休みに女の子と買い物、あぁなんて僕は罪の深い人間なんだろう
「はじ兄。ちょっと付き合ってほしいところがあるんだけど」
昼食を食べ終えた悠が、僕に話しかける。付き合ってほしい、、、、だと!?
「なんだい、悠。ついに僕のフェロモンにやられちゃった?」
「あはははは」
普通に笑われた。こういう対応が一番心にくるよ。
でも、悠とどこかに出かけるなんて久々だなぁ。普段は両親がいるから、悠とお出かけなんてできないんだよね。
やっぱりビバ夏休み。僕はこの青春を駆け抜けたい。
「で、どこに行きたいの?悠は」
「うん、最近できた大きいショッピングセンターにいこうかなって」
うちの従妹からそんな言葉が出ると、やはり僕とは違う人種なんだなと思う。
そんな僕の心情は置いといて、とりあえず着替えてこないとね。
「じゃあ、着替えてくるから。悠も準備しといてね」
「うん」
そんなやり取りをして、僕はリビングを出る。
――あぁ、そうだ。あと、お金も用意しとかないと。
「で、なんでこんなところにいるんですかね、あなたが」
「なんでと言われても。少し用事があってね」
「はじ兄、知り合い?」
「そうか、君ははじ兄と呼ばれているのか。俺は横島君の部活の先輩。よろしく横島悠さん」
「あれ、私名前言いましたっけ?」
「気をつけろ悠。この男は平然と犯罪を犯す人だから」
「ちょ、そんなこと言わないでくれよ横島くん。俺がいつ犯罪をしたって言うんだ」
「今現在。ぼくにセクハラをしてます」
「してないよね!?」
「存在が」
「ただ単に君が俺を嫌ってるだけだよね、それ」
嫌われてる……だけ?この人にとって嫌われることってそんなに軽いのか。
さすがはじ兄の部活の先輩だけある。
「こんな雑貨屋に男一人でいるだなんて、恥ずかしくないんですか?黒井さん」
「こんな雑貨屋って……。失礼なことを言うね。まぁ、たしかに俺はこの雑貨屋自体に用はないんだけど」
今私たちがいる雑貨屋は、独特の雰囲気を持つ、最近私の周囲で人気の雑貨屋である。でも独特の雰囲気といっても男の人が一人で入るようなところでないのも確かだ。
だからこの黒井という男の人がいるのは、なかなかに浮いていて。
「それってどういう意味ですか?」
私は黒井さんに聞く。雑貨屋自体に用がないという言葉の意味が分からなかった。
暇つぶしするにしても本屋などがあるし、ここじゃなくてもいいはずだ。
――そしてこの問に対する答えが、この男の異常性を現してくる。
「いや、ちょっと縁切りを任されちゃって」
縁切り?なんのこと?
「いや、君たちにはわからなくていいよ、別にすごいことでもないしね」
「黒井さんにすごいことなんて、あるわけないですもんね」
「特技が覗き、盗聴、ストーキングの君に言われたくない」
はじ兄ェ……。
「ちょ、悠が引いちゃってるじゃないですか!何してくれてんですか!」
「ひかれる特技を持つ方が悪くないかな?」
「くそ、ニヤニヤしながら言われると余計腹立つ……」
はじ兄と黒井さんはそんなやり取りを続ける。
――こんなはじ兄見たことないかも。
普段から人に悪態をつくところを見ないから、こういう姿は新鮮だなぁ。
というか結構仲良さそうだし。あの、ぼっちだったはじ兄も遂にしゃべる人が出来たのかな。
最近は部活で家に帰るのも遅い時が多かったし、そろそろ従妹離れってやつなのかなぁ。
なんか嬉しいような、さびしいような。
「じゃあ、黒井さん。せいぜい夜道に気を付けてください」
「怖いことを言っていくなよ……。無駄にリアルなんだから」
「あなたの方がこわいこといってますからね」
「じゃあ、横島君。また部活で」
「はい。じゃあ悠、行こうか」
はじ兄が私の手を取って歩き始める。別に子供じゃあるまいし手を握んなくたっていいのに。
「さて、どこに行こうか」
――まぁ、でも、こんなうれしそうな顔をしてるんだし、少しくらいは握らせといてあげよう。うん。
「あ、南先輩」
「……横島。。。と、彼女?」
はじ兄と一緒に本屋に向かったら、またはじ兄の知り合いとあった。
なんだ、この小さい娘は。かわいすぎるでしょ。
「彼女じゃなくて、従兄妹です。かわいいでしょう?悠」
「……可愛い。とても横島と血が繋がってるとは思えない」
「さりげなくディスんないで下さいよ。そういうのはあんまり心に来ません。Mとして」
「……ごめん」
しかし、この兄はどうしてこう駄目なのか。どうしてそんな息するように駄目発言をできるのか。
私がため息をすると同時に、小柄な彼女が自己紹介をしてくれる。
「……火貝南。ドM。横島の先輩をしている」
あぁ、この人もそっち系の人か……。はじ兄に普通の人の知り合いはいないのか。
「私は横島悠です。部活では兄がお世話になっています」
「……兄?」
「あ、いや、昔からはじ兄と呼んでるので、つい」
「……仲いいんだ」
「南先輩嫉妬ですか?ウェルカム嫉妬。ウェルカム修羅場。修羅場で死ぬなんて男の本望ですよ」
「……そうなの?」
「ええ。最近はやってますよ修羅場。僕の知識だと、最近は幼馴染と彼女と、元カノと感動の再会を果たす幼馴染の四人の修羅場がベストだそうで」
「……横島には一つもないよ?」
「さらっと、僕の彼女と元カノの存在を否定しましたね。まぁ、いませんけど」
……楽しそうに話すなぁ。なんか二人の世界って感じだし、私邪魔なのかな。
なんか面白くないなぁ。
「ほら、はじ兄次のとこ行こうよ」
「え?悠、ここに用事があったんじゃないの?」
「いや、マンガの新刊見に来ただけだから、もう大丈夫」
「そう?……あれ、これってあれ?修羅場?キタコレ?」
はじ兄が妄想の世界に飛び立ちつつある。修羅場も何も、はじ兄を奪い合う人なんているわけないのに。
「何言ってるの?妄想も行くところまで行くと不快だよ?」
「まじ、すんませんした。じゃあ、南先輩、僕はこれで」
「…………また、部活でね」
彼女はそう告げて本棚の中に消えていく。最後の感じ、今の人、はじ兄とのちょっと惜しんでた?
そうか、はじ兄の部活――相談部はみんな結構仲いいんだ。
――なんか気になってきたな。
「ん?どうかした?悠」
私ははじ兄の顔を見つめる。うん、二学期になったらちょっと調べてみよう。
だから、今はいいや。今はこのデ、、、、買い物を楽しもう。
心の内でそうきめて、はじ兄の手をひっぱる。
「じゃあ、次は――――
さくしゃのあとがき
はい、なにが明後日までにですよね。馬鹿なの?しぬの?
さて今回は悠の視点から書きましたが、やっぱり横島以外の視点から書くのは慣れませんね。今更ながらにラブコメっぽさを入れてみましたが、なんともいえない。
ラブコメ的なものを入れると恥ずかしさが出てきちゃうんですよね。
これは私が恋をしてないからか……