部員-3-
やっと気づいたんだけど、エピローグって、終わった方だった。
一話目のプロローグだった……。
作者ッ!!
「うむ。不二の紹介は終わったから、そこの二人を紹介しようか」
部長は、先程までトランプをしていた黒髪と、ロリ……背の低い女の子を目で見据えながら言った。
「こっちの男は黒井陽。なぜか色々知ってる、この部の中で一番恐い奴だ」
部長がそう言うと、黒井と呼ばれた少年は、口を尖らせ、反論する。
ニヤニヤしてるところと相まって、何となく苛ついた。
「酷いなぁ、恐いだなんて。印象が悪くなっちゃうじゃないか」
「貴様の印象など、いつでもどこでも最悪だろう?」
「…っ。そんなことないさ。よろしくね、横島宗くん」
スッと手を差し伸べられる。
僕はそれを華麗に無視して、
「無視、酷くない!?仮にも初対面だよ!?」
もう一人のロリ……ロリっ娘に目を移す。
「部長、こちらの方は?」
「ねぇ、酷くない?俺、自己紹介すらしてないよ?」
「あぁ、そいつは夏貝南。背が小さいのが特徴だ」
いや、見れば分かるけどね。
136くらいかな?
「……夏貝南。南でいい。…よろしく、横島」
そんな、いきなり名前呼びなんて、馴れ馴れしいですよ。よろしくお願いします、夏貝先輩。
「えぇ。本当によろしくお願いします、…南先輩。僕の娘になってください」
「……?」
はっ!?建て前と本音が逆になってしまった。
とりあえず、冗談として誤魔化さないと。
あとキョトンとした先輩可愛い」
「………?」
ってあれー!?いつから僕喋ってたんだろう?
「んんっ。一旦落ち着け、横島氏」
「落ち着けないですよ!!可愛いじゃないですか!!」
「…なにを言っているんだ、君は…?」
「あぁ、可愛い!!お持ち帰りしたい!!お医者さんごっこしたい!!」
「こいつ、大丈夫か?おい…」
紙袋を外した、不二先輩が、若干引いた目で僕を見てくる。
いや、あなたの方が変態だからね!?なんで、そんな目ができるの!?
「あぁ、不二…。こいつは、私達が初めて出会う形の、変態だからな」
「なに言ってんですか、部長!!あんまり変態変態言うと、髪食べますよ!!食べさせて下さい!!」
部長は身震いして、自分の髪を大事そうに抱え、僕から離れた。
ふっ!!あまり僕を嘗めるな。
そんな距離、僕にとっては無いに等しい!!
さぁ、地面を蹴って!!
先輩の髪へ、いざダイブ!!
「不二!!やれ!!私を守るのが、貴様の役目だろ!!」
「…合点承知した。悪く思うな、我が後輩」
そう言いながら、不二先輩が部長の前に立つ。
チッ、邪魔だ!どけ!!
「不二先ぱ…」
「吹っ飛べ」
台詞の途中で、頬に大きな拳の感触。
そして、遠ざかる不二先輩。
やった、さすが先輩。話が分かる。
それにしては、左頬が死ぬほど痛いし、部長も遠ざかって……え、部長も?
−−ドサっ。
鈍い音と共に、更なる痛みが僕を襲う。
え、どういう状況?
頬が痛くて、背中痛くて、不二先輩遠くて、吹っ飛べって、、、え?
僕殴られたの?
