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only yggdrasil online  作者: X・オーバー
第1章【森の男女】
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3話目 β時代の知り合い達

あけましておめでとうございます。本日の投稿は3話目と4話目の二本です

oyoのゲーム内時間は、昼三時間夜三時間の六時間で昼夜が一周するようになっている。これは現実の時間にリンクさせると、日中または夜しかログインできないプレイヤーが昼夜それぞれでのみ手に入るアイテムを手に入れられなかったり、同じように昼夜で出現しないモンスターなどがいるからだ。


そして僕は夜の街を一人歩いてる。パピーウルフ達と存分に戯れた僕はモンスターの友好度が一定以上高くなった場合に貰えるプレゼントアイテムを彼らから受け取ったのだが、プレゼントをくれたパピーウルフ達はその場でお座りをして期待のこもった目で僕を見上げ、それはまるでもらったアイテムでまた餌を買ってきてくれとでもいっているような光景だった。脳裏に浮かんだそんな考えをそんなバカなと苦笑したのだけれど、それまでじゃれついていた姿が嘘のような姿にもしやと思い最初に干し肉を奪われていたパピーウルフに【テイミング】を使ってみたが見事に失敗。そううまい話もないかと思いつつ先に思い浮かんだかってな考えを彼らの思いということにして一度始まりの街に戻ってきたのだ。


それにしても、β版の時はあんなに早くあれほど懐かれたりしなかったんだけどな。仕様変更かそれとも…………。


「そういえば。ステータス画面オープン」


ふとゲーム開始前のことを思いだしステータス画面を呼び出し、称号をタップする。


確かこの中に………………、あった。


僕が受け取った12の称号の内今回の懐き型に関係しそうな称号を5つも見つけ苦笑しそうになる。


【動物愛護】

β版テストプレイ時、一度もモンスターを殺さなかったプレイヤーに与えられる称号。モンスター友好度上昇率+5%

【魔物の友】

β版テストプレイ時、全プレイヤー中もっともモンスターとの友好度を上昇させたプレイヤーに与えられる称号。モンスター友好度上昇率+5%

【餌付けする者】

β版テストプレイ時、一定回数以上モンスターに食べ物を与えたプレイヤーに与えられる称号。モンスターに食べ物を与える時、モンスター友好度上昇率+3%

【狼少年】

β版テストプレイ時、ウルフ平野で最も長い時間を過ごしたプレイヤーに与えられる称号。狼型モンスターの友好度上昇率+5%

【トップブリーダー】

β版テスト終了時、【アニマルブリーダー(動物使い)】のジョブツリー成長値が最も高いプレイヤーに与えられる称号。【アニマルブリーダー(動物使い)】の系統のジョブツリーの成長値+10%、モンスター友好度上昇率+5%


友好度の上昇率が15%も上がってる。食べ物を与えたときにはさらに3%も上がるうえに、狼型のモンスターなら23%も……………。

うん、β版では誰もモンスターを仲間にできなかったんだしそこらへんの調整もしているはず、これならパピーウルフを仲間にすることができるかもしれない。

そのためにも今はプレゼントされたアイテムをなるべく高値で売ってさっきより多く干し肉を買ってこよう。

確か公式だと狼型モンスターは最大で5頭まで仲間にできるんだったっけ。今【アニマルブリーダー】のジョブツリーの成長値は38か、仲間にできるモンスターの数は6頭までで連れて歩けるのが3頭だけか。


あんなに懐いてくれたのに仲間にできるのはこれだけなのか………ちょっと残念だな。ゲームの仕様なのだから仕方がないか。


ステータス画面を閉じてSPを消費して【隠密】のアビリティスキル【気配殺し】を発動させる。【気配殺し】はモンスターから見つかりづらくなるスキルだけど、多少プレイヤーにも効果がある有用スキル。

スキルを発動した僕はすぐ傍の煉瓦造りの家に駆け寄り、その壁を駆け上った。【フリーラン】のアビリティの補正を受けて自分の身長ほどの高さまで駆け上り、煉瓦と煉瓦の間を掴みそのまま壁をよじ登ってゆく。【気配殺し】にその大本である【隠密】、さらには夜で辺りが薄暗くなっているからか他のプレイヤー注目を集めることなく壁を登り切り、β版時代に生産職のプレイヤー達が露天を構えていた通りへ向かって屋根の上を走りショートカットする。正直壁をよじ登ったりとか注目されると恥ずかしいからスキルを使ったけど、うん、使って正解だった。僕以外にこんなことしてるプレイヤーはいないや。


