいいですか?」

 既に任せる気でいる真太郎が、一応形式だけ尋ねる。

 すると、アダーは小さくため息をついた。  


『……やれやれ、仕方がないね。下手なお世辞でボクのご機嫌を取ろうとする可愛い教え子の頼みだ、面倒だが聞いてあげるとしよう』

 全てを見透かした上でアダーが頼みを聞いてくれるなり、真太郎がニンマリする。


「ありがとう! 流石なつき先生! 俺が唯一心から先生と呼び慕うだけはありますねっ!」

『一言多い』

 真太郎が浮かれるなり、アダーがすかさず釘を刺す。


「じゃ、お世辞はここまで。俺も『七☆剣』を回った後、『インヤン飯店』に向かうから、そこで落ち合って今後の事を話しましょう」

『ん、分かった。上手くやりなよ』

「言われなくても、上手くやりますよ」

 そんな感じでアダーとの会話を終えた真太郎は、仲間達に向き直った。


「と言う訳で、ここからはそれぞれ別行動だ。ここから、それぞれの目的地までの距離はかなり近いから、移動の間に敵に襲われる事も無いだろう」

 真太郎はそう言って仲間達と別れると、早速次の目的地『七☆剣』のギルドハウスに向かった。

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