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先生の話って短いほうがいいよね

「あ、あれは!!この国最大の王族の第一王子にして歴代最強の実力を持つ、ロスティニ・オーヴ様!!何故ここに!?」

 おじいちゃんが叫んでこちらに気づいたのか、ロスティニ・オーヴはこちらを向いた。彼はなぜか私を睨んでいるようだ。

……なんか睨まれてない?私何かしたっけ?

 すると、貫かれたはずの親玉がこちらをギロリと見た。そして、すぐにこちらめがけて口からビームを打ってくる。

……私、手を出さないほうがいいよね?

 すると、何かを唱えてロスティニ・オーヴが剣を振り上げた。そして、剣を振り下ろすと親玉が縦に真っ二つになった。

……ひょええええ。さすが歴代最強だね。

 歴代最強って、全体のかな、とか考えていると、目の前にロスティニ・オーヴが現れた。

「……お前に少し話を聞きたい」

「私ですか!?」

「オーヴ様!マヤ様に無礼ですよ!」

 予想外の矛先に私が驚いていると、おじいちゃんがオーヴを咎めた。しかし、その効果は皆無だった。

「……ディースのランティクト・ヘネハント。違法な宗教団体を作ったため、国王から呼び出しがかかっているはずだが……。行かなければ国家反逆罪に当たるぞ」

……え?ディースって違法な宗教団体なの!?

 ちょっと私はディースのことが信用できなくなった。そして、もう一度オーヴが私に問いかけた。

「もう一度言う。話を聞きたい」

「マヤ様!受けないでください!」

 私はオーヴとおじいちゃんを見比べてよく考えてみた。

……どっちも信用できないなぁ。

 ロスティニ・オーヴは王族で、絶対に関わっちゃいけない気がする。しかし、意外と自分のことを話してみてもいいかもしれない。ディースのおじいちゃん――ランティクト・ヘネハントは私の命令なら何でも聞いてくれて従順だが、違法な宗教団体を作ったと聞いたため、あんまり信用できない。次は犯罪に手を染めてしまいそうである。怖い。

……でも、こっちの方が。

 私は覚悟を決めて言葉を発した。

「……分かりました。話を聞きます」

「マヤ様!?」

「素直でよろしい」

 こうして、おじいちゃんを他所にロスティニ・オーヴと私が一対一で話すことになった。


「……この辺でいいか」

 随分と遠くに連れてこられた。ちなみに、ディースの皆はというと、おじいちゃん以外全員が帰宅し、おじいちゃんだけ近くで待機している、という現状だ。

……何の話だろう。私、何かしたっけ?

 何を話されるのだろう、と考えていると、オーヴの口から予想外の言葉が飛び出してきた。

「単刀直入に聞く。……ゼトワーン・ビトンを一度滅ぼしたのはお前だな?」

「……」

 表面上は平静を装っているが、内心では大騒ぎ。

……え?え?なんでバレた!?私以外の記憶は全部消えている筈じゃ?何?この人だけ例外だとか!?

 内心でめっちゃ取り乱していると、オーヴは更に続けた。

「別に罪を問うつもりはない。その後すぐに戻ったからな。ただお前がやったのか確かめたいだけだ」

……本当かなぁ?

 そもそも、ゼトワーン・ビトンが滅んだと言い切れるのもおかしい。どうやって見ていたのだろうか。

……これぐらい聞いていいよね?

「……なぜ、貴方はゼトワーン・ビトンが滅んだと言い切れるのですか?」

 オーヴは少し考えてから口を開く。

「俺は先程まで、魔物を討伐していた。しかし、途端に周りの風景が真っ白になった。……俺は常に強力なバリアで体を守っているから巻き込まれなかったが、俺が討伐しようとしていた魔物や周りはすべて消滅していたようだった」

……え?私の攻撃を防御できるってマジ?さすが最強。……じゃなくて!

 これは非常にまずい。また神様が言ったことに違反してしまう。

「もし君が女神だということが君の口から伝えられた時や誰かの口から言われた時、周りの人間が君を殺しにかかる可能性がある。……基本的に女神は恨まれているからな」

 とか言っていた。なぜ女神が恨まれているかはわからないが、とりあえず身バレはヤバそうだ。しかし、目の前にいる男は私の正体を突き止めようとしている。

……ディースの皆に勝手に勘違いされるのはいいけれど自分から名乗るのはまずいんだよ。

「もしかして君は女……」

「私の名前は鳳凰蘭真夜!十六歳!住職の娘!だけど仏像に潰されて転生した後、神様のペットが間違えて女神ボタンを押してステータスが女神になっただけのJK!」

 私はオーヴがまずいことを言う前に、全て言った。なんか言いすぎな気もするけれど、大丈夫な筈だ。

……まぁ、「女神」だということは言ってないし?JKとしか言ってないもん。

 いきなり喋って驚いたのか、衝撃の事実だったのか一瞬オーヴが固まったが、「なるほど。転生者か……」と呟いた。

……え?「転生者」ってちゃんと認識あるの?

 そうは思ったものの、聞く前にオーヴが喋った。

「すまないが、もう少し詳しく話を聞きたい。一緒に城にきてくれ」

……え?マ?

 すると、次の瞬間にはシュンという音とともに、目の前には違う景色が広がっていた。

……は?

 私は思考停止した。結構今までで一番な気がする。恐らく城にきたのだろうけれど、少し思うことがある。

……え?待って。展開早すぎない?

 城にきてくれ→シュン→城。早すぎる!全人類びっくりだぜ!?

……ってか、おじいちゃんついてきて……るわ。

 身長がちっちゃいおじいちゃんはオーヴに襟を掴まれて宙に浮いていた。そのおじいちゃんは白目をむいていた。

……あの一瞬で?凄すぎる。神業だわ。……じゃなくて!

