1話 双天、金欠になる
この世界には人間だったり。魔族だったりと
とにかく沢山の種族が暮らしている。
そんな世界で最強と呼ばれている者達が存在する。
その名は『双天』
あらゆる種族の頂点達が皆口を揃えて勝てないと断言した。
神々すらも恐れ慄く最強の2人。
そんな2人は現在窮地に陥っていた。
「陸。旅の資金が底を尽きました。」
双天の片割れである昊が深刻そうに告げる。
「えっ…もう?まだ資金調達してから。3日しか
経ってないよ?」
そんな陸の言葉に昊は思わず陸の頬を引っ張る。
「一体誰のせいだと思ってんですか!!この馬鹿陸!!」
「いだだだだだだ!!ちょっ…痛い!!痛いって昊!!」
「食費は1食に付き10万フォード※日本円と同じ
も掛かる上に。無駄な買い物ばかりするし。
挙げ句の果てにギャンブルで有り金全部
溶かすんですから。話になりませんよ。」
宝石のような青玉色の瞳を潤ませながら昊は愚痴を零す。
そんな昊に陸は困ったように告げる。
「やめろよ。そんな可愛い顔されたら。襲いたくなるだろ?」
陸は誰もが認める絶世の美男子である為。
色気付いた顔でそんな事を言われれば
世の女性なら泣いて喜ぶ事だろう。
しかし昊には逆効果だった。
「ならもう陸とは今日限りで絶縁しますので。
明日からは頑張って1人で生きてくださいね?」
昊の言葉に陸はこの世の終わりのような表情を浮かべる。
「俺が悪かった!!だからそんな事言わないでくれ。
俺昊が居ないと生きていけない!!」
泣きながら必死に懇願する陸に昊は呆れたような
表情を浮かべる。
「本当に貴方という人は仕方のない人ですね?」
なんやかんや言ってても。陸を見放す事の出来ない
昊は甘んじてそれを受けてしまう。
「一体いつになったら『カナタ』に辿り着けるんでしょうね?」
最果ての地『カナタ』
それは世界の最果てに存在すると言われている
場所であり、昊達の旅の終点である。
「別に焦る必要もないだろ?
俺達には余り余る程の時間があるんだから。」
「だからってのんびりし過ぎなんですよ。
貴方のせいで一体どれだけ予定よりも遅れていると
思っているんですか?」
「悪いな。でも昊との時間が俺にとっての至福なんだ。
だからこそこの時間を終わらせたくない。」
「心配しなくても。この旅が終わっても私達はずっと
一緒ですよ?例え私達が終焉の時を迎えたとしても。」