【003.永遠の眠り】
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行列が長く続く。
オレは、その中のひとり。
まわりには、看守たちが全身ブルーの簡易宇宙服とヘルメットを着用して、等間隔に立っている。
その手には、ハンドガン。
いつでも撃てるように構えている。
~'15.06.11(木)~
銃口の先は、囚人であるオレたちだ。
どうやら、一時的に眠らせるためのパラライザーではないらしい。
一度だけで永遠の眠りにつけそうだ。
行列が進んでいくと、左側にひとりの囚人が腹ばいに倒れていた。
ピクリッとも動かない。
息もしていないようだ。
それもそのはずだ。
その囚人の背中には、大きな穴が開いている。
しかもまだ焦げてくすぶっている。
暴れたようすはなかったが、見せしめに殺されたのかもしれない。
つまり、“死にたければ、いつでも撃ってやるぞ”と言っているわけだ。
肉の焼けるニオイをかいで、ゆうべ、食べたステーキのニオイを思い出す。
それとともに、目の前のヤツが、屈み込んで嘔吐した。
同じものを想像したに違いない。
看守は、何も言わないが、銃口をオレに向け、前進するようにとハンドガンを振る。
オレは、そいつに蹴りを入れて、立たせ、前進させた。
看守たちの表情はわからない。
みな、金色のバイザーを降ろしていて、その奥が見えないからだ。
体格はよく、みな同じように見える。
宇宙船を出て、歩く通路はきれいなオフホワイトで、傷ひとつなさそうだ。
清掃ロボットがいるのだろう。
さっきの死体は、どうするんだろうか?
まぁ、単純に考えれば、外に放り出して惑星に落とすとか、動物のエサにするとか、そのあたりだろう。
等間隔に並ぶ看守たちの緊張が伝わってくる。
ハンドガンを持っているとはいえ、これだけの囚人がいっせいに飛びかかれば、銃が奪われ、殺されるとわかっているからだ。
看守を人質に取れば征服できるかもしれない。
だが、思い直した。
囚人の反乱は、すでに考慮されているだろうから、何かの対応策があるはずだ。
それにこの囚人たちが、反乱を起こすには、無理がある。
ひとりひとりがバラバラに行動しても、すぐに制圧されてしまうだろう。
看守も“人質になっても誰も助けてはくれないのだ”と知っている。
だから緊張感を持って、銃口を囚人に向けているのだ。
行列が辿り着いたのは、ロッカールーム。
天井のスピーカーから男の声。
『自分の番号のロッカーの前に立て。若い順に並んでいる』
オレの番号は、32番。
グレーのロッカーには、それぞれに10cmくらいの数字が黒字で描かれている。
自分のロッカーの前に立つと、しばらく待たされる。
『ロッカーの中には、おまえたちの服と靴、それに荷物が入っている。まずは、着替えることだ』
自分のロッカーを開ける。
そこには、長袖のシャツとズボン、ソックスとトレッキングブーツがあった。
下着はない。
サイズは、自分に合っていた。
全部、黒一色。
とにかく、着替える。
拘束服は、すでに腕が自由になる状態だ。
それを脱ぐと、ロッカーに突っ込んだ。
全裸になるしかないが、いまさら恥ずかしがってもはじまらない。
まわりの全員がそうだ。
男も女も。
それに見とれている者はいたが、関係ない。
ロッカーの列ごとに、看守がハンドガンを構えて、監視している。
そのハンドガンが、何度か使われている。
同じ列の囚人のひとりが、バタンッと倒れた。
女の裸に見とれていた男だった。
看守の銃の腕前は、確かだ。
あちこちで、倒れる音と、女の悲鳴。
天井から男の声。
『時間を無駄にすると、天国がそれだけ近くなる。行きたければ、手を挙げてくれ。悲鳴を上げる者も同様だ』
悲鳴がピタリとやんだ。
それでも押し殺した嗚咽が聞こえてくる。
ブーツを履くと、着替えは終りだ。
まわりの囚人も着替えを終わっている。
『着替えが終わった者は、荷物を取り出して、ロッカーを閉じるんだ』
言われたとおりにする。
荷物は、バックパックひとつ。
結構、重い。
中身を確かめたいが、やめておく。
銃の音と倒れる音が聞こえたからだ。
また誰かが撃たれた。
言われたとおりが、一番だというわけだ。
生きたいならば。
『よろしい。では、後ろから通路に出たまえ。そうすると古い番号順になる』
ふたたび、通路に出る。
列は、すでに動き出していた。
みな、背中にバックパックを背負って。
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