「…ぁがぁぁあああ!?」
あぁあぁああ。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
痛い。
「へえ、一発でトばなかったのか。不二、貴様、手加減したのか?」
「…したには、したが。なんで起きてるんだ、こいつ」
部長と不二先輩が、妙に落ち着いたトーンで話している。
なに悠長な事言ってるんだ。
早く。
「ふむ。。。まぁいい。次は、トばせ」
逃げないと。
僕が。
ドスっ。
不二先輩の足で、僕の意識は黒く染まる。
−−どうせなら、部長に踏まれて、消えたかった。
目を開けると、そこは白い部屋だった。
鼻を突く、消毒液の香りから察するに、どうやらここは保健室らしい。
「…っ痛」
身体を起こそうとすると、頭に激痛が走った。
−−あぁ…久しぶりに脳震盪起こしたな。
僕はしみじみと、そんなことを思う。
昔は、色んな女の子にちょっかい出してたからなぁ。その度に、色んな男に殴られてきたから、受け身のとり方と、逃走ばかり上手くなって。
具体的には、この学校に来てから、一年間で100回位殴られてる。
「……あ、起きた」
と、横から南先輩の声。
「ってぇぇえい!!…南先輩どうしてここに?」
「……ってーい?」
「あ、いや、驚いただけです」
「…そう」
先輩は独特のリズムで会話する。
うむ。僕の予想じゃ、先輩は無口系無垢クーデレだと思うんだけど、多分そうだろうね。
あと、僕個人としてはクーデレ大好きです。
いや、可愛い子は皆大好きです。
「……私、見守りの命令、貰ったから」
「命令て…。部長ですか?」
僕の質問に、彼女はコクンと頷く。
こういう仕草は本当可愛いよね。
男女問わず、可愛ければ正義だよね。
これを富士先輩に言ったら、殺されるだろうけど。
「……じゃあ、私はここで」
「あ、ちょっと待って」
立ち上がった彼女の腕をつかむ。
保健室に女の子と二人っきりなんて状況、もう一生来ないかもしれないんだ。せめてもう少し話させて。
「……ぁ」
「あ…すいません。いきなり。痛かったですか」
僕は手を離す。
いやぁ、僕としたことが、焦りすぎてしまったようだ。反省。
ただ、こう、小さい声と少しだけビクッて体がなるのって、傍目から見ると、なんともそそるなぁ。
それが南先輩の、幼女体型と相まって。
もう、僕の【倫理的問題により伏せさせていただきます】はスパーキング!!
…そんなに引かないでくれ。冗談だから。
僕は、彼女の腕から離れた掌を、凝視する。
すげえ舐めたい。
「……いや、大丈夫」
その当の彼女は、軽く朱色に染まった頬のまま、僕が寝ているベッドの横にある丸いすに座り直した。
--しかし、腕を服ごしに掴まれたくらいで赤面って。
南先輩って男苦手なのかな。
「南先輩って、男苦手なんですか?」
でも、だからって聞いちゃいけなかったんだ。
自分の心の中で、男苦手と、勝手に思っとけばよかったんだ。
目の前の小さな女の子も、相談部の一員なんだから。
そこを忘れてはいけなかったんだ。
「……別に。そこじゃなくて」
彼女は首を横に振る。
そして、その小さい口で、
「…私、ドMだから」
--帰り道。
僕はとりあえず安静ということで、部長たちに家に帰らされた。
もう時刻は五時だというのに、外は明るくて、夕焼けにすら至っていない。
僕の家までの帰り道は、川沿いの道を歩いていくもので、夕焼けを見れると、すごく綺麗だ。
……だが、その分カップルを、、、、否、カップルのキスシーンをよく見ることになるので、ものすごく切なくなる。一度だけ「交ぜて」と言ったら、殴られた事もあるし、余計切ない。
河の橋の下とか、結構いい響きの所だけど、「交ぜて」と言ったら殴られた。
「南先輩……」
僕は思わず口に出す。
あの小さくて、クールで、茶髪で、ショートカットで、制服がダボダボで、(中略)な彼女が。
ドM、だというのだ。
具体的には、さっきの腕をつかんで赤面したのは、興奮したからで、、、そうそう、つい先程までやっていた大富豪は、わざと勝って、憎しみの目で見られたかったからやっていたらしい。そこまで行ったら、最早Mかどうか分からない。
「まだ僕は南先輩と、不二先輩の変態ぶりしか見てないんだよな…」
あんな異常者達に、負けず劣らない変態達なんだもんな、ほかの人も。
部長や、三富士、黒井さんも。
「ん?あれ」
自分の入った部活を思いながら、僕は違和感に気づく。
--相談部の人達は、皆変態……。
つまり
「僕も、あんな変態たちと同じくらい、変態だというのか…!?」
いつもの帰り道で、僕はまた、切なくなった。
さくしゃのあとがき
プロローグ問題、すみませんでした。
いやでも、最近、「終わりから始まる物語」みたいなの流行ってるじゃないですか。
それ的なノリですよね
すみませんでした