↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
only yggdrasil online  作者: X・オーバー
第2章【初めてのクエスト】
15/29

12話目 転生

「グォォォォォォォォォォォォッ!!」


ヴォーパルベアーグリズの赤く太い腕が襲いかかってきた体長40センチはあるフォレストワスプの体を粉みじんに粉砕する。しかしポリゴン片へと変化するそのモンスターの向こうから二体目、三体目のフォレストワスプが大きく肥大化した尻から鋭く尖った針をこちらへ向けて突撃してくるのが見えた。攻撃直後のグリズでは先頭の攻撃に間に合わない。


「テスカ、グリズの援護!」


僕の出した指示に従ってガーディアンジャガーーテスカが木の幹を蹴って先頭のフォレストワスプに頭上から襲いかかる。先頭のフォレストワスプが地面に抑えつけられ、僅かに空いた時間にグリズは体勢を整えて三体目のフォレストワスプを迎え撃つ。


後ろ立ちになって振り回された逞しい腕がフォレストワスプの胴体を粉砕し、地面に抑えつけられたフォレストワスプもテスカによってかみ殺される。


「次が来ないうちにここを離れるよ!」


「キュイッ!」


四つ脚で走り出したグリズの背に飛び乗り、僕はフォレスワスプが飛んできたのとは別の方向へとその場を離れる。ログアウトができなくなって13日、僕は森の奥へと探索の場を進めていた。


「ここまでくれば大丈夫かな」


小川の近くでグリズの背から降りると、ずっと肩に乗っていたカーヴァンクルージュエラが川岸で水を飲み始める。それを見ながらアイテムストレージを開き、フォレスワスプのドロップアイテムを確認する。モンスターからのドロップアイテムは倒したモンスターに触れるか、時間が経つと自動的に回収されるようになっている。今回は倒してすぐにその場を離れたため、自動回収によるものだ。


「【森蜂の毒針】が二つに【森蜂の甲殻】か………………。素材があっても生産系のツリーは持ってないんだよなぁ」


ストレージを見回せば、今回手には入った毒針と甲殻は結構な量を所持しており、

他にも友好度があがったトレントから貰った【樹人の枝】や、ヴォーパルベアの【赤毛熊の毛】や虹色鳥の【虹色の尾羽】、【蜘蛛糸】等の素材アイテムが所狭しと並んでいる。


「一度どこかの町に行くべきかな」


今ならグリズ達がいるから行ける場所も増えたし………………。

とそこでシステムメールの着信音が鳴ったため、アイテムストレージを閉じてメールを開くことにする


『おめでとうございます。【森の人】所得後、森での累計滞在時間が300時間が経過しました。これにより称号【森の人】が上位称号に変化します』


【森の人】→【森の民】

称号【森の人】を所持していたプレイヤーがさらに森での累計滞在時間が300時間を超えたプレイヤーに与えられる称号。

森の中にいる限り全ステータスに+5される。また全ツリー成長率、森にいる獣、鳥獣系モンスターとの友好度上昇率に+20のボーナスが発生する。


またすごい称号が………………。なんだか森から出たくなくなってきそうだけど、このまま森に引きこもるのもなぁ。

この先どうなるのかわからないし、一度近くの町に行って装備を調えよう。いつまでも初期装備(始まりの町で買った服は初期装備と数値的な違いは一切無い)のままじゃ怖いし。


「よし、みんな行こう」


「キュイ」


「グォン」


声をかけるとジュエラとグリズが返事を返してくれ、テスカは静かにそばに寄ってくる。そんな彼らとともに森の中を東に向かって進んでゆく。ロォークスの森の東にはキャラルの町という現在攻略組の活動拠点となっている町がある。そういえばロォークスの森はこの前のインタビューで話したガーディアンジャガーの特性から適正レベルの見直しがあったらしく、レベル5ほど適正レベルが上がったそうだ。そのためゴルドさんのような本当にトップの人たちを除いて森へはいるのはもう少し先になるらしい。


「んんんんぅ~?これはこれは、最近森の連中が騒いでおった人間ではないかな?」


「ふぇ?」


森の中で少し開けた広場になっているところを横切ろうとすると、突如辺りを震わせるような太い声が聞こえてきて、思わず変な声を上げて辺りを見回した。


「………………」


足下に近寄ったテスカが僕の手に頭を擦りつけて広場の中央、そこにそびえる巨木へと顔を向ける。そちらを見ろと言わんばかり行動に従うと、巨木の少し上の方に空いた二つの虚に緑色の光が灯る。


