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落とされ人  作者: カーブミラー


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16/16

【016.起床】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 目覚めると、見慣れない光景にアタフタした。

 だが、すぐに自分がいる場所を思い出した。

 暗い。

 そこで明かりを点けた。

 床の服と靴に目を落とす。

 服と靴のあいだに、糧食がひとパックあるのに気付いた。

 昨日の夕食のつもりなのだろう。

 だが、オレはそれに気付かなかったし、食べてないことにも気付いていなかった。

 服を着て、その糧食を手に取る。

 両の手のひらを開いたくらいの大きさ。

 説明書きを読む。

 今のうちに食べてしまおう。

 そう思って、切り取り線に従って、パックの端を切り開ける。

 待っているとパックに温かみが出てきた。

 切り開いてから30秒。

 パックの中から中身を取り出す。

 スープのチューブと、鶏肉の唐揚げ、それにグミのような固形物が5個。

 スープを飲んでから、固形物を口に放り込んだ。

 グミというより、パスタの一種のニョッキのようだ。

 モチモチとしている。

 そのまま、唐揚げも頬張る。

 うん、悪くない。

 腹持ちもよさそうだ。

 説明書きに固形物の名称が書いてあったが、何からできているとかの説明はない。

 その名称自体が材料の名前なのだろうか?

 それらを食べ終わると同時に、天井のスピーカーから威勢のいいラッパの音色が響く。

 起床ラッパだ。

 オレは迷わずに、ゴミをまとめ、ベッドメイクをした。

 トイレを済ませ、顔を洗う。

 髪にブラシを入れて、鏡で身だしなみをチェック。

 それからドアを開け、廊下に立った。

 看守のチェックが入るはず、と勘違いして。

 留置施設のルールだった。

 廊下には、オレのほかに、誰も出てこない。

 ほかにも囚人がいるならば、同じように廊下に出てくるはずだ。

 ということは、ほかに誰もいないのだろうか?

 それでもかまわないが。

 だが、こうして、廊下に出ても見回りにも来ないのだから、バカバカしいとしか思えない。

 部屋に入った。

 ドアは、開けたままにした。

 外の喧騒が知りたいからだ。

 あるならば。

 さて、どうしよう?

 持ち物をチェックするか。

 持ってきたのは、毛皮の服と靴、それにサバイバルナイフ、それ用のケース。

 クリスさんと出会ったときと同じだ。

 あのとき、ベースに戻ったのは、次の人のためにメッセージを残したかったからだ。

 魚介の入ったバックパックは、放っておくことにした。

 自然に分解されて、跡形もなくなるだろうから。

 自分で作った道具類も持っていきたい気持ちはあったが、王国で必要になるとは思えなかったので、整理だけした。

 “立つ鳥、跡を濁さず”、それがオレの仕事の信条だ。

 仕事場から立ち去る際、オレの痕跡を一切残さないのを理想としている。

 そのため、人からは、きれい好きだと言われる。

 普段からきれいにしていれば、必要なものをまとめる時間は少なくて済むのだ。

 オレは、そうやって、長年、仕事を続けてきた。

 だが、とうとう捕まったのだ。

 だから、ここにいる。


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