日曜日ッ!-1-
僕の日曜日を公開しちゃうよ!
みんな、僕を見てっ。はぁはぁ
下腹部に尋常ではない重さを感じて、僕は目を覚ました。
「…あ?」
僕は寝惚け眼のまま、重さの正体を探る。
なんだ、なんだ?ついに、僕にも春が来たのか?あぁ、この上に美少女が乗っているのかな?
起きて数秒でこの思考回路に至る僕も僕だね。
「わ…私、召喚されはしぇっ、馳せ参じました、あなたの使い魔です。なんなりとっ、ご、ご命令を…っ!!」とか
「あら、もう起きちゃったの?ふふ、仕方ない子ね。これから【倫理的問題によりカットさせていただきます】」とか
そんな展開になると、期待を抱いたよ。
--現実は、十キロのダンベルだったけどね。
なにこれ、おかしくない?なにゆえ僕はダンベルに起こされてるの?なんで妹とか幼馴染に起こされてないの?
「あ、起きちゃった?」
僕がどうしようもない現実に打ちのめされていると、ベッドの横から、女の子の声が聞こえてきた。
うっひょーーい。僕の朝の目覚めは、女の子と一緒だーーい。
とりあえず、声の主の女の子に挨拶をしなきゃね。
「おはよう、悠。今日も可愛いね」
「な…何言ってんの!?…恥兄のバカ」
「ん?なんかラブコメっぽい雰囲気だったのに、ただの一言でぶち壊された気がする」
「え?だって恥兄は端兄でしょ?」
「どっちも『はじにい』って呼ばれてるのに、貶されてる気がする…」
「あはははは」
…おっと、つい愛しい愛しい悠との会話に夢中になってしまった。ちゃんと紹介しないとね。
黒髪ショートの、活発そうな女の子。高一だというのに全く育たない幼児体型は、常常僕の心を奪う。
さて、そんな少女がなぜ僕の朝に立ち会っているのかというと、それはもう聞いたら発狂しそうなくらい羨ましい理由である。
…まぁ、つまり、彼女は僕の家に住みこんでいるのだ。
僕の従姉妹として。
何が、まぁつまり、なのかなんてどうでもいい。実際考えてない。
うふふふふふ。それより、どうだい?羨ましくて発狂しただろう?
「はじ兄、、、なんで一人で笑ってるの?」
「いや、悠みたいな可愛い子が、同居してると思うと、なんだか優越感が沸き起こってね」
「………ばーか」
がちゃっ、と僕の部屋のドアを勢いよく開けて、彼女は出ていった。
僕はとりあえずダンベルを床に置いて、ベッドから出る。
そして、伸びをしながら考える。
--悠はなにしに僕の部屋に来たんだろう?
「母さん、僕の分の朝飯は…?」
一階に降りてダイニングに向かうと、そこの食卓の上には、真っ白な皿とパンが、三枚しか置かれてなかった。
両親と悠の分だろう。うん、そこまではいい。
で、僕の分は?
いやいやいや、さすがに実の息子である僕の、朝飯がないなんてことはないだろう。
で、僕の分は?
「………」
母さんは何も答えない。
え…?なにこの沈黙。真面目に僕の朝飯ないの?
「………」
鋭い視線をぶつけてみるが、母さんは、やはりなんの反応も示さない。
ちょっと、いい加減にしてくれ?え?ないの?
そんな僕らの雰囲気を察してか、悠は、
「あの、はじ兄、私の半分あげるよ」
「あら、悠ちゃん。遠慮しないで。アレに優しくすると、すぐつけあがって面倒よ」
「おい!!今、本音出ただろ!!アレってなんだよ!僕息子!!」
くそ、この母親。血のつながった息子をアレ呼ばわりだなんて、あんまりだ!
「うるさいわ、横島さん」
「ここにいる人、ほとんど横島さん!!そこまでして僕を息子と認めたくないの!?」
「最近の子はヒステリックでいけない。もっと落ち着きなさい」
「誰のせいだよ!!」
「……あ、そうだ。あなた、海外に行ってくるのは、どう?今のうちに世界を見ときなさい」
「そんなに僕を家から追い出したいの!?」
「………」
「無言で目をそらすなぁぁああ!!」
この親!!児童相談所に逃げ込んでやる!児童最高ーーーー!!
しかし、朝飯について嘆いても仕方がないので、僕は母さん(?)から500円を奪い取って、漁サンを履いて外に出る。
僕は基本的にポジティブなのだ。
「あの、馬鹿親!!僕に悠を譲ってください!!」
我が自宅に向かって大声で叫ぶ。
こうでもしないと、やっていられない!
僕は、怒りやら、悠への劣情やらを原動力に、自転車を漕ぎ出す。
ひたすら夢中に漕いだ。
--だから気付かなかった。500円として渡されていた筈のコインが、どこの国かよく分からない通貨だったことに。
……ばかやろう!!