建物や路地を飛び越えて走ること3分ほど。ゲーム開始時にいた始まりの大神殿から北へ延びる大通りへとたどり着く。人気のない路地に飛び降り大通りの人混みにまみれて周囲を見回す。ゲーム開始から3時間と少し、すでにβ版テストプレイヤーと思われる生産職のプレイヤーが作成した武器屋防具を手に客の呼び込みをしている。大半のプレイヤーが手にしているのは角ウサギの角から作れる短剣や槍、まれにエストックのようにちょっと特殊なタイプの剣だ。

他にも数は少ないけれど木槌や弓を売っていたり、ジャマダハルという趣味武器にしか見えない物を懸命に売ってる職人もいた。


ジャマダハルとか買う人がいるのだろうか?


そんな職人たちを眺めながら通りを歩いていた僕は、その中にようやく目当ての人物を見つけることができた。

髪は虹色に染められたモヒカン。褐色の鍛え上げられた身体に纏っているのは恐らく角ウサギの皮から作ったベストとズボン。どこかの世紀末を変な方向にアレンジした筋肉質の大男。厳つい顔で笑顔を作ろうとして失敗してよけいに怖い顔になっているβ版でのそしてリアルでも数少ない知り合いの一人。


「ボラー」


「お、ツバサ久しぶりだな」


角ウサギの剣をアイテムストレージに放り込み、笑みを浮かべて近づいてくる。正直作ろうとして作った笑みよりこの自然な笑みの方が厳つい顔に似合わず愛嬌があるんだけど、なかなか直せないものらしい。


「やっぱり来てたか。今回もまた【アニマルブリーダー】をとったのか?」


「うん、やっぱり諦められなくてさ」


「リアルじゃ飼えないもんな、お前は」


近くの路地に二人で入り、その先にある噴水の縁に並んで腰掛け状況を確認しあう。ボラーはβ版時代では戦う鍛冶屋を目指していたんだけど途中から生産一本に絞り、今回は完全に生産一筋だそうだ。β版時代の顧客から角ウサギの素材を買い取りジョブを育てているそうだ。


「で、どうしたんだβ版の時は殆ど俺のところには顔を出さなかったのに」


「ん、これを買い取ってもらいたくてさ」


ストレージからパピーウルフから貰ったパピーウルフの爪や牙を取り出して見せると、ボラーは厳つい顔を驚きの表情にして食い入るようにその素材を凝視する。


「おいおいおいおいおい、これパピーウルフの……………。ちょっと待てどうやった、パピーウルフはゲーム初めて数時間で相手にできるような連中じゃないだろ、しかもこんなにたくさん」


「友好度を上げたときのプレゼントだよ。貰った称号に友好度を上げるのが多くてβ版の時よりも早くここまでいったんだ。たぶん調整が入ったからだと思うけど」


「それなら納得だな。でこいつを買い取ってほしいときたか…………」


ボラーはちょっと待てといいながらゲームメニューを呼び出し、何かを調べ始めた。βテストの時僕は殆ど活用しなかったけれどoyoに設けられている情報掲示板を見ているんだと思う。たしか素材の流通状況をまとめているスレがあると聞いたことがあったと気がする。

程なくしてゲームメニューを消したボラーは少し考えてこちらに振り返った。


「OK、パピーウルフの爪が4つに牙が10個か。

牙は一つ400、爪は250で引き取ろう」


併せて5000Gって…………


「えぇぇーっ、ちょっと待って。βの時もっと安くなかった?!いくら何でも高すぎるでしょ!」


覚えてる限り、β版で爪と牙を売ったとき爪は40Gで牙は80Gだったはず。それも知り合いだからと色を付けて貰ってその値段。だというのにこの値段は………………。


「いやいや、今だったらこれくらいするから。あのときとは状況が違うんだからな。

βの時お前がこれを持ってきたのはテスト後半だろ?あのころになるとパピーウルフの素材は精々アクセの素材や武器の装飾くらいにしか使いようがなかったんだよ。

それにパピーウルフを安全に狩れる頃にはみんなパピーウルフよりいい素材を使ってたからな。けど今はゲーム開始から3時間少ししか経ってない。そんな短時間でパピーウルフを安全に狩れるレベル帯に上げるのは無理だ。つまり現状パピーウルフの素材は流通してない、そしてパピーウルフの素材で作る武器は角ウサギの武器よりも性能がいい。5000払っても十分釣りがくる」


