表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/32

部員-1-

「おぉ、きたか!!横島氏」

放課後、相談部に向かうと、椅子に座っていた部長−丘雫(おかしずく)が満面の笑みで僕を出迎えてくれた。変態病棟とか言われているのを忘れてしまうくらい美しかった。

「はい。部員ですしね」

「いや、ね。入部した人間が、そのまま入部し続ける事は珍しいんだ」

へぇ。意外だなぁ。こんなに美人の部長がいるのに。

「…皆、部員を紹介すると、次の日からこなくなるんだ。。。なぜだ」

ガックリと首を落とす部長。

多分それで来なくなった人達が、変態部とか吹聴したんだろうな。

…そうだ、ここ『変態部』なんだ。

「だがっ!!」

いきなりバッ、と部長が立ち上がる。

そして、ガシっと腕を掴まれた!うおおおおおおおおおおお!!!

「横島氏!君ならこの相談部の、立派な一員になると、私は信じてるよ!」

「はい、喜んで!!」

「おお、そうか!では、相談部の部員を紹介しよう!」

彼女は荒々しく、掴んだ僕の腕を振る。

--僕って軽々しく返事しちゃうなぁ。

でも、部長のこんなに無邪気な姿が見れたから、良かったかな。うん。





「さて、まず、君と同学年の、三富士だ」

彼女は、部室に設置されているソファの前にやってくる。

そのソファの上には、一昨日僕をここまで案内してくれたあの娘がいた。

「三富士氏じゃないんですか?」

「いや、私は女性には氏をつけないんだ」

そんなどうでもいい事を部長と話していると、ソファに寝ていた彼女は目を覚ました。

「…ーん。どうかしたんすか?」

彼女は「目」だけをこちらに向けて、口を開いた。

だるそうだなぁ。

あと、制服のまま寝ると、いい案配で制服が着崩れて、色気を感じるなぁ。

緩いシャツの襟口から見える、鎖骨。

さらに、そこに開いた襟口と素肌との洞窟。その先の見えない暗闇を、突き進んでしまいたい衝動が湧き出るが、必死に抑える。

そして、そこから目線を下にずらして、スカート。

これがまたいい味を出している。

少し捲れ上がったその布の下には、皆のオアシス、そう、アレがある。

それが見えるか見えないかのギリギリの位置をキープし、そこから目を外すのは至難の技だ。

また、スカートが捲れ上がることによって、普段より大きい面積の太ももを曝け出すことになる。

つまり、ニーハイと太腿の、黒と白のコントラストだ。

このキッチリとした境目が、さらに僕の心を掴んで離さない。

--だが、まだそれだけではない。

そう、乱れた髪と、首筋を伝う珠の汗だ。

ここまでコスチュームや身体ばかり注目したが、この二つの要素を除いたら、それはガクンと輝きを失っただろう。

乱れた髪、そして汗。この二つが演出するもの。それは身体の火照りだ。

この火照りが加わることによって魅力が段違いに上がる。

最後に、彼女特有の気だるさも相まって、その光景は

『至福』

この二文字が-否、この二文字こそ、相応しい。

「三富士さん。グッジョブ…ッ!」

僕は今、猛烈に感動している!

「は、はぁ…?」

「ん?横島氏?大丈夫かい?」

二人揃って、奇異の目で僕を見る。

「あ…うん。大丈夫です」

僕の様子に、彼女らはさらに首をかしげたが、追及はしてこなかった。

「では、紹介しよう。彼女は三富士文(みふじふみ)。君と同じ年で、7月14日生まれ。で、百合だ」

「そっすねー」

「後は、三富士。少し喋れ」

「…うーす」

部長と三富士さんは、そんなやりとりをして、三富士さんが遂に立った。

……ばかやろう。

「えーと、三富士文。百合が好きで、経験人数は5人。まだ処女っす。よろしくっす」

三富士さんは、僕に一礼して、またそそくさとソファに寝転んだ。

ここまで流れるようにソファに寝転ぶ事ができるのは、この学校で多分、三富士さんだけだろう。

何年間この動作をしてきたのか、最早それは達人の域であった。

--さて、本題に入ろう。

「百合…だと!?そして、出会って二日目の奴に処女宣告だと!?」

重要だ。

この少女はなにを考えているんだ!

「んー?今時、同性愛者は珍しくないっすよ?」

「そういう問題じゃないよ!!というか、そこじゃないよ!」

「どこっすか?処女っすか?」

「そこだよ!!三富士さん!いきなりそんなこと言ったら、危ないでしょうが!!」

「…なにがっすか?落ち着きましょうよ?」

「落ち着けないよ!!ほかの男子に、そんなこと言ったら勘違いされるからね!?」

「勘違いっすか」

「こいつ、俺のこと誘ってんじゃねえか?的な勘違いだよ!」

「でも私、女の子にしか興味ないし…」

「それで傷つく人もいるんだよ!!これ以上ない『勘違い乙』だよ!立ち直れないよ!」

「…何情報っすかぁ」

「ソースは僕だよ!!」

小学校の頃、「優しいね」に騙されて、告白した僕だよ!馬鹿!僕の馬鹿!

「はぁ…。分かりました。そこまで言うなら、以後気を付けます…」

三富士さんは、納得いかない顔で言って、それを最後に意識をブラックアウトさせた。

うむ…。大丈夫かな…

そもそも、僕の前でこんなに無防備な姿を晒してる時点で、終わりだと思うのだが…。

--すると、僕の苦悩を読み取ったのか、会長が、

「大丈夫さ。もし大丈夫じゃなくとも、それは彼女の問題だ」

「でも」

僕は食い下がってしまう。

だが、会長は自らの言葉で、僕の言葉を断ち切った。

「……君は『変態』なのに、優しいんだね」





小学校を思い出して、死にたくなった。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