【026.食堂】
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翌日からは、コンピューターへの入力も手馴れたものになった。
テオにAの分野を、オレがBの分野を、という具合に入力していく。
休憩を何度か入れる。
「テオは、城の中に住んでいるのかな?」
「ええ。せまい部屋ですが。でも文句も言えません。いずれは城下に部屋を借りれれば、と思っています」
「なるほど。食事はどうしてる? 昼食は食堂としても」
「ほとんど、食堂ですね。休みの日には、外出して、ちょっとしたものを購入して食べてます。パオロ先生は?」
テオは、オレのことをそう呼ぶことにした。
名前だけを呼ぶのは、気が引けるのだと。
「今のところ、ロボットに作らせてるが、夕食だけでも自分で作ろうかと思っている」
「お作りになれるんですか? すごいですね」
「たいしたものは、作れんがね。ひとり暮らしが長いとそれなりに覚えてしまって」
「作れるようになった方がいいのかな?」
「できないよりはね。だが、毎食、作る必要はない。結構な手間だから、気が向いたらでいいと思うよ」
「なるほど」
「そう言えば、着陸してから保護されるまで、どうしていたんだね?」
「4人が同じポイントだったんですが、翌日に保護されたので、バックパックの中身、ほとんど使いませんでした」
「それは、うらやましい。私は、150日、島での生活を余儀なくされたよ」
「まさか、おひとりで?」
「そのまさか。私の前に5人がいたらしいんだが、すでに保護されててね。彼らが作った地図があったので、いろいろと助かったよ」
「水や食料は、どうしたんです? バックパックのは、3日分くらいしか」
オレは、うなずいた。
「そのとおり。彼らのキャンプを見つけたのが2日目で、その日のうちに水が、次の日には魚介が得られた。残った糧食は、島の反対側へと行く遠征のときに消費したよ。途中で、食料が得られるとは限らないからね」
「もしそうしたものがなかったらどうしてました?」
「同じ島で、地図もなく、ということならば、自分でなんとかしていただろう。少なくとも草木はあったからそれを口にしていたかもな」
「草木ですか。そんなもので生きていけるんですか?」
「おそらく無理だろう。だが、水を見つけるまでの数日をなんとかできるはずだ。水が見つかれば、10日くらいの行動が可能だ。そのあいだに食料を見つける」
「私には無理ですね」
「人間、その気になれば、どんな環境でも生きていけるさ」
昼食は、テオに連れられて、食堂を利用した。
食堂は、それなりの広さ。
壁や窓のところにカウンターとスツールがズラッと並び、その内側を4人がけのテーブルが占めている。
料理は、自分で欲しいだけ皿に取るというスタイル。
若いテオは、脂っこいものを大量に皿に載せていた。
オレは、必要以上に取らずにいたが、それでも品数は多めに取った。
どれがどれだけうまいかが、わからなかったからだ。
ふたりで、テーブル席に相対する形で座った。
食べていると、次々に人が食堂に入ってきて、席が埋まっていく。
ふたりの女性が、相席をお願いしてきた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
ふたりとも20代後半から30代前半。
食堂にいるほかの人間に目をやり、その年齢層をチェックする。
「どうやら中年層が中心らしいね」とテオに訊く。
「ええ。若年層はもともと少ないですし、高齢層は食堂には来ません」
「来ない?」
「ええ。城内の庭園で食事しています。業者が来て、食事を作ってるんだとか」
「許されてるのかね?」
「ちゃんと許可を取ってると思いますよ」
「食堂だと落ち着かないんだそうです」と相席したひとりの女性。「上司がそのひとりでして」
「ああ、なるほど」
「それに」ともうひとり。「料理が身体に合わないとかで。身体のことを考えて、そうしているそうです」
「確かに高齢者にとっては、味も濃いし、油も多そうだ」
「私たちも気をつけているんですが」「意外と食べちゃってるのよね」と苦笑い。
「自炊とかは、しないの?」
ふたりとも首を振った。
「作るなんて」「時間もお金もありませんから」
手間がかかるのが嫌なんだろう、と口にせずに思った。
口にしたらきっと嫌なオヤジと思われてしまう。
女性に嫌われたくはないからな。
いろいろな意味で。
「君たちも城内に住んでいるのかね?」
「ええ。城内ならお金はかからないし」
「そのようだね。私は昨日、ここに来たばかりでね。まだ右往左往しているところだよ」
「じゃぁ、お仲間ですね。どちらに配属に?」
「文化院ですよ」とテオが胸を張る。
「じゃぁ、あなたも?」とテオを見るふたり。
「ええ。パオロ先生付きになりました」
「先生?」
ふたりは、テオからオレへと顔を向けた。
「なぜだか師匠と弟子にさせられましてね。先生と呼ばれても困るのですが」
「でもピッタリの雰囲気ですよ。教師でもやっていられたのでは?」
「多少、真似事をしたことがあるだけです。免許もありませんしね」
食事を先に終え、ふたりにお別れを言うと、テオがドリンクバーに連れていってくれた。
ドリンクバーとはいっても、自販機の並んだ休憩室という感じの部屋だった。
そこにも人が多く訪れていた。
だが、ほとんどは、ドリンクを手にすると、そのまま出ていく。
テオは炭酸のジュースを、私は乳酸菌飲料を選んだ。
壁際のスツールに腰を降ろす。
ほとんどの席は、空いていた。
「彼らは、ここで飲まないのかね?」
「ええ。庭園に行ったり、職場に戻ったりですよ。そっちの方がゆったりできるんでしょうね」
「なるほど」
夜。
夕食は、自分で作った。
とはいえ、レシピは、フェイスで見つけたものだ。
何せ、材料も調味料もこの惑星独自のものだから。
それでもおいしくできた。
見た目は別にして。
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