【007.変化】
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かなりの時間を歩いた。
それなのに変化がない。
変化したのは、オレの歩いてきた跡を示す白い点ばかり。
休憩場所も見当たらない。
歩きながら、水を飲んだ。
糧食は、最初のひとつ以外に手をつけずにいる。
3日分の食料だといっても、ここの一日の時間もわからないのに、自分の腹具合で食べていたら、すぐになくなってしまうだろう。
腹が減っても我慢我慢。
こんなサバイバルはやったことはないが、似たような状況は何度かあった。
ほとんどは、逃げるような状況だ。
警察やらヤクザやら女やらから。
たいていは、準備ができた。
逃げ込む先も下調べができていた。
その点は違うか。
食料の確保もクレジットの確保もだ。
どちらも十二分に逃走期間を耐えられるくらいに確保していた。
この点も違うな。
今回は、食料はあっても、どのくらいの期間になるか、わからない。
少なくても彼らは事前に着陸場周辺を調べているはずだ。
ビンゴで着陸場を決めているということは、着陸ポイントは無作為ではない。
少なくても無事に着陸できる場所を割り振っている。
海や湖では、脱出することは困難だろうから。
そんなことを考えながら、前進を続けていると、身体に変化を感じた。
風だ。
今までも感じてはいたが、軽く肌をなでる程度だった。
だが、今は強く吹き付けてきている。
しかも潮の香りまで混ざっていた。
ということは、海が近いのだ。
前方をしっかりと見てみると、樹木が途切れているのがわかった。
思わず気がせって、走り出してしまいそうだった。
“慌てるな”と自分に言い聞かせる。
慌てなくても、あの先がどうなっているかは、すぐわかる。
今までの経験上、慌ててもいいことはなかった。
必ず、嫌なことが起こったのだ。
とにかく、樹木の切れ間まで、今までと変わらずに前進した。
潮風は、強さを増した。
樹木の切れ間に来た。
海の青と空の青が、水平線で区切られた風景が目に入る。
やはり走らずに正解だった。
切れ目の先は、空中だった。
切れ目まで3mほどだろう。
そこから見える風景から、それなりの高所であるとわかる。
走っていたらそのまま墜落していただろう。
想像するに、断崖絶壁。
その先は、岩場か浅瀬。
落ちれば、死ぬ。
よしんば、海中に飛び込んだとしても、這い上がれる場所があるとも思えない。
バックパックを下ろして、樹にもたせかけ、腹ばいになった。
草や低木をかき分けながら、匍匐前進して、その切れ間を覗き込んだ。
その光景に睾丸が縮み上がる。
身体の中に潜り込んでしまった。
恐怖からだ。
断崖絶壁で、下には崩れた岩肌、樹木や草がその岩肌にしがみつき、波にぬれている。
岩肌が侵食されて、崩れたのだろう。
身体の下はしっかりしているが、波打ち際が見えていない。
ここもいずれ、侵食で崩れる運命なのだろう。
見回してみたが、同じような景色だけだ。
少なくてもこっち側に、人工物は見えないし、下に降りていける場所もない。
オレは腹ばいのまま、後退し、バックパックのところに戻った。
それから立ち上がり、バックパックを背負いなおす。
さて、右に行こうか、左に行こうか。
下を覗いた感じでは、右は延々と同じ感じだった。
左は、カーブを描いていて、その先は見えていない。
オレは、左へと進むことにした。
前進しながら考えた。
ここは大陸なのかもしれない、と。
島ならあんな侵食はないだろう。
それにこの土地の平坦さも大陸なら考えられる。
樹木の種類の少なさは気になるが。
日が暮れはじめた。
あいも変わらず、道なき道を進んでいた。
このまま進んでも先が見えない以上、ここらで野営の準備をしておかねばなるまい。
今から着陸場に戻るのは無理だ。
つけてきた印は、暗くなったら見えなくなってしまい、樹木の中で迷ってしまうのがオチだ。
それに距離的な問題もある。
とにかく、落ち着いて、寝られる場所を作らねばならない。
バックパックを置いて、サバイバルナイフで、草木を刈り、寝られる空間を作る。
その場所に刈った草を敷く。
そのままだと、残った茎に身体を刺され、寝ていられなさそうだったからだ。
日が暮れてしまう前に、その作業を終えた。
バックパックから水の入ったボトルをひとつ取り出して、枕にする。
もうひとつのボトルと糧食ひとつで、夕食だ。
海の方を見ると、無数の星が輝いていた。
それが海面に反射している。
少し気温が下がってきていた。
昼もそれほど、暑さを感じずにいたから、下がりすぎることはないと思うが、若干心配だ。
気温が下がったら、草をもっと刈って、身体中にかけなくちゃならないだろう。
食事を済ませてから、草を刈ることにした。
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