表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/32

ストーキングっ!

相談部に恋路さんが来た翌日。

部室で、黒井さんが、錦君について調べたことを発表していた。

錦滓(にしきおり)君。身長体重それぞれ176、56。交際経験豊富で、今はフリー」

その後もつらつらと、黒井さんは錦君について調べた事を言う。

怖いな、この人の情報網。

だが、

「黒井さん。錦君には彼女いますよ?」

「え?横島君、なんで?」

「いや、昨日偶然、帰り道で錦君を発見しまして。横に女の人がいたから、てっきり彼女かと」

「兄妹とかの可能性は?」

「いえ、河の橋の下で、大人の階段昇ってましたし」

どうにも噛み合わない。

昨日の女の人は、彼女じゃないなら、誰なんだ?

「…横島氏。話を続けろ」

部長の命令口調に、僕の脳髄は反応しちゃうんですううう!

じゃなくて、部長の命令に、ご主人様あああああ!

じゃなくて!部長の言葉に、僕は恐る恐る答える。

これは、錦君の秘密なんじゃないか?

まぁ、言うけどね。この一週間で学んだ事は、僕は部長の命令を基本的に、断れないということだ。

逆らったら、南先輩レベルまで調教されそうで恐いんだよね。

「いや、僕が言ったことが全てですけど。錦君も野外プレイとかするんだなぁ、と」

外でのプレイは、SMの基本だよね。

あと、南先輩。僕に期待を込めた目を向けないで。

僕もどちらかというとMだよ。

「…横島君はいつでもどこでも、常時変態だねぇ」

三富士が怠そうに僕に言う。

怠いんだったら、わざわざ変態言わないで欲しい。

これ昨日も言ったよね。

「ふむ。どうやら今回は、黒井の情報が役に立たないようだな」

「かなぁ。俺は基本人づてだからね。……そういえば、横島君。君ストーキング得意じゃなかった?」

黒井さんが僕の方を見る。

なんで知ってるんだ!?

「すごいよねぇ。地元の小学生を尾行するなんて。変態極まりないよね」

「ちょ…!なんで知ってるんですか!」

「…本当に、尾行してたんだ。冗談のつもりだったんだけど」

「横島君は、結局変態なんすね」

違う!

帰り道が同じだっただけだ!

「じゃあ、横島氏。君が錦滓について調べてくれ。見つかったら逃げろ。いざとなったら不二を呼べ」

部長の絶対命令により、僕の役職が決まった。

男をストーキングする男とか、もう洒落にならない。






放課後。

僕は2‐Dへ向かっていた。勿論、錦滓の尾行のためだ。

「畜生。こんな事するくらいなら、陸上部見学に行くよ…」

陸上部はいい。

僕を裏切らず、いつまでもスパッツで居てくれる。

僕が、遠いグラウンドの方を見ていたら、D組から、彼が出てきた。

錦君だ。

僕は、自分の携帯から、部長へと電話をかける。

今回の尾行は、あったこと全て報告するので、結局電話が一番なのだ。

「部長。錦君を見つけました。尾行します」

『あぁ、見つかるなよ』

僕の耳元から、くぐもった部長の声が聞こえる。

本来なら、それだけでもう興奮してしまうが、抑える。

「錦君一階におりました」

『そういうどうでもいいのはいい』

「錦君、家に帰るでしょう」

『お前にとっては、錦滓の行動はどうでもいいだろうけど、ちゃんとやれ』

分かっているなら、尾行なんてさせないで欲しい。

「依然、錦君には動きありません。…と、思ったら、グラウンドの方へ向かいました。どーぞ」

『そうか。錦滓はバスケ部じゃなかったか?どーぞ』

部長って、案外ノリいいんだな。

どーぞが返されたの初めてだよ。

というか、同じ学校の人に電話をかけるのなんて、小学校の連絡網以来だよ。

てへ。

とまぁ、僕のぼっち歴史は、置いといて。

錦君はどこに向かっているんだろう。

「部長、陸上部の誘惑に勝てません。どーぞ」

『死ぬか?』

「尾行します」

スパッツで死にたくない。

スパッツなら、ブルマで死にたい。

そんな僕らのやり取りに気づかず、錦君は突き進む。

――ん?あっちって、女子陸上部の部室じゃないか?

更衣室じゃなく?