「驚かせてすまんかったの、神獣と共にある者よ。わしはこの森の長をしておる【エンシェントトレント】のエノクという者じゃ」


緑色の光が揺らぐ度に辺りにエノクさんの言葉が木霊する。


「エンシェントトレントって、もしかしてここのフィールドボス?」


「ふむ、たしかに括りとしては間違っておらんな。わしに挑んで見るかの?」


「遠慮します」


おもしろそうに問いかけてくるが、ここは適正レベルが僕のレベルを遙かに上回るロォークスの森。そして目の前にいる(ある?)エンシェントトレントはそこのフィールドボス。逆立ちしたって勝てる相手じゃないし、そもそも僕は避けられる戦いは避けたい人間だ。

僕は首をぶんぶんと左右に振って戦いの話を断った。


「ふぉっふぉっ、それがいい。わしも争いごとは好まんて」


「キュゥイ」


ジュエラが抗議するかのように前足を振って抗議の声を上げるが、エノクさんはおもしろそうに笑い声を上げるだけだ。


「ふむ、【森の民】となったようじゃな。この短い期間でよくもなれたもんじゃ」


「森から二週間以上出ませんでしたから。自然とそうなっちゃいました」


「ふぉっふぉっふぉっ、よいよい。森で糧を獲て日々を生きる、正しく森の民と言ったものじゃな。これを受け取るとよい」


頭上の枝が風もないのに静かな音を立てて震え、そこからゆっくりと小さな粒が降ってくる。胸の前で広げた手の中に落ちてきたそれを見てみると、それは小さな何かの種だった。


「job seed【ドルイド】じゃ。森で糧を獲て日々を生きる者へのわしからのプレゼントじゃ。

ドルイドは【薬剤師】【狩人】【山師】の複合職でな、育てれば各種ポーションの作製、弓への補正、山や森でのステータス補正が付くようになる。鉢二つ分のスペースを使用するが、森の神獣をテイムしておるのじゃから問題は無かろう?」


「たしかにスペースは有り余ってます」


森の神獣カーヴァンクルのアビリティ【森の神獣の加護】。カーヴァンクルのテイムに成功したときに持っている鉢一つに付き畑を一つ得るというとんでも効果をもったアビリティだ。僕らが最初から持っているプランターすでに鉢3つ分であり、これにこのアビリティが合わさるだけで畑を3つ、つまりツリーを27本も同時に植えることができるようになるのだ。おそらく現在のトッププレイヤーであるゴルドさん達ですら畑を一つ持っているかどうかといったはずで、それだけでもこの効果が破格の代物であることがわかる。


で、ゲーム開始時から一つもツリーを増やしていない僕はその畑に木が三本植えてあるだけであり、宝の持ち腐れ状態になっている。エノクさんから貰ったツリーを植える余裕は十分すぎるほどにある状態だ。


「それじゃありがたく使わせて貰いますね」


エノクさんに礼を言って目を閉じる。脳裏に畑を思い浮かべて瞼を開くと、そこは先ほどまでいた森の広場ではなく、ゲーム開始前にいた草原だった。そしてその草原には前にはなかった畑が3つ並んでおり、その内の一つは真ん中に三本の木、ジョブツリーとアビリティツリーが寂しく並んで植えてあった。


僕はその三本のそばに今貰ったばかりの種を植える。すると種はいつかの時のように急成長して芽を出し、僕の畑に新しいツリーが追加された。


「これでよし」


手に着いた土を払って再び目を瞑り、開いたときにはまたもといた森の中に戻っていた。


ステータス画面を開いて確認すれば、今まで空白だったサブジョブの欄にドルイドの文字が追加されている。当然成長値は0だけど。さらにスキル欄に【調薬LV1】【狙い撃ち】のスキルが追加されていた。


「複合派生したわけではないから全く成長しとらんだろう。ここらの薬の素材となる草花はレベルが高いでの、まずは始まりの町近くで採取するか町でレベルの低い薬草などを買ってくるべきじゃな。それと、弓も購入して装備せねば意味がないの」


「今すぐに役に立つのは山師の方角把握能力ぐらいだけど…………」


「キュイ?」


【方向感覚・森】のアビリティをデフォルトで持ってる神獣様がいるからあまり意味がない。それでも育てていけば役に立つ能力なんだしエノクさんには感謝しなきゃ。


「そうそう、お主は森の民の称号を持っておったな」


「え、はい持ってますよ」


改めてお礼を言おうと思ったら出鼻を挫かれた。


「うむ、では真に森の民となる気は無いかの?」


真に、てどういう意味?

