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落とされ人  作者: カーブミラー


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20/41

【020.王都】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 眼下には、人の流れがあった。

 流れ、そうだ、川の流れのようだ。

 だが、流れは決まりなく乱れている。

 同じ方向に行く者もいれば、反対方向へ、全然違う方向へ、立ち止まり、まわりを見わたす者もいる。

 人種は、雑多だ。

 ソラ人のみだが。

 ここに異星人が落とされることはないだろう。

 監獄ステーションですら異星人は見かけなかった。

 とにかく、こんなにも人が集まっているのは、信じられなかった。

「何か催し物でもあるんですか?」

「いえ。日常の風景です。ちょうどお昼の時間なので、昼食を求めに出ているのです」

 オレとアネットは、そのようすを見下ろせる石造りのテラスにいた。

 すでに軍の基地から〈スベルト〉の王都の城へと運ばれていたのだ。


 移動は、自動車だった。

 おそらく公共の移動手段で、乗り合いバスの一種だ。

 ほかにも乗客はいたが、私服の軍人だとわかった。

 髪を短く刈っているからだ。

 それに座る姿もスキがない。

 バスに揺られながら、まわりを見渡した。

 軍の基地から王都までは、さまざまな種類の畑や工場が並んで見えていた。

 アネットがひとつひとつを説明してくれる。

 やがて、背の高い建物があたりを埋め尽くしはじめた。

「50階建ての共同住宅です。王都で働く人の多くが住んでいます」

「私もあれに?」

「お望みならば、それも可能です。ですが、提供される住居は、もっと快適です」

「あれは快適ではないと?」

「そこまでは言いませんが、せまいですし、エレベーターが止まったらと考えますと……」“あとはおわかりでしょう?”と彼女の目が言っていた。

「登ったり降りたりが大変になる、と」

「はい。もちろん、非常用の設備がありはしますが」

 そう言えば、一度、ビル火災で、閉じ込められたことがあった。

 そのときは、エレベーターは動いていたが、乗れるような状態ではなかった。

 灰色の煙が充満していたのだ。

 非常階段も煙はあったが、上昇気流が吸い上げていて、見通しもよく、息も苦しさはなかった。

 ビルの設計に対策が組み込まれていたのだ。

 それでも100階以上のビルの30階あたりから階段を使って降りるのは苦痛だった。

 まるで永遠に続くかのように思えたものだ。

 火災は、階段を攻めては来ていなかった。

 煙は、吐き出されていたが。

 そのフロアを通り過ぎるとき、熱を感じた。

 壁の向こうで炎がフロアを焼いているのだ。

 煙が吐き出されているところをくぐり、階下へと降りていく。

 非常階段から出ると、そこはファイヤースーツを着た消防団員たちが、右往左往して、がんばっていた。

 数人の彼らが、オレたちを導いて、ビルの外に連れ出してくれた。

 ビルの外では、さらに多くの消防団員たちが活動していた。

 多くの車両とともに。

 ひと息つくと、外の空気はうまかった。

「あれが城です」

 アネットの声で、我に返った。

 彼女の指し示す方角、進行方向にその姿があった。

 まだ遠いのでよくわからないが、ちょっとした山のように見える。

 だが、さきほどの集合住宅ほどの高さがあるようには見えない。

 それでもオフホワイトの城壁や高く伸びた塔が見てとれる。

「まさかと思うのですが、もしかして、石造り?」

「そうです。国民からの寄進ですわ」

「寄進? 城を?」

「はい。王が統治権を評議会に渡し、象徴となった際に、造られました。国民がそれを願ったのです。王は、城に住むべきだと」

「あれだけの城を造るのに、どれだけのコストがかかるかを考えたら、王が許可を出すとは」

「そうです。ですが、造ったあとに寄進すれば、王は何も言えません。実際にそういうことになりました」

「なるほど。評議会も文句はなかったので?」

「見て見ぬフリをしていました。一部の議員は、手を貸していたようです」

「へぇ」

 近づくにつれて、街が見えてきた。

 街は、広々として明るい雰囲気だ。

 ショッピングモールにも思える。

 ビルは、みな低く抑えられていた。

「地下にも生活空間があります。地上は商業中心です」

「地下は?」

「ビジネスオフィスや研究開発、各種リサイクル施設などです。いくつかの工場も含まれています」

 バスは、街なかを通って、城へと進む。

 途中途中で、私服姿の軍人を降ろしながら。

 街なかは、明るく、人々も表情豊かだ。

 城は近づくにつれて、その白い壁面を大きくしていく。

 城門には、鈍い銀色の輝きの金属の門が、内側に向かって開かれていた。

 その城門をくぐる。

 そこで降ろされた。

 振り返ると、バスはUターンして、街へと戻っていく。

 アネットのあとについて、検問を抜け、城壁内を歩く。

 城壁内は、微風があって、比較的涼しく、すごしやすそうに感じた。

 上り坂となっている石畳を登って、低層階のテラスに出た。

 そのテラスからの眺めに、唖然となった。

 それが、昼食を求めて、流れる人々の姿だった。

 バスを降りるまで、なかった流れ。

 それが今では、濁流のごとく、あふれかえっている。

「さぁ、行きましょう」

 アネットにうながされて、オレはテラスをあとにし、薄暗い城内に入った。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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