6話 双天の片翼、妹と再会する
恍惚とした表情で愛おしそうに陸を見据えるその人物は
ロゼルム・マギルディナ。
陸の異母兄妹である。
濡羽色のツーサイドアップにアメジスト色の瞳を持つ妖艶な少女。
そんな彼女に言い寄られれば世の男性は泣いて喜ぶ事だろう。だが陸は違った。
「生憎と。俺にはやるべき事があるんだ。
だからお前とは一緒に居られない。」
突き放すように告げるとロゼルムは涙目になる。
「お兄様はロゼの事が嫌いなのですか?」
今にも泣いてしまいそうなロゼルムに陸は焦燥に駆られる。
(やばい。やばい。やばい。こいつを泣かさせたら昊が
マジギレする。)
「き、嫌ってなんかない。だから泣くな。」
陸は優しくロゼルムの頭を撫でる。
本当は死ぬ程彼女の事が嫌いだが。
そんな事口が裂けても言えない陸は苦し紛れの嘘を付く。
というのも。昊には兄弟姉妹がおらず。
年下の男の子や女の子はまるで弟や妹のように可愛く思えて
仕方ないのだ。
だからこそ昊にとってロゼルムは妹同然の存在だった。
そんなロゼルムをぞんざいに扱えば昊に見限られてしまい
兼ねない。
故に陸にとってロゼルムは他ならぬ天敵であった。
「嬉しいです。お兄様。やはり。ロゼとお兄様は
相思相愛なのですね?」
そんな事は無いと否定したかった陸だが。
それを口に出す事は出来ない為。
陸は必死に言葉を押し殺し、笑みを繕った。
「ああ。お前は俺の世界でたった1人の大切な妹だ。」
その言葉が虚言である事を知らないロゼルムは
満足そうに微笑む。
「ふふっ…お兄様ったら。本当にロゼが居ないと
駄目なんですから。」
ロゼルムは愛おしそうに陸の腕にくっつく。
陸はそんなロゼルムを煩わしく思っていた。
(頼むから。早く消えてくれ。)
などと陸が心中で呟いた。
その時だった――
突如としてこの世のものとは思えない程の悍ましい
異形の怪物が出現する。
「チッ…運が悪い。こりゃあ。今日は厄日だな?」
「一体何なんですか?あの怪物は?」
「こいつは【エグゾディア】世界の歪みから生まれた
異形の怪物で。こいつ一体で星一つを容易に壊滅させられる。」
「なっ…!?星一つを壊滅!?」
(昊居てくれれば。まだ楽なんだが。昊が居ない上に。
お荷物抱えての戦闘。正直に言ってきついが。)
「やるっきゃねえよな?」
陸は覚悟を決め、エグゾディアと対峙するのだった。
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