5話 双天の片翼、国王と謁見する
陸と離れ離れにされ、魔力も封じられて
しまった昊は仕方なく任意同行に応じる。
任意同行に応じた昊は現在拠点にしていた
リベルム王国の王宮へと連れて来られた。
それでも昊は一切動じる事は無かった。
そうして昊は国王の居る謁見の間へと通された。
「ご足労頂き感謝する。双天の昊殿。」
ブロンドの頭髪をした国王が神妙な顔で告げる。
「ええ。まさか。こんな夜分遅くに呼び出されるとは
思いませんでしたよ?」
「それはすまない。だがこうでもしなければ。君達は
すぐにでもこの国を離れてしまうだろう?」
「否定はしませんよ。明日の早朝にはこの国を出る
つもりでしたので。」
「それなら先に手を打っておいて正解だったな。正直。
君のような優秀な人材をみすみす逃す訳には行かんからな?」
「私を手籠めにするつもりですか?」
「君が素直に要求に応じてくれれば。手荒な真似はしないさ。」
国王が手を振り上げると側近の1人が昊に一枚の紙を
手を渡す。
「これはまた随分と一方的な条約ですね?」
そこに記されていた内容は昊の人権を軽視した
理不尽極まりない条約だった。
「その用紙にサインをして欲しい。
サインが面倒なら血判でも構わない。」
「私が大人しく要求に応じるとでも?」
「ならば。強引にでもサインして貰うまでだ。」
国王の言葉と共に側近の者が昊を抑え付ける。
そのまま昊の指先を切り付け、同意書に血判を
押させようとする。
「全く。舐められたものですね?」
刹那――
昊を抑え付けていた側近の体が吹っ飛び、壁に激突する。
「馬鹿な!!魔力を封じていた筈なのに。」
「たまに居るんですよね?私を見縊って
従わせようとしてくるおバカさんが。」
幼い見た目とは裏腹に昊は圧倒的なまでの貫禄を見せ付ける。
「貴様。一体何者だ?」
「別に私は何者でもありません。世界を旅する
ただの旅人ですよ。」
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一方その頃
陸は灰色の世界で目を覚ます。
「頭痛ってえ。くそっ…飲み過ぎた。」
昨晩陸は食事量と同じくらいの酒を飲んだ事により。
二日酔いに見舞われた。
「ふふっ…随分とお早いお目覚めですね?」
陸のすぐ側でそんな声が響き渡る。
その声を聞いた陸は反射的に距離を取る。
「うげっ…どうして?お前が…」
その人物の顔を見た陸は思わず苦虫を噛み潰したような顔を
浮かべる。
そんな陸を気にも留めずにその人物は恍惚とした
表情を浮かべる。
「これでやっと2人きりになれましたね?愛しのお兄様。」
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