全く意味が理解できないのでそう正直に答えると、エノクさんは笑い声をあげながら説明してくれた。


「なに、そう難しいことではない。エルフに転生せぬか?というだけの話じゃ」


oyoではどのプレイヤーもヒューム(人間)でゲームが開始する。けれどゲームを進めてレベルが30に達すると各町にある神殿で他種族に転生できるようになる。転生するとレベルは1になり各ステータスも転生直前のステータスの7割ほどにまでダウンしてしまうが、新たにレベルを上げることで再度ステータスに振り込むボーナスポイント得ることができるし、30から1に下がってもステータス事態は三割減するだけで実質レベル27相当のステータスを維持できるため、β時代にはみんなのレベルが30になる頃には転生ラッシュが起きていた。ちなみに一度転生するとβでなれる人はいなかったがその上位種族以外には転生できなくなるので注意が必要になる。

他にも転生後の種族には固定アビリティや特有アビリティが存在し、僕が知るものではボラーから聞いたドワーフの特有アビリティ【鍛冶と力と技巧を司どりし亜神の加護】という物があり、それは金属製やからくり系の武具、アイテムの作製時に+補正が入り、常時STRとDEXに+X%の補正がかかる上に火属性耐性、熱耐性が付くというとんでも効果だという。ただ数日に一度は酒系のアイテムを使用しないと効果が薄れるという-効果も付いていたはずだけど。

ヒュームやエルフ、ドワーフの他にも水辺で力を発揮するようになるアーマン、小柄な体躯のゴブリン(βでは不人気だった)、逆に大柄な体躯のオーガ、太古の種族が作ったいう設定を持つ機構人ギアゴーレム。光の翼を生やしたエンジェル。頭部に角を持ち皮膜の翼を生やしたデモン。多種多様な耳と尻尾を持つワービースト。竜鱗と翼、角を持ったドラゴニュート。これらの他にもまだ発見されていない種族もあるというのだからoyoスタッフの、いやアトモック社がこのゲームにどれだけ力を注いだのかがわかるというものだろう。これだけの物を作れるなら違法な方法に手を出さなくてもよかったと思うのだけれど、今ここでそんなことを言っても仕方のないことか。


さて、話を戻してエノクさんからの提案であるエルフへの転生。正直エルフの持つ固定または特有アビリティを僕は知らないし、第一僕はまだレベルが30どころかその半分にも達していない。さらに転生には多額のお金が必要だったはずだ。今の僕は始まりの町で今の装備を買ったときの残りしかお金を持っていない。とうてい転生するのに足りる額ではない。


「え、と………………。僕まだレベルが13しかないしお金もないんですけど………………」


「ん~レベルの制限と多額の寄付金が必要になるのは各町の神殿で転生をするときだけじゃよ。

各種族に設定された条件を満たせばレベルに関係なく無料で転生可能じゃよ。

ちなみにエルフへの転生条件は称号【森の民】を得た上で連続10日以上、森で採れる食料のみで生活することじゃ。お主はその条件をしかりと満たしておる」


確かにロォークスの森に来てからここで採れる果物以外食べてないな。


「ちなみに、エルフとなればこの森に家が与えられるぞぃ」


「え、森の中に?」


家、ってマイホームのことだよね。町とか村で多額の金を払って購入する。


「うむ、各種族に設定された条件はそこそこ難しい物に設定されておるからの。その特典のようなものじゃよ。各種族に対応した場所に家が与えられるようになっておる。エルフの場合は森の中じゃな。

死したトレントの体をそのまま家に改築したものじゃが住心地はいいと思うぞぃ」


どうじゃ転生したくなったか?と雰囲気で尋ねてくるエノクさん。正直家が手にはいるというのはとても魅力的だ。なぜなら今の僕はモンスターを5体までテイムできるようになっているけれど、連れて歩けるモンスターは3体までとなっていて実質3体までしかテイムできないのだ。これを解消する方法がマイホームの所有で、連れて歩けないモンスターを待機させる場所が必要になってくるのだ。

マイホームって始まりの町の一番安い物でも10万とか必要だったはず……………。


「………………………………………………………………お願いします」


こうして僕はエルフに転生することになった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。