表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落とされ人  作者: カーブミラー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/40

【030.依頼】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 室長からの指示で、指定の場所に向かった。

 城内の中心地に近いエリアだ。

 そのあたりは、近づいたことがない。

 なぜなら王室関連施設だからだ。

 厳重な警戒が敷かれている。

 指示されたドアをノックした。

 すぐにドアが開く。

 ドアから顔を出したのは、50代後半の男性。

 白髪の交じるこげ茶色の髪は縮れ毛で、それを後ろでまとめている。

 肌は、黄色人種のものだ。

 そのこげ茶の瞳が、オレを値踏みする。

 オレは、自分の名前を告げる。

 彼は、表情を緩めて、微笑み、中へと通した。

 部屋の反対側に開け放たれたドアがあり、その向こうには、緑の庭園が見えた。

 彼が先に立って、そのドアをくぐる。

 オレもあとに続く。

 庭園には、4人がけのテーブルがひとつと、ふたつのイス。

 テーブルの上には、カトラリーがふたり分用意されている。

 片方のイスを勧められ、腰を落ち着けた。

 つまり、誰かと昼食を一緒に取ることになるわけか。

「しばらくお待ちを。何かお飲みになられますか?」

「常温の水があれば」

「すぐにお持ちいたします」

 彼が下がるのを見送って、まわりを見渡す。

 別のドアがいくつかある。

 庭園としては、広くはない。

 緑は、壁際に低木が配されている以外は、芝生だけだ。

 低木には、花が咲いていた。

 赤紫の小さな花が、咲き乱れている。

 彼が戻ってきて、オレの前に水の入ったグラスを置いてくれた。

「ありがとう」

「いえ」

 彼は、その場から離れ、ドアのひとつに入っていった。

 オレは、グラスから水を飲む。

 冷えた水もうまいのだが、空っぽの胃に入れるには、ショックが大きい。

 それで常温を頼んだのだ。

 ジュースやアルコールという選択肢もあったが、どんな昼食になるかわからないため、舌を下手に刺激したくなかった。

 それはともかく、相手は誰だろう?

 その相手の話も気になる。

 まぁ、こういうときは、何を考えても、何を心配しても無駄なのだが。


 水もほとんどなくなりかけたころ、さきほどの彼が出てきて、別のドアへと入っていった。

 そこから彼と一緒に出てきたのは、ひとりの少女だった。

 オレは驚いて、イスから立ち上がり、右手を胸に当て、頭を垂れた。

 その少女は、女王ノーラだったからだ。

「陛下」と声をかける。

「久しぶりだな、モーガン殿。息災であったか?」

「はい。陛下も御元気そうで何よりです」

「うむ。まぁ、堅苦しいのはなしにしよう。座るがよい」

「ありがとうございます」

 陛下のイスを50代後半の男が引き、そこに座るのを待って、オレも座る。

 男はひとつのドアを開け、中に声をかけた。

 するとそこからふたりの男女が出てきた。

 給仕役だろう。

 手に持った皿を目の前に置く。

 スープだ。

「まずは、食事だ。話はあとにしよう。腹ペコでな」と陛下が微笑む。


 デザートを終えると、紅茶が配られた。

 陛下は、目に見えて、くつろいでいた。

 給仕たちは、壁際で待機している。

「ルーカスから聞いたぞ。いろいろと役立っているそうだな」

「そうであればと思っております」

「生活に不便はないか?」

「これといって。あれば、すでに文句を言っております」と笑顔を見せる。

「それもそうだな。外出はしてみたか?」

「二度ほど。街を軽くぶらついた程度です」

「そうか。私もぶらつきたいが、身分が邪魔をしていてな」

「一度も?」

「いや。城を出る際には、城下を通るのだが、ほぼ素通りだからな」

「ああ、なるほど」

 おたがいに紅茶を飲む。

「ところで」

 ようやく本題に入ってくれるか。

「はい」

「おまえの知識の中に、薬の作り方はあるか?」

 すぐに思いつかず、リストから検索する。

 見つかった。

「はい、ございますが」

「そうか。よかった。じつはな、我が国では、いや、ほかの国でもそうなのだが、必要な薬が手に入らずに、命を落とす患者が多くてな」

「医者がいても薬がなくては、意味がありませんからね」

 詐欺で医者になったこともある。

「そうなのだ。だが、この惑星では、薬の入手は難しい。なんとかしたいのだが、手にできるもので薬になるのは、ほんの一部だ」

「なるほど。そうなると、いろいろなものから薬効を調べたりしないといけませんね」

「うむ。人間の身体でわかるものは、限度があるし」

「ふむ。人工的に作り出さねばならないものもありますね。何か早急に必要な物はございますか?」

「抗生物質だな。ほかにもいろいろとあるが」

「わかりました。ルーカス室長と相談して、検討してみることにいたします」

「そうしてもらえると助かる。薬があれば、ほかの国との交渉にも使えるしな」

「確かに。いままでに流行り病とかはなかったのですか?」

「先王が存命中に一度な。死亡者はなかったが、後遺症で苦しんだそうだ」

「そのときには、薬は何も?」

「そう、何もなかった。医者は対処療法でなんとかしのいだが。また発生したらどうなることか」

「御心痛、お察しいたします」

「うむ」

 それから少し仕事の話をして、陛下は出ていかれた。

 御昼寝をされるのだろう。

 オレもその場をあとにした。


 文化院の部屋へと戻って、室長に報告した。

「そうね。何が必要になるか、まとめてもらえるかしら?」

「わかりました」

 オレは自分の席につくと、すぐさま記憶から薬学関連の情報を調べ、未知の動植物や鉱物から分子を分析する装置や遠心分離機など、製薬の各工程に必要な機材や知識をコンピューターに書き出した。

 それを室長に見てもらう。

 彼女は、首を振った。

「おそらく、ほとんどを一から作り出さないといけないわね」

「そうでしょうね」

「作れると思う?」

 それだけの知識があるか、と彼女は訊いているのだ。

 今までにも知識が足らなくて、できなかったものもあるのだ。

「できます。すでにある技術を組み入れれば」

「そう。なら準備をお願い。必要な人員を手配するわ」

「わかりました」


 必要な知識を記憶からイメージとして取り出し、それをテオが文字データ化していく。

 オレは、今ある技術をチェックして、どこにそれを使うのかを調べておく。

 そうした作業は、もう手馴れたものになっていた。


 プロジェクトが発足され、資料が引き渡された。

 あとは、彼らに任せればいい。


 オレとテオは、それまでやっていた仕事に戻る。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