【032.誰もがみな】
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“過去は過去”。
それがこの惑星での常識だ。
だからまわりのみんなが、何をして、ここに落とされたのか、わかりにくい。
表情を見る限り、犯罪者には見えない。
激情型の人間も少ない。
精神病患者もいない。
どう見てもふつうの人ばかりだ。
オレのような詐欺師もいそうにない。
同業者ならひと目でわかるのだが。
自分の部屋で、テオにそう話したことがある。
テオも賛同する。
「そう思いますよね。誰もが犯罪者なんでしょうけど、どう見てもふつうなんですよね」
「誰かが自分が犯した犯罪について、ほのめかしたりはしていないのかね?」
「どこにいたとか、どこに行ったとか、仕事は何をしてたのかとか、その程度は話してくれますが」テオは首を振った。
「ふむ。何をやって、犯罪者になったのかは、誰も話したがらないか」
「ええ。酒場で酔って、“自分は無実の罪で投獄されたんだ”という人を見たことがありますがね」
「ここでの犯罪者は、どうなんだね?」
「ここでの、ですか? ふつうに処罰されていますよ。警察もあるし、裁判所もあります。裁判官もいれば、弁護士もいます。検事だってね」
「ほかの惑星と同じように?」
「ええ。ただし、過去の犯罪はよっぽどの理由がない限り、掘り出されることはありません」
「なるほど。“過去は過去”か」
「そういうことになります」
テオの過去もまた、聞き出せないままだった。
それでいいのかもしれない。
全員が、〈落とされ人〉なのだから。
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