表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

文字たちの舞踏会

作者: 田尾風香

「冬の童話祭2026」および「第7回ラジオ大賞」参加作品です。

 この日は文字たちの舞踏会。会場内には色とりどりの光がきらきらと宙に浮かんでいて、明るく照らしています。集まった文字たちはその光景を見て楽しみつつ、親しい友人たちと一緒に話をしています。


 そんな中、“ん”は誰も友だちがいなくて、一人寂しそうにしています。


(みんな、楽しそうだなぁ)


 そんなことを思って羨ましそうに周囲を見ていると、声をかけられました。


「君、一人?」

「僕たちと一緒に遊ばない?」


 声をかけてきたのは、“き”と“ら”です。驚いている“ん”に二人は笑いかけて、手を伸ばしました。


「だって、ほら。僕たちが三人集まるとさ」

「見てよ。きらんきらんってピカピカし始めたよ!」


 そう。先ほどまでただ光っていただけの光が、“ん”と手を繋いだ途端に点滅し始めたのです。周囲から「すごい!」と感動の声が聞こえます。


 そこにさらに、一人が近づいてきました。


「ねぇねぇ、私も仲間に入れてちょうだいな。ほら」


 声をかけてきたのは、“り”です。手を繋ぐと点滅している光がきらりんと光り、その輝きが大きくなりました。


「うわぁっ!」


 会場内は、まるで光たちが踊っているかのようです。“ん”は感動して声をあげました。ひとりぼっちの自分に、こんなすてきな光景を作り出すことができるなんて、思ってなかったのです。


「ちょっと待った。俺たちも仲間に入れて!」


 さらにそう言ってきたのは、“し”。そして、小人の“ゃ”も一緒にいます。


「ほらほら、手をつなごうよ!」


“ん”が手を繋ぐと、「しゃんしゃん」とどこからか音が聞こえ始めました。すると光の点滅もまるで音に合わせるように、点滅の間隔が長くなったり短くなったり、リズムに乗り始めたのです。


 光と音の共演に、周囲の歓声が大きくなりました。誰からともなく踊り始めています。


「僕たちも踊ろうよ!」


“ら”の誘いにみんなが輪を作って、踊り始めました。するとさらに光は輝き、音も賑やかになっていきました。



 会場に来たときには、一人で寂しそうにしていた“ん”は、たくさんの友だちに囲まれました。舞踏会が終わってもその交流は続き、さらにもっと多くの友だちを作っていったのでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 舞踏会が周りからの優しい声かけや協力で、たちまちクリスマスのような雰囲気になりつつ輝きが増すとは、素敵な発想ですね。  中弛みやあげて落とすような困惑イベントもなく、読んでて微笑ましさを感じさせる…
壁の花?になっている「ん」をなんだかかわいいと思いました(*´꒳`*) 「き」と「ら」なんて、めっちゃ華々しそうなキャラ!と思っていたら、「ん」のおかげでキラキラが増しましたね。 誰と手を繋いでも、光…
発想がすごいです。 皆で手を繋ぐというのもいいです。素敵な舞踏会になりそうです。 とても勉強になりました。 拝読させて頂きありがとうございます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