【028.穴だらけ】
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ひと月後。
オレのまわりで、さまざまなプロジェクトが発足し、動いていた。
もちろん、オレの知識のおかげだ。
OCRは、リーダーが就き、正式に稼働をはじめた。
それまでに作られたプログラムによって、暫定的に文字データ化が進められている。
イメージの取り出しも続けている。
脳科学者たちは、その作業から離れていた。
代わりにテオがやっている。
ほぼ毎日のことなので、なんの問題もない。
脳科学者が、自分たちの装置を使えない、と不満を漏らすが、室長が新たな装置を発注する、と言うと喜んだ。
室長と相談して、テオをオレの部屋に引っ越させた。
ひとりでは広すぎる、と思っていたから。
だが、知らない人間と住むのは、嫌だった。
それにテオの部屋を訪れて、そのせまさに驚いた。
テオは、自分には充分です、とは言っていたが。
人間ひとりが寝起きだけを目的にしているのであれば、確かに充分だ。
しかし、今後のことを考えれば、もう少し広い部屋の方がいい。
「先生に毎晩の食事を作ってもらうのは、気がひけます」とテオ。
引越を終えた夜のことだ。
「だがね、君は料理をしたことがないんだ。しかもテディーの作るものは、味加減が私には合わない。となれば、自分の分だけでも作るしかない。それがふたり分になるだけだ。それに作る量が多い方が料理はおいしくなる」
「そうなんですか?」
「なぜかというと、食材からの旨味がその分増えるからだ。調味料の量も平均化される。本当は大量に作るべきなんだがね。そうなると食堂と同じことになってしまう」と笑ってみせる。
「それでも気がひけます」
「なら下拵えを手伝いたまえ。いずれは料理を覚えて、私の代わりに作ればいい。そうなれば、私の時間が増える」
「ああ、いいですね。わかりました」
というわけで、一緒に夕食作りをするようになった。
彼ひとりでの料理は、まだまだかかりそうだが。
ここまででわかったことは、ここの科学技術は、急成長をうながされたおかげで、穴だらけ、と言うことだ。
基礎の部分が、そっくりなかったりもする。
ほとんど口伝の世界だ。
それをオレの知識が穴埋めに使われることになる。
見た目に充分、科学技術が発達しているように見えてはいるが、基礎が穴だらけなので、あちこちにギャップが現れている。
たとえば、コンピューターがあるのに、必要なソフトウェアが不足している。
あっても機能が限定されていたりする。
よくここまでの科学技術を作り上げられたものだ、と感心してしまう。
ロボットだって、そうだ。
料理ができるといっても、メニューが決められていて、食材はすでに下処理が済んでいるから、たいした手間をかけるわけでもない。
知能は限定的だし、音声入力や合成もレベルは高くはない。
ホームオートメーションのレベルでしかない。
それで充分といえば、それまでだが。
もちろん、SXEのロボットと比較するわけにはいかない。
レベルが違いすぎるのだから。
また、偏りも見受けられた。
その分野に専門家がいないからだ。
落とされた人間の中で、その分野をカバーできる人もいない。
仕方のないことだ。
犯罪を犯し、終身刑を受ける人間だ。
そうそう都合のいい人間が落とされるはずがない。
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