 いくらなんでもおじいちゃんが可哀想である。今から処刑される人の処遇みたいだ。すると、オーヴが「ちょっと待っててくれ」と言い、おじいちゃんを持ったまま奥の部屋に入って行った。

……確かに頼りないけれど、いくらなんでも可哀想だよ!

 私は、おじいちゃんが無事に帰ってくるように祈ろうとしたが、すぐにオーヴが帰ってきてしまったので、考えるのをやめた。

「あっちの奥の部屋に来てくれ」

 オーヴはおじいちゃんが入っていったのとは違う部屋を指差して言った。

「……はい」


「頼む。俺達に協力してくれ!」

……いきなり何!? 

 部屋に入って、椅子に座って早々、謎の協力要請が来た。

……いやいや「奥の部屋に来てくれ」と言われた瞬間、死刑確定だと思ったんだけど!?「転生者」とか不穏な予感がしたし、顔が険しかったしね。

 けれども、むしろ歓迎された。Why?

……「協力してくれ」って具体的に何だろう。オーヴの強さなら魔王軍とかコテンパンじゃない?

「協力してくれ、と言われましても……何に協力したら良いのか分からないです」

「……実際のところ、君の口調は何なんだ?」

……あ。

 答えが返ってくる前に、口調のことを言われた。自分の身元がバレないように取り繕っていた筈なのに。

……あの時、勢いで色々言っちゃったからな。……ってか今思ったんだけど、口調女神風にした方が女神だってバレるくね!?

 これは完全に誤算だった。そもそも、最初はディースの皆を騙すために女神口調でいたけれど、もう女神口調はやめなければいけないだろう。もうバレてるけど。

「なんでもいいじゃないですか。続けてください」

「……」

 私はいつもの口調で、だけど一応王族らしいので一応敬意を持った言い方で聞いてみた。けれども、オーヴは嫌そうに顔をしかめた。

「君に協力してもらうのは、魔王軍の殲滅だ」

……え?魔王軍の殲滅?

 魔王軍の殲滅くらいなら別にオーヴ一人で十分ではないだろうか。何より私が行ってもお荷物だと思うし。私の疑問を他所に、オーヴはそのまま続ける。

「今、絶対俺一人で十分だと思っただろう?」

……うん?

「魔王軍は君が思うより……恐らく俺が思うよりも手強い」

……マジですか?

 え、どんくらい強いんだろうと私が考えていると、オーヴはまた続ける。

「マヤ……だっけ?」

「はい!?」

「マヤさん。君の女神の力が必要だ。頼む、協力してくれ」

……ちょっと待ってくださいよ。いくらなんでも急すぎますよ。なので――。

「……メリットはなんですか?」

「え?」

 無礼なことはわかっている。恐らく普通ならもう殺されていることはわかっている。だが――。

「私の利益がないじゃないですか!貴方は私のことを何でも了解するロボットだとでも思っているんですか!?」

「……」

 オーヴは黙り込んでしまった。関係ない。私の座右の銘「取れるもんは取れるときに取る」の名にかけて、絶対に利点を手に入れてやる。

「もう一度言います!私のメリットはなんですか!?財宝でもくれるんですか!?なんか伝授してもらえるんですか!?」

「君のメリットは、秘密が守られることだ」

「へ……?」

 秘密?なんかあったっけ?

「あの、秘密って?」

「君が『転生者』であり、『女神』ということだ」

……あ、やっぱりそれってヤバいことなんだ。

 どうやら、オーヴによると、転生者はめちゃくちゃ嫌われているらしい。なぜならば、たった一人で世界を勝手に救い、変え、その功績を称えて祀らなければならないかららしい。

……大変だね。こっちの世界の人も。

 だから、転生者だと判明した瞬間、こちらの住人たちは真っ先に襲いかかるらしい。

……怖っ!

 しかしながら、一つだけ疑問が残る。

……「女神」ってなんか悪いんですか?

 そうオーヴに質問してみると、予想外の答えが返ってきた。

「俺達にとって女神は……厄災だ」

……は?

 さっきから「は?」しか言っていないのは気のせいだろうか。いや、気のせいじゃない。自分がもともと住んでいた地球とゼトワーン・ビトンが全く違うということを再確認させられた気がする。私は少し険しい表情をして先を促す。

「昔こそは、人民に万物を与える女神らしい女神だったらしい。……しかし、ある時を境に万物を奪い、すべてを滅ぼす女神になってしまった」

……なんで?

 話を聞いてもよくわかんない。ちなみに、今その女神は魔王軍側についているらしい。

……もうむちゃくちゃだなぁ。もうこれカオスだろ……。

「というわけで、君の身は非常に危ない。……分かってくれたか?」

「分かりました。そして、協力します。最終的にその女神をぶっ倒せば私のイメージアップに繋がりますね!」

「うん、そうだな?」

 私は目標が定まった気がする。仏……とかよりも先に、まずはこの世界での平穏を保つために、女神をぶっ倒す。

「決まりだな。分かっているとは思うが、君の正体がバレたら非常にまずいことになる。なるべく人と会話しないように」

「何がまずいんだ?」

……ん?何の声だ?

 オーヴっぽい声だが、明らかに違う。少し低い。そして、オーヴの顔が真っ青になっている。なにかまずいのだろうか。

「まさか聞かれていたとは……!」

 次の瞬間、スーッと人が現れた。王様のような格好をしているが、あまりふくよかではなく、顔立ちはオーヴにとても似ている。

……もしかして。

「さぁ、話してもらおうか。オーヴよ」

「お父様……」

……やっぱり!国王?

 いきなり、私大ピンチである。

……やっぱり人の話って短いほうがいいよね?

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