文字たちの舞踏会
「冬の童話祭2026」および「第7回ラジオ大賞」参加作品です。
この日は文字たちの舞踏会。会場内には色とりどりの光がきらきらと宙に浮かんでいて、明るく照らしています。集まった文字たちはその光景を見て楽しみつつ、親しい友人たちと一緒に話をしています。
そんな中、“ん”は誰も友だちがいなくて、一人寂しそうにしています。
(みんな、楽しそうだなぁ)
そんなことを思って羨ましそうに周囲を見ていると、声をかけられました。
「君、一人?」
「僕たちと一緒に遊ばない?」
声をかけてきたのは、“き”と“ら”です。驚いている“ん”に二人は笑いかけて、手を伸ばしました。
「だって、ほら。僕たちが三人集まるとさ」
「見てよ。きらんきらんってピカピカし始めたよ!」
そう。先ほどまでただ光っていただけの光が、“ん”と手を繋いだ途端に点滅し始めたのです。周囲から「すごい!」と感動の声が聞こえます。
そこにさらに、一人が近づいてきました。
「ねぇねぇ、私も仲間に入れてちょうだいな。ほら」
声をかけてきたのは、“り”です。手を繋ぐと点滅している光がきらりんと光り、その輝きが大きくなりました。
「うわぁっ!」
会場内は、まるで光たちが踊っているかのようです。“ん”は感動して声をあげました。ひとりぼっちの自分に、こんなすてきな光景を作り出すことができるなんて、思ってなかったのです。
「ちょっと待った。俺たちも仲間に入れて!」
さらにそう言ってきたのは、“し”。そして、小人の“ゃ”も一緒にいます。
「ほらほら、手をつなごうよ!」
“ん”が手を繋ぐと、「しゃんしゃん」とどこからか音が聞こえ始めました。すると光の点滅もまるで音に合わせるように、点滅の間隔が長くなったり短くなったり、リズムに乗り始めたのです。
光と音の共演に、周囲の歓声が大きくなりました。誰からともなく踊り始めています。
「僕たちも踊ろうよ!」
“ら”の誘いにみんなが輪を作って、踊り始めました。するとさらに光は輝き、音も賑やかになっていきました。
会場に来たときには、一人で寂しそうにしていた“ん”は、たくさんの友だちに囲まれました。舞踏会が終わってもその交流は続き、さらにもっと多くの友だちを作っていったのでした。