部室になんの用だろう。

『横島氏。大抵の人間は、更衣室より部室の方が、要件はあると思うぞ』

耳元から聞こえる部長の声。

また僕は声に出していたのか。

もう、癖だな。

本当。

「錦君が、女陸部室にはいりました。どーぞ」

『窓から中覗け。どーぞ』

それやったら、僕完璧に不審者だよね。

僕は女陸部室の窓枠に手をかける。中々、カーテンの隙間がない。

と、やっと隙間を見つけたとき、部室から錦君が出てきた。

「中見えませ――錦君と、女の子が出てきました。どーぞ」

『昨日の女か?どーぞ』

「違います。今日の子は貧乳です。どーぞ」

『………』

部長からの返事はなかったが、とりあえず気にしないで二人を追う。

二人は、昨日の時のように、また暗がりへと入っていった。具体的には、体育館裏。

「二人が、体育館裏に入りました。どーぞ」

『体育館裏?それはずいぶんと変なところに』

「僕の予想じゃ、錦君は、今日も大人の階段を、エスカレーターする気です」

『まぁいい。これまで通り尾行しろ』

え…?ここまで来たら、もうどうしようもないでしょ…?

今日もあの謎の敗北感を、味わいそうだよ。

今日も悠を抱きしめられないよ。

……しかし命令に逆らうわけにもいかないので、物陰から様子を見る。

見なければ良かった、と公開したのは言うまでもないが。

「部長。僕、陸上部の見学行っていいですか」

『良くない。ちゃんと報告しろ』

「ねちょねちょしたキスしてます」

『女の方、誰かわかるか?』

「分かりませんけど……。あ、祐子さんですね。小泉祐子」

彼女が着ている、練習着に書いてあった。

僕、これでも目がいいんだ。

『ふむ。…黒井、小泉祐子を調べろ』

携帯から、微かに部長と、黒井さんの声が聞こえる。

くそぅ。こっちは言い表せないほどの敗北感を味わっているのに。

あの二人。そろそろ本気で、本番行きそうだし。

尾行とか、僕。そろそろ本気で、生徒指導室行きそうだし。

誰かに見られたら、僕完璧にアウトじゃん。

『横島氏。聞こえるか?』

「聞こえます。帰らせてください」

『帰るな。死ぬか?』

「ここに居ても死にます」

『いいから聞け。早くその二人をとめろ』

「え?なんでですか?僕恋人同士の逢瀬を邪魔するのは、もう嫌なんですけど」

まぁ、錦君には何かあるようだけど。

『違う。そいつらは恋人じゃない。現に』



『小泉祐子には、彼氏がいる』



カレシガイル。

カレシガエル。

グワ。

『変な現実逃避をするな!なぁ、小泉祐子と、錦滓は和姦か?』

「和姦なんて使ってはいけないざます!下品ですわ!」

『横島氏、落ち着け。ちゃんと見ろ。小泉祐子は嫌がってないか?』

「……ッ!?」

僕は、いまだ体育館裏で、ねちょねちょしている二人を見る。

確かに、もう何分間か二人はねちょっている。それっておかしくないか?

それに、僕には分かる。

小泉さんが、レイプ目だということを!

レイプ目とは、焦点が合わない、悲壮感に溢れた目です。

詳しくはGoogleしてください。

『分かったかい?分かったなら止めるんだ。急げ。横島氏』

そういう部長の声は焦っていなかった。

多分、小泉祐子のことなどどうでもよいのだろう。

さすが相談部部長である。

「くくく。ならば全国の貧乳ファンのために、僕が一肌脱ごうじゃないか!!」

僕は物陰から出て、二人の方向へ向かう。

そう、《あの言葉》を言うために。

これで、この言葉を使うことも無くなるだろう。

だから。

最後だけ、僕に力を貸してください。

それは「こんにちわ」のように。

それは「さようなら」のように。

フランクに

フレンドリーに

ジェントルマンを気取って

優しく

元気に

全てを包み込むように。

全てを超越して。

――ふっ、まさか、こんな使い方をするとは思っていなかった。

この僕が、人のために、この言葉を言うだなんて。

さぁ、覚悟を決めろ。

アイアンクローと、右ストレートに気を付けて。

いざ……ッ!!

「交ぜて!」








アイアンクローも右ストレートも来ませんでした。

ビンタが来ました。


さくしゃのあとがき

ネタバレあるんで、本文を読んでからお読みください。



ただ「交ぜて!」を使わせるがため、この話を書きました。

しかし、錦君、典型的な最低野郎になりそうですね。

私のリア充へのどす黒い感情からとかじゃないです。

本当です。


さて、本編の話ですが、

この依頼、前置きが妙に長いです。

ですが、依頼解決は、実際二話位で終わると思います。

思うなので、確定はできませんが。



では、ここまで読んでくれた人に最大限の感謝を。

また後日、お会いできたらお会いしましょう。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