【056.視察・1】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
レフティーたちが旅立って、1週間もすると、ようやく前のように生活できるようになった。
それまでは、眠りにつけず、眠っても浅い日が続いていた。
ペットを失った飼い主がかかる“ペットロス”という病だとわかった。
時間が解決してくれるはずだ。
それにレフティーたちは、死んだわけではない。
生きているのだ。
北方の〈アーズ〉の研究者に、彼女たちが戻ったかどうかを訊こうとも思ったが、たくさんの渡り竜の中から、3人を見つけるのは至難の業だろう。
いくら認識票をつけているにせよ、それを確認してまわるわけにはいかないのだから。
考えてみてもはじまらない、と諦めて、ようやく前向きになることができた。
そんなある日。
事務室に電話があった。
室長に代わる。
「はい、はい、はい。では、そのように」
電話を切ると、室長がオレを見た。
「パオロ、ちょっと来て」
「はい」
なんだろう?
彼女のデスク前に立つ。
「陛下からの御指名よ。今度の視察に同行して欲しいって」
「視察に? なぜ私が?」
「あなたの知識が必要らしいわ」
「知識?」
「詳細はのちほど」
詳細は、視察団の団長が来て、説明された。
「〈エルゼンタール〉? 確か、王国南部に接する国でしたね」
「ええ。小さな国です。王国とは、長らく敵対関係にあり、国境では小競り合いが続いていました。現在は停戦状態です」
「そんなところへ視察を?」
「ええ。〈エルゼンタール〉の王からの招待です」
「危険はないのですか?」
「それはなんとも。先王が亡くなり、新しい王になったので挨拶を、と言ってきました」
「〈エルゼンタール〉国内で?」
「国境のすぐ近くです。もちろん、どんな危険があるかわかりませんから軍隊も一緒です。すでに向こうの了解を得ています」
「評議会からも誰かが?」
「ええ。主要メンバー3人が参加します」
その日は、雲ひとつない快晴だった。
城内のひと部屋に視察のメンバーが集まった。
陛下をはじめとする王室3人、評議会から3人、文化院からはオレひとり。
それから視察団団長と警護を務める軍の将官。
それぞれの紹介が行なわれた。
全員が緊張していた。
相手は、停戦しているとはいえ、敵対関係にある国王とその配下なのだから
城からは、特別な警護をつけずに出た。
軍の飛行場に到着すると、全員がヘリコプターに乗り込む。
ヘリコプターは、前と後ろに回転翼のあるツインローター型だ。
国境まで飛んでいくのだ。
そこで軍隊と合流して、指定先に向かう。
前線基地に着陸するヘリコプター。
上空から見たら、兵士たちの隊列が見てとれた。
オレたちを待っていたのだ。
彼らのそばには、幌のついたトラックが、20台並んでいる。
別の車も待機している。
装甲車のようだ。
ヘリコプターはその車のそばに着陸した。
兵士が身をかがめながら駆けてきて、ヘリコプターのドアを開けた。
その兵士の指示に従って降りて、兵士と同じように身をかがめて、車へと走った。
車のドアが開き、その中に陛下とともに乗り込む。
視察団団長と将官も一緒だ。
少々せまい。
王室の3人と議員3人は、それぞれ別々の車だ。
全員がシートベルトを締めるのを確認したドライバーの兵士が、無線で報告を入れる。
しばらく待たされた。
出発する。
前方のフロントガラスの前にある装甲板の隙間から、トラックが見えた。
兵士たちを乗せたトラックだ。
どうやら装甲車はトラックに前後をはさまれているらしい。
左右の窓にも装甲板があり、そこからもトラックが見えた。
前後左右をトラックに囲まれている。
陛下を乗せているのだから当然だろう。
装甲車の乗り心地は決してよくない。
それでも陛下は文句ひとつ言わない。
読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)




