相談部の日常
「僕の事、みなさんどう思っていますか」
放課後の部室で、僕は思い切って聞いてみた。
「変態」
すると、珍しく起きていた三富士が声を上げる。
うん。そう来ると思っていたよ。
「ちがくてさ。皆が僕に対する、なんていうのかな、好感度みたいな」
実際のところどうなのだろう。
僕は、この相談部メンバーに好かれているのだろうか。
そこって、実際、すごく大事だと思う。
だから、思い切って、僕は聞いてみた。具体的に言うと、地球が今年に入ってから、166回自転をした、6月15日。
聞いてみたのだ。
@三富士文の場合。
「総じて可もないですし、不可もないっす」
三富士はいつものソファに寝転がりながら言う。そこまでして、寝てない三富士は珍しい。
なんだろう。昨日寝すぎたみたいな?
子供か。
「なんだよー。その曖昧な返答は。何かない?いつも寝てるところを見守ってもらって助かってる、とか。好きです付き合ってください、とか」
「ないっす。というか、いつも私のこと見てたんっすか?キモイっすね」
(実況)しかし、けしからん口ですね。
(解説)――ええ、あれはいけませんねぇ。あの口だけで、ご飯何杯といったところか……。潤んだそう厚くない唇。健康的なピンク色がまたそそりますねぇ。さらに、その二つの花弁の隙間から覗く白い歯と、真っ赤な舌。あぁ、神はなんて不平等で、理不尽なんだ。年端のいかない少女の『口』という1パーツを、ただそれだけを造形美として、芸術品としてしまったのだから。
ピピッ。
(実況)おっと、主審が笛を鳴らしました!
(解説)これはいけませんねぇ。
(実況)何が起こったのでしょう。リプレイを見てみましょう。
リプレイ「ないっす。というか、いつも私のこと見てたんっすか?キモイっすね」
(実況)あぁー!!これは!!!
(解説)このプレイは、最近よく見られる、何気ない悪口ですね。はい。
(実況)と、言いますと?
(解説)読んで名のとおりですよ。思春期の男の子の、ハートを壊すための攻撃です。これは、横島選手。きついんじゃないか?
(実況)へー
(解説)君、ちゃんと聞きなさい
(実況)っと、横島選手、立ち上がりました!!さすがは我らが横島!!会場も大盛り上がりの体を扮しています!
(解説)あの子は、、、、私が長年追い求めて居た人材かもしれん……。
(実況)さぁ、横島選手。ここからが実力の見せ所です。彼の最大の武器はメンタルですから!!
彼と呼ばれている男は、立ち上がる。そして、三富士文にむけて言い放った。
「殴r……ひどいよ!!三富士さん!!僕は変態を除くと、それしか残らないのか!!」
「なぐ…?というか、横島くん。したら、何が残るんすかぁ?私、横島君をなんて思えばいいんすかぁ?」
(実況)おーーっと!これは答えづらい質問が来たぞ、どうする、横島!!
(解説)彼は、きっと、世界を…………横島、、宗!!
(実況)あの、どうしたんですか、落ち着いて……
(解説)風だ。風が、俺の大事なものを、全部奪っていきやがったんだ……。だから、この風を、俺は止めて欲しかったんだ。
彼、横島は、実況室での出来事には目もくれず――否、耳に止めず、三富士文と向かい合う。両者の間には、温い風が吹いていた。
――そのまま、数秒たち、遂に彼が返答する。
「……君の心を射抜く、アーチャー、、、とか?」
「きめぇよ」
(解説)今の季節、蚊が居るもんね。風にのってさ。窓閉めて欲しいわァ
(実況)あ、そういう意味なんですね。でも、風が何をもってくんです。
(解説)それは、あなたの心(といって差し支えない臓器から全身に送り出される血)です
(実況)ぶん殴るぞてめぇ。
「じゃあ、あれ。川越シェフとでも呼びたまえ」
横島は、ジョジョ立ちになった!意味は多分無い!
「私の心を射抜くアーチャー、川越シェフっすか?」
「僕の得意料理は、君の心を射抜くミネストローネフランスアレンジかな?」
「しらねぇよ」
横島は更に、新たなジョジョ立ちになる。
「チーズシャワーとか」
「はいはい、うなじうなじ」
「それ、結構前に僕使ってるよね!?」
「きゃー、アーチャーさんに話しかけちゃった☆」
「☆、じゃないよ!!君、本当は寝てないのか、いつも!!」
しかし彼に怒鳴られた三富士は、それを気にする風もなく、
「なんでも、初めてをつけると、ぐれーどアップするって、知ってましたか?」
「三富士……なんてマイペースなんだ」
すると、黒井がカーテン部屋から顔を出し叫んでくる。
「君に言われたくないよ!!」
「今日の黒井さん。今日はじめての黒井さん。本当だ!なにかグレードアップしてる!」
(実況)どうしましょう。いい加減実況どう終わらせましょう。
(解説)試合時間はあとすこしです。頑張りましょう。
「どうすか、横島君。この世界の法則は?」
「僕は大変なことを知ってしまった……。これは日本語の活用に入れるべきだと思う!!丁寧語とか、全部これでいいと思う!!」
「わかりましたか。横島君」
「あぁ。これはすごい!!早速誰かに広めたくなるよ!!ありがとう三富士!ありがとう世界!」
(実況)すごいですね。この三富士選手のプレーには、会場の人間も歓声を上げます。はじめての歓声です!
(解説)僕の初めては、小6の頃ですね。
(実況)すごいですね。私、初めて人間に殺意を抱きました
(解説)はははっ
彼女――三富士文は目を閉じ、話し始める。
その口には柔らかい微笑みが浮かんでいた。
「横島君は、自分がどう思われてるか、聞いたっすよね?それに答えるっす」
「ん?」
「私は、好きっすよ。横島くんのこと。女の子からは、はじめての好きっすよね?」
「っ!!!!!」
(実況)ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオル!!
(解説)心を射抜かれたのは彼でしたね。というか、先程の私の「風が奪うのはあなたの心です」がフラグになるとは、いやはや、世界って不思議ですね。
(実況)いやぁ、こんなカオスな回でもいい話にした三富士選手。今季のMVPも狙えますね。
(解説)えぇ、注目選手です。
(実況)では、また今度。実況は私、杉山と、
(解説)私、藤山でお送りしました。
――終わりのBGM――チャンチャララーんちゃんちゃん