生徒会長
生徒会長って響き的に、女の子キャラだと思った?
残念。なんの可愛げもない男キャラだったよ
こんにちは。横島宗です。
僕が相談部に来てからの、初めての相談がついこの前終わりました。
一応、部誌に記録されてはいるけど、実際読んで欲しくないので、とばしてもらって構わない。
いや、本当に。
僕が女装すると可愛いとか覚えとけばどうにかなる。
で、本題に入るけど。
『生徒会』って知ってるよね?
色んな学校にある、生徒だけで作られた、自治組織ね。
学校行事の取りまとめとか、色々やる人たちのこと。
生徒会という称号だけで、なぜか、自分が主人公になった気になるとこ。
副会長か、庶務がそれっぽいよね。
というか、多分、皆妄想したことあるでしょ?
会長(無口系完璧クーデレ)「私は、ここが、好きだから」とか
書記(眼鏡っこ)「もう、いい加減にしてください!○○君も悪ノリしないで!」
会計(天才ロリっ子ツンデレ)「はぁ…情けないわね。こんなこともできないの?アンタ」
庶務(活発クラスメイト)「あははー。○○君も男の子なんだねぇ」
などなど。
生徒会に入ったら、自分以外全員女―全部漢字だとわかりにくいな―っていうシチュエーションを妄想しちゃうでしょ?
わかるよ、その気持ち。でもね、実際は、天才ロリっ子ツンデレや、無口系クーデレがいたらね、相談部みたいなところで、変態として引き取られるのですよ。
うん。女の子が変態って、なんかいいよね。
でも、最近の女の子って、早い子は一ヶ月同じ人を好きになれないんでしょ?
あれ?迷信?
まぁいいや。僕はまず好かれないからね。
生徒会の話にもどるけど。
当然うちの学校にも生徒会はあるんだよね。
定員五人の、成績優秀者四名と、選挙で一名選ばれる制度の。
そういえば、僕は、陸上部を追い回していて、選挙の演説を聞いてないんだけど、どうだったんだろう。
あ、ちなみに、夏は水泳部を追い回すよ?当然。
閑話休題。
生徒会はそうして選ばれた、五人で構成されるんだけど。
ぶっちゃけて、その生徒会が、我らが相談部と、仲が悪いらしいんだよね。
今言ったことが、割と重要なんだけど、覚えといてね?
――で、今回の部誌は、僕と生徒会の邂逅の事。
今振り返ると、この時の僕は少し抜けていた。
変態部なんて部活がある学校の、その学校の生徒のトップ。
どんな部活より権力があって、全ての部活の管理をする所が。
普通な訳が無かったのだ。
これからここに綴る事を読んだならば、是非気を付けて欲しい。
良く覚えておいて欲しい。
『変態』は、すぐそこにいる―――。
「部長。なんでそんなに機嫌悪いんですか?」
部長の両眉が、生徒会室に近づくのと比例して、近づいていた。
生徒会室についたら、くっついてしまうんじゃないだろうか。
「ん…?あぁ――。そうさな。行けばわかる」
部長は僕の問いに、そんな曖昧な答えを返す。
いや、『行けばわかる』とか、そういう同意を求められる感じの答えは、変態同士には使えないんですが…。
僕は胸中呟きながら、部長の後に続く。
今、僕たち――部長、不二先輩、黒井さん、僕――は生徒会室に向かっていた。
一ヶ月分の、部活動記録を提出するために、だ。
「というか、、、もう4月も終わりなんですね」
忙しすぎて、あまり実感がなかったけど。
と、独り言じみた僕の声に反応したのは、黒井さんだった。
「そうだね。一ヶ月っていうのは、結構早いものだよね」
「黒井、気持ち悪いぞ」
「えぇ!?いきなり何!?雫さん」
「横島氏レベルだ」
「な…失敬な!!いくら部長でも、その発言は取り消して欲しいです!僕は黒井さん程、気持ち悪くないです!」
「失礼なのは君の方だよね…横島君。仮にも、俺は先輩だよ?」
「いつもニヤニヤしてる人と、同じなんて嫌です!」
「ニヤニヤ…っ!」
と、僕と黒井さんがそんなやり取りをしていると――
「五月蝿いぞ、虫螻ども。我が聖域の前で喚くな」
もう目の前にあった『生徒会室』というプレートの下がった扉から、
王――生徒会長がこちらを睨んでいた。
王。
彼を見たとき、なぜかそう感じた。
それは、なんと言えばいいか。
漫画風に言えばオーラというものか?
ただ、彼からは、『王』を感じた。
そして、その瞬間悟った。
部長が、生徒会を嫌っていた理由が。
趣味が支配だと豪語する部長。その部長が嫌うという場所ということは、つまり、
支配できない場所ということだ。
つまり、部長は、この『生徒会』という場を支配できないと、認めている――!
