表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落とされ人  作者: カーブミラー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/38

【022.女王ノーラ】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 アネットとオルタァに連れられて、その扉をくぐった。

 そこには、十数名の男女がおり、会議をしていた。

 みな、オルタァと同じ服装をしているが、装身具をそれぞれに身につけていた。

 首に下げる者もいれば、頭につける者も、腕や手首につける者も、腰につける者もいる。

 その全員の目が、一斉にこちらを見た。

 その目からは、さまざまではあるが、好奇の視線が放たれていた。

 アネットが、一歩前に出る。

「会議中のところを御邪魔してしまい、申し訳ございません」

「よい」と言葉を発したのは、その会議の中央に座った少女だった。「そちらが、今回、発見された民か?」

「はい、陛下」

 少女は、やはり白いワイシャツに濃紺のスカートといういでたち。

 オリーブ色の肌はツヤツヤとしていて、波打つ黒髪を三つ編みにして、胸の前に垂らしていた。

 王冠をかぶったりはしていない。

 オレを見る瞳は、黒に近い茶。

 ただ、その瞳からは、知性を感じさせている。

 好奇心も感じられる。

「パオロ・モーガン殿です。モーガン殿、あちらが女王ノーラ様です」

 オレは、胸に右手を当て、頭を下げた。

「陛下、御会いできて、うれしく思います」

「モーガン殿、昼食を一緒にいかがか? お話を伺いたい」

「どのような話を御所望で?」

「着陸から発見されるまでを。私は、外の世界を知らぬゆえ」

「なるほど」


 昼食は、会議の面々とともに別の部屋に移動して行なわれた。

 出てきた食事は、内容は違うが、基地の食堂で食べた朝食と同じだった。

 必要以上に出されもしないし、凝った装飾も施されもしない。

 食器なんかもごくごくふつうのものだ。

 それどころか、ノーラの分は、量が少ない。

「私は、まだ身体が小さいからな」とノーラ。「必要な量はこれで充分だ」

「でも食べたいものもあるでしょう? たとえば、甘いものとか」

「心配は無用だ。みなもきちんとわかってくれておる。デザートがなければ、会議など出ない」と屈託ない笑顔を見せた。

「陛下!」と男性のひとりが叱る。

「叱られた」と舌を出した。

 12歳らしい一面だ。

「はしたないですよ、陛下」と女性のひとりがたしなめる。

「まただ。わかっておる。わざとだ」

「こちらもわかっております」としかめ面。

 ノーラは、大きなため息をついた。

「女王の役は、つまりませんか?」と訊いてみた。

 少女は、笑顔を見せた。

 首を振る。

「心配ない。楽しんでおる」

「楽しんでおいでで?」

「そうだ。国のことがよくわかる。少しずつ変わっていく。その変化が楽しみなのだ」

「なるほど」

「モーガン殿は、どこへ着陸したのだ?」

「名前も知らない島でして」

 昼食に参加していたアネットが答える。「キラレ島です、陛下」

「キラレ島? ああ、大昔に我らが大陸から離れていった島だったな。確か、断崖絶壁と林と山々があると記憶しているが」

「そのとおりでございます、陛下」

「キラレ島にどのくらいいたのだ? 着陸してから」

「150日ほど、おりました」とオレが答えた。

「生活はどうだったのだ?」

「それなりに。先に着陸していた者が残した地図のおかげで、水も食料も得ることができておりました」

「先に? では、助け合っていたのだな」

「いえ。私が着陸した際には、すでに救助されたあとでしたので、私ひとりでの生活でした」

「なんと。では、さみしかったのでは?」

「そうですね。ですが、毎日、やることがありましたので、それどころではありませんでした」

「やることとは?」

「水汲み、食料の確保、道具作りなどなどです」

「食料は、何を?」

「海に下りて、魚介を。それと動物や果実もありました。あまった食料は、保存できるように加工して、いざというときに備えました」

「いざ?」

「食料が確保できなかった場合を考えて。海がしけたり、動物がいなかったり、果実がなかったりしたときのために」

「その可能性があったのか?」

「それほどは。ですが、いつそうなるか、私にはわかりませんでしたから」

「なるほど。予防線を張っておったのだな」

「左様でございます」

 そうした話をしながらの食事だったので、食べ終わるのに時間がかかっていた。

 デザートが出されると、ノーラは話をそっちのけで、頬張った。

 食べ終わると、彼女は、満面の笑み。

 満足されたようだ。

 そのあと、彼女は、私に別れを告げて、御付きの女性とともに部屋を出ていった。

「お昼寝ですわ」とアネット。「大人同様の仕事は、子どもの身体には、無理なようです」

「そうでしょう。大人でも軽い昼寝は仕事を進める上では、必要なことですし」

「モーガン殿」とひとりの男性。白い口髭を丁寧にカットしてある。「仕事の話は、すでにアネットから聞かれたと思うが」

「はい」

「受けてもらえるのだろうか?」

「そのつもりです。自分の知識がお役に立つのであれば」

 彼がホッとした。いや、彼だけでなく、ほかのかたがたもだ。

「どうして、そんなに安堵を?」

「“知識は宝”です。あなたは、我々の問いかけにしっかりと答えてくださった。幅広い問いかけに」

「確かにそうでした。ですが、知っていることを答えただけです」

「そうした知識がまだまだ不足しているのです。教授方もおりますが、専門分野から外れるとどうしても穴開き状態でして」

「それは、仕方のないことですね。私は覚えこむばかりで、教授方のように難しいことを考える能力がありません」

「その知識が欲しいのです。国民の知識としたいのです」

「言いたいことはわかりました。たいしたことはできませんが、ご協力させていただければと思います」

「よかった」

 会議の面々と別れ、アネットに次へと連れていかれた。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