【040.春の市場】
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春の王都は、活気に満ち溢れていた。
城下の市を覗きに外出した際に、それを感じた。
市で売られているのは、さまざまな動植物とそれを加工した食品、服飾品、食器や道具類、ほかにもたくさんのものが売られている。
それぞれの店主たちの顔は明るく、声も張りがあった。
そこに来ていた客たちもそうだ。
値段交渉も冗談交じりだ。
ところどころにまだ雪が残っていたが、そう長くはもつまい。
オレは、ちょっとした食料を手に入れ、ファーストフード的なものを食べながら市を楽しんでいた。
テオとマリーンも一緒に出てきたが、自由行動している。
昼食を一緒に取るつもりで、集合する場所と時間を決めて。
収穫し終えて、集合場所のレストランに入った。
店内に入ると、涼しさに迎えられた。
外は意外と暖かだったのだ、と気付く。
汗をかくほどではなかったのだが。
ウエイターに、あとからふたり来ることを伝え、先に自分の分のドリンクを頼んだ。
席は、窓辺のテーブル席を選んだ。
ドリンクが運ばれてきた。
それをひと口、飲む。
グラスに氷がぶつかって、涼しい音が響く。
窓の外の人の流れを見る。
ほどほどの混雑。
子どもの姿が見えた。
まわりの大人たちは、その子どもたちの姿を見つけると、明るい笑顔を見せた。
子どもたちは、ワーキャーと騒ぎながらあちこちを走りまわっている。
「ああ、王室の子どもたちですね」
その声に振り向くと、テオがちょうどテーブル席に来たところだった。
「あれが、王室の子どもたち?」
初めて見た。
「ええ。子どもはみな、王室に入りますからね。城下に出る許可が出たんでしょう」
「許可が必要なのか」
「ええ。といっても何があるってわけでもないんですがね。やっぱり人数確認は必要でしょうし」
「ああ、なるほど。ところで収穫はあったかね?」
彼が、両手の手荷物を持ち上げて見せた。
顔も満面の笑みだ。
テオもウエイターにドリンクを頼んだ。
それから席に座る。
しばらくするとマリーンも入ってきた。
彼女の両手にも収穫物がぶら下がっていた。
3人で食事を注文して楽しむ。
レストランを出たところで、腰に衝撃を受けた。
ちょっとよろける。
「あっ、ごめんなさい!」と下から声がした。
見ると10歳前後の男の子だった。
赤い髪を短く刈り揃えた端正な顔立ち。
こちらを見上げ、許してもらえるか、と不安げだ。
少し離れたところにほかの子どもたちが、こちらのようすを伺っている。
「はしゃぐのはいいが、前は見ないとな」
「はい。本当にすみませんでした」と礼儀正しく頭を下げる男の子。
「もういいよ。さぁ、みんなと楽しみなさい」
男の子は、顔に笑みを浮かべて、「はい」と返事をして、仲間たちの方へと駆けていった。
ほかの子どもたちと合流すると、こっちに手を振ってくれた。
小さく手を振り返す。
「子ども、好きなんですか?」とマリーン。
「どちらでもあるな」
「私は」とテオ。「苦手です。騒がしくて」
「あはは。だが、元気なのはいいことだ。イタズラをされてはかなわんがね」
「同感」
「私は、好きです」とマリーン。「一緒に遊ぶと童心に戻れるんで」
「わからんでもないな。さぁ、行こう」
オレたちは、城に戻った。
途中、ツマミ食いしながら。
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