【005.髑髏(どくろ)】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
気がついたとき、身体を覆っていた圧迫感はなくなっていた。
無重量感もない。
身体を下に押し付けている加速度は、1Gほど。
ステーションで感じていた重力と、ほとんど同じだ。
移動しているようすはない。
ということは、眠っているあいだに惑星〈スータン〉に到着したのか?
いったい、いつ睡眠薬を処方されたのだろう?
暗闇の中、どうしろというのだ?
そういえば、オレは、マブタを開いているのだろうか?
マブタに力を入れてみる。
目を押さえられる感覚。
ということは、マブタは閉じているわけだ。
開いてみよう。
どうせ、暗闇だろうが。
開いてみて、暗闇ではないことに気付いた。
それがなければ、暗闇だっただろうし、どうすればいいかもわからなかったはずだ。
目の前には、壁があり、文字列が緑色に発光していた。
それほどの明るさはない。
おそらく最初から、その明るさだったのだろう。
球体に入ったときには、見えていなかっただけで。
それとも時間とともに、明るさを増すのだろうか?
とにかく、その文字列を読んだ。
なんのことはない、球体からの出方を示しているだけだ。
その指示に従う。
さっさと外に出よう。
バーから手を離す。
それから折り曲げている足で、壁を押す。
壁が押されて、後退していく。
そのまま、押し込む。
不意に抵抗がなくなり、外れたと思った次の瞬間、光に満たされ、思わず、マブタを閉じた。
マブタの裏が、緑色を示している。
まぶしさに焼かれたのだろうか?
変化を待つ。
外からの音が聞こえている。
鳥だろうか? それとも動物だろうか?
ささやかながら、樹木の葉がこすれるような音も聞こえてくる。
マブタの裏に変化はない。
とすれば、焼けたのではなく、外光が緑だということだろう。
そっとマブタを開いてみる。
光の円の中に、自分の両脚が見えた。
光は、やはり緑色。
明るさに慣れてくると、それが植物の葉の色だとわかる。
その円の内側に自分の荷物が見えた。
とにかく、外に出るか。
身体をなんとか押し出してみる。
背中で這うように。
球体の穴から出た。
まわりは、草だらけ。
それでも背丈は足首までしかない。
だが、まわりを見回すと、この一角だけがそうなっているだけで、四方15mの外は、樹木に占領されていた。
着陸用地といったところだろうか。
草の先が刈り取られている。
定期的に刈られているらしい。
振り返って、着陸船を見ると、白かった船は真っ黒に焼けていた。
大気圏突入の凄まじさの結果だろう。
こんなボールで、よく無事だったものだ。
船の向こう側を見ると、1本の樹の根元にパラシュートが絡まっていた。
着陸したあとで、切り離されて、風に飛ばされたのだろう。
さて、これからどうしようか?
ここが着陸用地だとして、誰かが来るのを待つか?
だとしたら、とっくに誰かが来ているはずだ。
それに着陸船が自分のしかないのが、おかしい。
過去に何度も囚人が送られているはずなのだから、ほかにもあるはずだ。
だが、自分のしかない。
とにかく、まずは、荷物を確認すべきだろう。
バックパックを開ける。
出てきたのは、3日分の水と食料、それにサバイバルナイフ。
それに薬が一錠。
パックされていて、そのパックの表面には、髑髏マークが描かれ、それが毒薬であることが示されていた。
“いざとなったらそれを服用して、死ね”と言っているわけだ。
ご親切なこって。
読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)




