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落とされ人  作者: カーブミラー


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40/53

【040.春の市場】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 春の王都は、活気に満ち溢れていた。

 城下の(いち)を覗きに外出した際に、それを感じた。

 (いち)で売られているのは、さまざまな動植物とそれを加工した食品、服飾品、食器や道具類、ほかにもたくさんのものが売られている。

 それぞれの店主たちの顔は明るく、声も張りがあった。

 そこに来ていた客たちもそうだ。

 値段交渉も冗談交じりだ。

 ところどころにまだ雪が残っていたが、そう長くはもつまい。

 オレは、ちょっとした食料を手に入れ、ファーストフード的なものを食べながら(いち)を楽しんでいた。

 テオとマリーンも一緒に出てきたが、自由行動している。

 昼食を一緒に取るつもりで、集合する場所と時間を決めて。

 収穫し終えて、集合場所のレストランに入った。

 店内に入ると、涼しさに迎えられた。

 外は意外と暖かだったのだ、と気付く。

 汗をかくほどではなかったのだが。

 ウエイターに、あとからふたり来ることを伝え、先に自分の分のドリンクを頼んだ。

 席は、窓辺のテーブル席を選んだ。

 ドリンクが運ばれてきた。

 それをひと口、飲む。

 グラスに氷がぶつかって、涼しい音が響く。

 窓の外の人の流れを見る。

 ほどほどの混雑。

 子どもの姿が見えた。

 まわりの大人たちは、その子どもたちの姿を見つけると、明るい笑顔を見せた。

 子どもたちは、ワーキャーと騒ぎながらあちこちを走りまわっている。

「ああ、王室の子どもたちですね」

 その声に振り向くと、テオがちょうどテーブル席に来たところだった。

「あれが、王室の子どもたち?」

 初めて見た。

「ええ。子どもはみな、王室に入りますからね。城下に出る許可が出たんでしょう」

「許可が必要なのか」

「ええ。といっても何があるってわけでもないんですがね。やっぱり人数確認は必要でしょうし」

「ああ、なるほど。ところで収穫はあったかね?」

 彼が、両手の手荷物を持ち上げて見せた。

 顔も満面の笑みだ。

 テオもウエイターにドリンクを頼んだ。

 それから席に座る。

 しばらくするとマリーンも入ってきた。

 彼女の両手にも収穫物がぶら下がっていた。

 3人で食事を注文して楽しむ。


 レストランを出たところで、腰に衝撃を受けた。

 ちょっとよろける。

「あっ、ごめんなさい!」と下から声がした。

 見ると10歳前後の男の子だった。

 赤い髪を短く刈り揃えた端正な顔立ち。

 こちらを見上げ、許してもらえるか、と不安げだ。

 少し離れたところにほかの子どもたちが、こちらのようすを伺っている。

「はしゃぐのはいいが、前は見ないとな」

「はい。本当にすみませんでした」と礼儀正しく頭を下げる男の子。

「もういいよ。さぁ、みんなと楽しみなさい」

 男の子は、顔に笑みを浮かべて、「はい」と返事をして、仲間たちの方へと駆けていった。

 ほかの子どもたちと合流すると、こっちに手を振ってくれた。

 小さく手を振り返す。

「子ども、好きなんですか?」とマリーン。

「どちらでもあるな」

「私は」とテオ。「苦手です。騒がしくて」

「あはは。だが、元気なのはいいことだ。イタズラをされてはかなわんがね」

「同感」

「私は、好きです」とマリーン。「一緒に遊ぶと童心に戻れるんで」

「わからんでもないな。さぁ、行こう」

 オレたちは、城に戻った。

 途中、ツマミ食いしながら。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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