【022.女王ノーラ】
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アネットとオルタァに連れられて、その扉をくぐった。
そこには、十数名の男女がおり、会議をしていた。
みな、オルタァと同じ服装をしているが、装身具をそれぞれに身につけていた。
首に下げる者もいれば、頭につける者も、腕や手首につける者も、腰につける者もいる。
その全員の目が、一斉にこちらを見た。
その目からは、さまざまではあるが、好奇の視線が放たれていた。
アネットが、一歩前に出る。
「会議中のところを御邪魔してしまい、申し訳ございません」
「よい」と言葉を発したのは、その会議の中央に座った少女だった。「そちらが、今回、発見された民か?」
「はい、陛下」
少女は、やはり白いワイシャツに濃紺のスカートといういでたち。
オリーブ色の肌はツヤツヤとしていて、波打つ黒髪を三つ編みにして、胸の前に垂らしていた。
王冠をかぶったりはしていない。
オレを見る瞳は、黒に近い茶。
ただ、その瞳からは、知性を感じさせている。
好奇心も感じられる。
「パオロ・モーガン殿です。モーガン殿、あちらが女王ノーラ様です」
オレは、胸に右手を当て、頭を下げた。
「陛下、御会いできて、うれしく思います」
「モーガン殿、昼食を一緒にいかがか? お話を伺いたい」
「どのような話を御所望で?」
「着陸から発見されるまでを。私は、外の世界を知らぬゆえ」
「なるほど」
昼食は、会議の面々とともに別の部屋に移動して行なわれた。
出てきた食事は、内容は違うが、基地の食堂で食べた朝食と同じだった。
必要以上に出されもしないし、凝った装飾も施されもしない。
食器なんかもごくごくふつうのものだ。
それどころか、ノーラの分は、量が少ない。
「私は、まだ身体が小さいからな」とノーラ。「必要な量はこれで充分だ」
「でも食べたいものもあるでしょう? たとえば、甘いものとか」
「心配は無用だ。みなもきちんとわかってくれておる。デザートがなければ、会議など出ない」と屈託ない笑顔を見せた。
「陛下!」と男性のひとりが叱る。
「叱られた」と舌を出した。
12歳らしい一面だ。
「はしたないですよ、陛下」と女性のひとりがたしなめる。
「まただ。わかっておる。わざとだ」
「こちらもわかっております」としかめ面。
ノーラは、大きなため息をついた。
「女王の役は、つまりませんか?」と訊いてみた。
少女は、笑顔を見せた。
首を振る。
「心配ない。楽しんでおる」
「楽しんでおいでで?」
「そうだ。国のことがよくわかる。少しずつ変わっていく。その変化が楽しみなのだ」
「なるほど」
「モーガン殿は、どこへ着陸したのだ?」
「名前も知らない島でして」
昼食に参加していたアネットが答える。「キラレ島です、陛下」
「キラレ島? ああ、大昔に我らが大陸から離れていった島だったな。確か、断崖絶壁と林と山々があると記憶しているが」
「そのとおりでございます、陛下」
「キラレ島にどのくらいいたのだ? 着陸してから」
「150日ほど、おりました」とオレが答えた。
「生活はどうだったのだ?」
「それなりに。先に着陸していた者が残した地図のおかげで、水も食料も得ることができておりました」
「先に? では、助け合っていたのだな」
「いえ。私が着陸した際には、すでに救助されたあとでしたので、私ひとりでの生活でした」
「なんと。では、さみしかったのでは?」
「そうですね。ですが、毎日、やることがありましたので、それどころではありませんでした」
「やることとは?」
「水汲み、食料の確保、道具作りなどなどです」
「食料は、何を?」
「海に下りて、魚介を。それと動物や果実もありました。あまった食料は、保存できるように加工して、いざというときに備えました」
「いざ?」
「食料が確保できなかった場合を考えて。海がしけたり、動物がいなかったり、果実がなかったりしたときのために」
「その可能性があったのか?」
「それほどは。ですが、いつそうなるか、私にはわかりませんでしたから」
「なるほど。予防線を張っておったのだな」
「左様でございます」
そうした話をしながらの食事だったので、食べ終わるのに時間がかかっていた。
デザートが出されると、ノーラは話をそっちのけで、頬張った。
食べ終わると、彼女は、満面の笑み。
満足されたようだ。
そのあと、彼女は、私に別れを告げて、御付きの女性とともに部屋を出ていった。
「お昼寝ですわ」とアネット。「大人同様の仕事は、子どもの身体には、無理なようです」
「そうでしょう。大人でも軽い昼寝は仕事を進める上では、必要なことですし」
「モーガン殿」とひとりの男性。白い口髭を丁寧にカットしてある。「仕事の話は、すでにアネットから聞かれたと思うが」
「はい」
「受けてもらえるのだろうか?」
「そのつもりです。自分の知識がお役に立つのであれば」
彼がホッとした。いや、彼だけでなく、ほかのかたがたもだ。
「どうして、そんなに安堵を?」
「“知識は宝”です。あなたは、我々の問いかけにしっかりと答えてくださった。幅広い問いかけに」
「確かにそうでした。ですが、知っていることを答えただけです」
「そうした知識がまだまだ不足しているのです。教授方もおりますが、専門分野から外れるとどうしても穴開き状態でして」
「それは、仕方のないことですね。私は覚えこむばかりで、教授方のように難しいことを考える能力がありません」
「その知識が欲しいのです。国民の知識としたいのです」
「言いたいことはわかりました。たいしたことはできませんが、ご協力させていただければと思います」
「よかった」
会議の面々と別れ、アネットに次へと連れていかれた。
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