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落とされ人  作者: カーブミラー


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45/60

【045.客人】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 文化院の入り口に現れた女性に、室長が驚いて、イスから立ち上がる。

「陛下」

「よい。渡り竜を保護したそうだな」

「はい。パオロが保護しました」

 女王がオレを見る。

「ケガをしたのか?」

「はい。左の翼の骨が折れていました。どうやら壁にぶつかった際に骨折したようです」

「手当ては?」

「骨接ぎをしました。翼を広げないように包帯を巻いてあります」

「そうか。おとなしいのか?」

「今のところは。食欲も旺盛で、骨折以外、健康状態はよさそうです」

「見せてはもらえまいか」

「すぐにでしょうか?」

 陛下は付き添っている女性を見た。

 女王のスケジュール管理をしている秘書だ。

 その女性がこちらにうなずく。

「わかりました」


「ほぉ、これが」

 オレの部屋に女王を連れてきて、レフティーを紹介する。

 レフティーは、立ち上がって、胸を張った。

 女王は、レフティーのそばに寄り、顔を近づけた。

 レフティーが、低く鳴いた。

 目つきが鋭い。

「陛下、どうやら気が立っているようです」

「わかった」

 女王は、近づけた顔を上げ、少し離れた。

「昔話に出てくる竜とは違うな」

「昔話の竜は、人が想像して描いたものがほとんどです。それに2種類の竜が描かれていました」

「2種類?」

「はい。ひとつは、この渡り竜のように翼が生えており、前足もあります。もうひとつは、ヘビのような身体で4本の足がありますが、翼がないのに飛ぶことができるそうです。明らかに空想上の動物ですね。大きさも巨大ですし」

「そうか。食用の卵を産む竜を見たことはあるが、全然違うな」

「あれは、長距離を飛ぶタイプではありませんからね。渡り竜のように大きな翼も必要としません」

「なるほど。普段、暮らしているのは、北部だと聞いた。なのになぜ渡ってくる?」

「北部では寒すぎて、子どもを産み育てるには、厳しいのだと思います」

「それならば、こっちに住み続ければいいだろうに」

「おそらく危険があるのでしょう。北部ならそうした危険が少ないのではないでしょうか」

「そうか。しかし、きれいな目をしているな」

「はい。みなが、ガラス玉のようだ、と」

「うむ、そのとおりだ。このまま、飼うのか?」

「骨が元通りになったら、放してやるつもりでいます。野生の竜ですからね」

「そうか。どのくらいで治る?」

「わかりませんが、ひと月ほどかと」

「わかった。エサ代・治療費は王室がもつ。請求するといい」

「いえ、そのような」

「通りがかりとはいえ、城でケガをしたのだ。その治療は王室の責任となる。私の客人として対処する。よいな」

「かしこまりました」

 女王は、秘書にうなずくと、オレの部屋から出ていった。

 オレは、女王が廊下に姿を消すまで見送ってから、レフティーのそばに戻った。

「レフティー、おまえは、女王の客人だとさ」

 レフティーは、ヒザをたたんで、腰を降ろした。

 それから鼻息をひとつ吐き出した。

 まるで、諦めのため息のようだった。

 それを見て、オレは笑った。

 レフティーが、ピーピーと抗議の声を上げる。

「すまんすまん。さて、仕事に戻るとするか。おまえは、おとなしくしてなさい。いいね」

 オレは、レフティーの返事を待たずに、部屋を出て、仕事場に戻った。

 室長に報告する。

「よかったわね。エサ代もバカにならないでしょ?」

「そうですが、気にするほどの負担ではありません」

「いいじゃない。陛下の客人をおもてなしできるのは、名誉なことだわ」

「その分、気軽ではなくなりましたよ」

「そうね」

 彼女は、そう言って、クスクスと笑った。


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