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人と人との縁って切れそうで切れないんだけどやっぱ切れちゃう【倫理的(略)】

夏休み。われらが相談部には、いつものメンバーがそろっていた。

「綿貫君。もうかれこれ100個以上未練をなくしているぞ。まだ成仏しそうにはないのか?」

部長――丘雫(おかしずく)は相談者、綿貫浩二に問いかける。

綿貫君はその問いに首を横に振った。

「わかんねえんすよ。こいつが、どうしたら成仏すんのか。全く」

「そうか」

部長はそれだけ言い、黙り込む。解決策を考えているのだろうか。いや、考えているというよりは悩んでるような、そんな顔だった。

ああ、そんな顔のあなたもとても綺麗だ。きりっとした顔つきの部長だからこういうシリアスな顔をとても似合う。

眉目秀麗という言葉を使いたくなるほど男前で、僕としては全く立場がないけれど。

彼女は悩んだ顔のまま数秒。そして、

「黒井」

一言、ポツリと漏らし、テーブルの上に置いてあった本を手に取った。






「部長。ちょっといいですか?」

僕は部室の窓際の席で本を読んでいた部長に、声をかけた。

さっきの言葉の意味が知りたかったからだ。

「なんだい横島氏。君が話しかけてくるとは珍しいな」

部長は読んでいた本を閉じ、部長は微笑みを浮かべながら僕に向き合う。話していいってことだよね?

僕は自分で用意した椅子にすわって、部長に聞く。

「さっきなんで黒井さんの名前を呼んだんですか?」

「……」

沈黙。もしかして、聞いちゃいけないやつだったのだろうか。

しかし、言ってしまったものは仕方ない。プレッシャーとかはあまり感じないタイプなんだ。僕は。

ついでに後悔も全然しない。後悔しようとしてしまったことは変わらないから。

――そして、部長はやっと口を開いた。

「横島、お前はなんで黒井が相談部にいるか知ってるか?」

「え?黒井さんがですか?」

そんなの変態だからだろう。部長はなんでそんなことを、

「横島氏、君は黒井の変態性を知っているかい?」

「――っ!」

絶句。そうだ。僕は黒井さんのことを何も知らない。黒井さんの変態たるゆえんを知らなかった。

思い返してみたら分かる。僕の中のあの先輩は、ただ笑っている物知りなだけではないか――!

支配欲、正義、マゾ、百合、あと僕みたいなオーソドックスな変態。

自分で言うのも何だが、それに比べ黒井さんはいたって普通の人だった。笑っているだけ。それだけだった。

「しらないだろう。君は教えられてないからな」

「……はい。なら、なにが」

僕の問に、部長は少しのためを置いて、

「黒井はな。その人間性に問題があるわけじゃない。いや、ないとはいえないが、変態といわれるほどのもではない」

部長は僕の耳に口をよせて言った。

「奴は――






―interval―

綿貫浩二は一人、学校外の公園にいた。

「あちい。そういやお前は、暑さとか感じるのか?」

彼は誰もいない虚空を見ながら、声を出す。

……否、誰もいないのではなく、誰にも見えない誰かがそこにいた。

「全然暑いわよ。当たり前でしょ」

琴吹愛(ことぶきあい)。綿貫浩二の幼馴染にして、事故により命を落とした人ならざる者。

俗にいう幽霊である。

「当たり前ではないだろ。俺は幽霊じゃないんだから」

「なにその言い方?私だって好きで幽霊やってないわよ」

「じゃあ、なんでまだいるんだよ」

「……浩二。それはちょっとないんじゃない?」

琴吹は怒気を声にはらませながら、少年にぶつける。

「すまん。今のは俺が悪かった」

少年は思う。こいつはいつ消えるのか、と。

こいつが自分の前に現われて、もう一か月経つ。

自分はもう慣れ始めていた。琴吹愛が三歩後ろにいる状況に。

だからこそ、彼は相談部へと駆け込んだのだ。

『成仏する』から『成仏してしまう』にならないように。

――と、空を見上げる綿貫に、最近になって聞きなれた声が聞こえてきた。

「っと、綿貫君。ここいいたのか」

黒井陽。それが声の主の名前である。その男は、綿貫に近づいて言う。

「綿貫君。君の依頼を確認させてもらいたい」

綿貫は突然の黒井の登場に驚いた様子を見せたが、

「琴吹を成仏させてほしい」

「じゃあ、もう一つ聞くけど、君は何をもって琴吹さんの成仏とみなすのかな?」

いつもどおりの笑みを口に携えながら、黒井陽は聞く。

「そうだな。それは、まあ俺からはなれたときじゃないか?」

「ほんとうだね?」

黒井に執拗に聞かれ、彼は少し戸惑ったが、

「……あぁ」

――その時、黒井は初めて笑みを崩す。

そして、

「縁切った」

綿貫と琴吹の立ち位置のちょうど真ん中の位置に、右手を振りおろした。


さくしゃのあとがき

別にこの作品を中二化したいわけではありません。が、今回の依頼、オカルトの力が多いですね。でも、いきなり敵が現れてとかそういうことには確実になりませんのでご安心を。

この話は作者の気分で書いておりますので、投稿ペースが遅いのはすみません。

この依頼はたぶん次の次で終わるので、それが終わったら、夏休み。そして、待望の(私が)新キャラです。では、次回で

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