「けど」
それもそのはずだ。
なぜならば、
「――ん?貴様らは、相談部?だったかな?」
「そうだ。お前は、記憶力がないのか?生徒会長ともある人間が、そのような頭では、困るのだが?」
部長は嘲るように、生徒会長に言い放つ。
うわぁ、毒舌だなぁ。罵られたいなぁ。
部長に散々に言われた男は、しかし特に気にした様子もなく、
「いやな?我は部活動などというものに興味はないのだ。――それでも、貴様らには興味があってな。覚えていたのだ」
「それは光栄だな。で、いつ動物園に帰るのだ?」
「フン――。我も嫌われたものだな。しかし、それでこそ支配の愉しみが有るというものよ」
男は笑う。
その全てを見下ろすような彼の目線も、不思議と嫌味でなかった。――否、彼だからこそ嫌味ではないのだ。
『王』だから、当然のように受け入れてしまうのだ。
そして、多分彼女は、
「お前が私を支配?ハッ!何を見てそのようなことを言える」
『王』だからこそ、認められないのだ。
『王』が二人いることは、赦されないのだ。
「貴様さ。貴様は必ず、我が支配する」
「生徒会長風情が思い上がるなよ、身分を弁えろ」
二人の間に剣呑とした空気が漂う。
なんだろう?いつからこんな『王』やらなんやらの話になったんだろう。
僕的に、生徒会室の中から香る、女の子の匂いが気になるんだけど。
入っていいのかな?コレ。
とりあえず、生徒会長に聞いてみるか。
「すいません。中入っていいですか?」
「駄目だ。貴様、誰の許可を得て、我に言葉を投げる」
ギロり。
え?最近の学校って、生徒会長による恐怖統制なんですか?
というか、女の子見させてよ。触らないから。
「いや、女の子みたいですよ。そもそも、僕、生徒会に来た理由なんて、女の子オンリーですよ」
ちょ、どいて!足でいいから!足だけでも見せて!
「貴様…!ここに来た理由が、我で無いと?王を崇めにきたのではないと!?」
「崇めにきたのは本当です」
「フン――。虫けらのくせに身分を弁えて」
「夏服時の、大胆露出された生足をなぁああああああ!」
僕は殴りかか――じゃなくて、わぁー、足が滑ったぞー。
男は驚愕に目を見開いたが、そんなの知ったことではない。大事なのは避けてもらうことだ。
そして、僕の思惑通り、男は右足を後ろへ持っていき、避ける――じゃなくて、カウンターの拳。
「って、ちょ!!」
僕は、それをすんでのところで、身を捻り、躱す。
いきなりの体重移動で廊下に倒れ込んでしまったが、すぐ立ち上がった。次の瞬間、ダン!!と、少し前まで僕の頭があったところに、男の足が勢い良く叩きつけられる。
「虫螻風情が。我に触れようとは、貴様、死にたいのか…?」
生徒会長は、僕に殺意の籠った目を向ける。
やばい。すごく怖い。
そして、彼は、僕に手を伸ばしてきた。まだ、続ける気なのか、この人…!?
――だが、その手は僕に届くことはなく、
「王。そのへんにしとけ」
不二先輩の手に掴まれていた。
生徒会長は、殺意の籠った危険な眼で不二先輩を睨んだが、腕を掴まれていることもあってか、小さく舌打ちをして、怒りを沈めた。
その後、部長は、彼に無言で部活動記録を渡して(押しつけて)、去っていく。
僕もそれに続こうと、思った矢先――
「おい」
後ろから、生徒会長に呼び止められる。
いや、あの人背中越しでわかるほど敵意剥き出しなんですけど。
…僕、何かしちゃったかなぁ?
「はい?なんでしょう」
内心、そのまま立ち去りたかったけど、無視するわけにもいかないので、振り返る。
うわぁ、不機嫌だよ。ここまでわかりやすい人も、珍しいよ。
そもそも、僕も割と不機嫌なのにさぁ…。副会長のお姉さん風クーデレ(想像)とか書記のロリっ子ツンデレ(想像)とか庶務の守ってあげたくなる感じの年下(想像)とか会計のメガネっ娘(断定)を見たかったよ。
それが、なんの因果で恨み買われちゃうかなぁ……。
いや、まぁ、なんとなく分かるけどね?
「貴様、名はなんという?」
僕が、生徒会メンバー――もう最後らへんは断定だったけど――を想像していると、生徒会長は口を開いた。
これ、あれでしょ。貴様の名、覚えたからな。でしょ?
ああ、めんどくさい。男と絡む気はないんだけど。
まぁ、多分、この人、人の名前とかあんまり覚えてないだろうし――。
「黒井。黒井陽です」
「黒井だな。貴様の名、覚えたぞ」
彼は僕の予想通り、そう言い残し、生徒会室に戻ろうとする。
――あ、そういえば、名前聞いてないや。
一応、生徒会長の名前くらい、知っといたほうがいいよね。
「あなたの名前はなんなんですかー?」
僕の問いに、彼は、一旦歩を止め、顔だけをこちらに向け、
「王倫典。ここの王だ」
それだけ言って、生徒会室に入った。
いや、しかし――すごいね。
この学校は、本当。
変態だらけじゃないか。
僕は、そんなことを思ってから、先に行った部長達を追った。
黒井さんをみて、なにか重要なことを思い出しかけたけど、どうでもいい事だろう、多分。
さくしゃのあとがき
いや、やっと、王君出せました。
王君、私の中で、相当いじれるキャラなので、コメディとして早く出したかったんですよね。
ということで、これから少し、生徒会編になるかもしれません。
ならずに、新しい相談かもしれません。
どちらにしろ、生徒会とは長い付き合いになると思いますのであしからず?
いや…眠い