それとももっと安くしてやろうか?と顔をのぞき込んでくるにボラーに首を激しく振り、彼はそれに苦笑しながら交換用の画面を開いた。


「ほら、素材をぶち込みな。なんなら俺の作った武器も持ってくか?」


「いやそれはいいよ。僕はモンスターと戦うつもりはないし」


「だったな」


申し出をやんわりと断りながら交換の手続きを進め、僕の返事に肩を竦めながら交換のボタンを押し、売買は成立した。


それからしばらく互いの称号やこれからどうするかを話してから別れ、僕は再び先ほどの道具屋へと向かった。買うのは当然干し肉。


「あれ、さっきよりも安くなってる?」


「肉の買い取りが大量に来てな、在庫が有り余って困ってるんだよ。これだけ安くしても干し肉はぜんぜん売れなくてな」


ほとほと困った様子でため息をつく道具屋の店主。AIだというのに表情豊かだ。

干し肉が安い分には全く問題はないので、先ほどよりも多くの購入して西門へ急ぐ。

ボラーとつい話し込んでしまったようでいつの間にか背後から、東の空に顔を出した日の光が射す。


「急ごう」


またショートカットしようと建物に目を向け小走りに近づいてゆく。


「やぁ、君可愛いね。どう俺らとパーティー組まないか?」


が、そんな僕の前に現れたのは顔をにやけさせた3人組の男。一人は全身を皮鎧で包んだ金髪金眼の男、腰にはNPCの店で売っている鉄の剣をさげている。もう一人は大きな杖を持った灰色のローブ姿で、ゲーム開始してすぐではNPCの店でないと売っていないなんの効果も持たない眼鏡をかけ、紫色の髪を腰元まで伸ばしたきざそうな男だ。最後の一人最初の男と違って要所に革製の鎧をつけたそこそこ長身の男。腰には壊れやすいことで有名な角ウサギの角で作られた短剣を複数腰のベルトに下げている。


「…………僕に言ってるんですか?」


一応周りを見回してから不快な視線を向けてくる三人組にそう尋ねた。


「わぉ『僕』だってよ」


「見たとこ初期装備でしょ、それ。俺らと一緒にくればすぐにいい武具そろえられるしレベルも上げられるぜ」


やはり僕のことらしい。

恐らくβ版でもあったけど、僕の容姿から女子と勘違いしているらしい。そして彼らの表情から目的もあまりいいことではないことが予想できる。それに元々僕はレベル上げとかあまり興味がないし、彼らへの返事も当然…………


「いいです。レベル上げとか興味ないし」


断りの言葉と共にその脇を通り抜けようとするが、彼らはそれを遮りさらに左右から囲むように動いてくる。


「そんなつれないこと言わないでさぁ、ちょっちくらいいいじゃん」


「そうそう、それにあまり………………駄々こねない方がいいよ」


僕の右手に回った長身の男が角ウサギの角から作った短剣を引き抜き、ドスの利いた声と共にそれを見せびらかすように手元でもてあそぶ。


まさかゲームが始まって僅か半日も経ってないのにこんな連中が出てくるとは思わなかった。にじりよって来る彼らに対して自然と足が下がる。街の中は特別なイベント等を除き基本プレイヤー同士攻撃できないようプロテクトがかかっているためあの短剣で僕が傷つけられることはない。しかしそれでも刃物を突きつけられるということはそれだけで恐怖するに十分な物だと思う。


「それじゃ、いこうか…………」


後ずさったことでもう無理矢理にでも連れていけると考えたのか、金髪の男が僕の肩に手を伸ばす。


「【気配殺し】………………」


「「「?!」」」


それに対して僕はスキルを発動させ、背後に振り返り全力で走り出した。プレイヤーに対してあまり効果はないとはいえ、ゲームが始まって6時間しか経っていない現状ツリーの成長率にそんなに大きな開きはないはず。それも【隠密】のアビリティ対策となる察知系統のアビリティは特にだ。


案の定男たちは一瞬ではあるものの僕の姿を見失い、その間に背後の家の壁に掛けより、そのまま壁を僕の身長と同じぐらいの高さまで駆け上る。そして煉瓦の隙間に指をかけ素早く屋根の上に上ってしまう。


「くそっ、なんだよ今の?!」


「ちっ、待ちやがれ!」


屋根の上を走って隣の家の屋根へと飛び移り、僕はとにかく逃げることにする。三人が路地を走って追ってくるのを感じながらとにかく大通りを目指す。

ボラーと分かれたときそのまま大通りに戻れば良かった。


「く、とぉっ………?!」


家の上を二つほど走り抜け、路地を飛び越え向こうの屋根へと飛び移ろうとするがそれができたのはβ版時代ジャンプのアビリティを持っていたときのことであることを失念していた僕は、隣の屋根に飛び移るには飛距離が足りずそのまま路地へと落下してしまう。


「つっ、うぅ…………」


しかも着地した衝撃で落下ダメージを受けたうえ、足が痺れるというマイナス補正まで発生してしまう。


「おい、こっちだ!」


声のした方を見れば短剣の男が別の路地から飛び出してきたところで、他の二人を呼び寄せている。

残りの二人が路地から飛び出してきたのは足の痺れが退いたのとほぼ同じ、急いですぐ近くの路地へと駆け込もうとするが、その路地からさらに他のプレイヤーが姿を現した。


回り込まれた?三人だけじゃなかったの?


驚きのあまりどうするか判断に迷い足が止まってしまう。しまったと思いながら再び気配殺しのスキルを発動させて逃げることができるかと口を開こうとする。


「ん、お前ツバサか?」


「え?」


しかし路地から出てきた人影の言葉に俯きかけていた顔を上げると、そこには見覚えのある顔が困惑気味に僕のことを見下ろしていた。


「ゴルド、さん?」


黒く日に焼けた肌にオールバックにした黒髪、先の金髪の男の纏っていた物よりもどこか堅そうな印象を与える革鎧に、NPCの店舗で売っている物よりも一回り大きな石製の大剣を担いだ巨躯の男。β版時代ボラーと一時期パーティーを組んでいた縁で知り合ったβ版時代のトッププレイヤーだ。


ゴルドさんの視線が僕の背後に向かい、そして再度僕へと視線を戻すと一つ頷いて僕を背後へと庇う。


「どうしたゴル…………?」


「あらあら?」


ゴルドさんが出てきた路地にはさらに見知らぬプレイヤーが二人。一人は長く伸ばした黒い髪を首もとで纏めて尻尾にした糸目が特徴の男性で、防具は初期装備のままだけれど肩には弓、腰には大量の矢の入った矢筒を下げている。

もう一人はアバターエディットの際にいじったのか水色のウェーブが掛かった髪を膝裏まで伸ばしたどこかのんびりとした印象を受ける女性。防具は髪と同じ水色のローブに革製の胸宛を付け、胸元にソフトボール大の水晶玉を抱えている。


「おいそこどけ!」


そこまで確認したところで背後から追いついてきた男の怒鳴り声が聞こえてくる。


「悪いが出来ない相談だな」


「俺らはてめの後ろ餓鬼に用があんだ、関係ねぇやつはすっこんでろ」


「彼とは知り合いだ。お前等との間に何があったかは知らないが、彼がどんな人間かは知っている。どうせ非はお前等の方にあるんだろう?

悪いことは言わんさっさと失せろ」


ゴルドさんの言葉に糸目の男性が肩を竦め僕を隠すようにゴルドさんの横に並んで路地をふさぎ、青髪の女性が口元に人差し指を当てながら路地の奥を指さした。恐らく今内に逃げろと言うことなのだろう。


「ゴルドがそう言うんならそうなんだろうな。それに逃げる可愛い子とそれを追う男が三人って、絵図等からしてそっちのが悪もんっしょ」


「んだと、調子のってんと痛い目見さすぞ」


一度ゴルドさんと男の背中に視線を送り、女性と二人に頭を下げて再び路地を駆けだした。

ゴルドさんと男たちの言い争う(ゴルドさんたちはそれを受け流しているような感じだったけど)声が聞こえなくなるのと同時に壁を駆け上り、再び屋根の上へ。逃げている間に離れてしまった西門へと屋根を伝って走る。


今度ゴルドさん達に会ったらちゃんとお礼を言わなきゃな。








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