第46話 教皇の最後の策謀
いよいよ、カウントダウンです。本日21時頃に、もう1話投稿します!
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魔王 エリオス・ローエングラム視点
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バサバサと羽音が消え、グリフォンとフェニックスが空の彼方に去っていった後、俺は途方に暮れていた。
いや、冗談じゃない。どうしてあいつら、あんな無責任なことを言って去るんだよ!?
もう誰が、「様」なんてつけてやるものか!
横目でピンキーを見ると、ふわふわとした尻尾を揺らしながら俺をじっと見つめていた。普段なら「どうした?」って気軽に声をかけるところだが、今は違う。
この空気は重い。グリフォンが余計なことを言ったせいで、俺の気持ちが全部バレてしまったんだ。
ピンキーも、俺も、なんとなく目を逸らしてしまう。
ギクシャク。
──そう、まさにこの言葉がぴったりだった。
「ピ、ピンキー? その……」
何か話しかけようとしても言葉が続かない。俺は勇気を振り絞っても声がうわずるばかり。
ピンキーはといえば、耳をピンと立てながら、いつもより少し真剣な表情だ。俺の気持ちを理解した……んだろうな。
好きだって気持ちが。
だけど、どうすればいいか分からない。魔王だろうが、俺だってまだ子供みたいなもんだし、ピンキーに恋愛感情とか分かるのか? それ以前に、ピンキーって本当に感情あるのか? 角ウサギ(みたいな)存在だし……。
そうこうしているうちに、ピンキーは口を開いた。
「……えりおす?」
「っ!!」
不意に名前を呼ばれて心臓が跳ねる。
フェニックスのおかげで声が出せるようになったピンキーから聞く言葉は、不思議なほど柔らかく響く。
「えっと……その……俺……」
な、何て言えばいいんだ? いきなり「好きだ!」って叫ぶのも違う気がするし。もごもご言いながら言葉を探していると、ピンキーは首をかしげる。
「だいじょぶ?」
「だ、大丈夫だ!」
──いや、全然大丈夫じゃない。むしろ最大級にピンチだ! 俺は頭を抱えたくなった。
そんなぎこちない日々が続いたある日、魔王城の防衛結界に異変が起こった。
「魔王様!」
リンベルが駆け込んできた。いつもは冷静な将軍が焦りを隠せない様子だ。
「どうした?」
「人間の気配があります。しかも教皇直属の精鋭部隊のようです」
「なに!?」
教皇――グレゴリウス三世。狂信的な聖国の頂点に立つ人物だ。
奴が直接動くなんて、普通じゃ考えられない。
「狙いは……俺か」
「おそらく。暗殺が目的だったのでしょう」
くそっ、厄介なことになった。
侵入者の正体が判明するや否や、城内は緊迫した空気に包まれた。結界の外で繰り広げられる
戦闘の音が遠くから聞こえてくる。
「魔王様、ここは私たちにお任せを」
リンベルが鋭い目つきで言い放つ。彼女の背後には、魔人族の精鋭兵士たちが控えていた。だが――
「ギャアアアッ!」
次々と兵士が聖魔法に飲み込まれ、消滅していく光景が見えた。教皇は狂ったように呪文を唱え、そのたびに純白の光が魔人たちを焼き尽くしていく。
「これが……聖国の『浄化の聖光』ってやつか!」
不死の大賢者ドゥラメルが前に出る。骸骨の体から冥府の闇を漂わせながら、教皇と対峙した。
「さぁて、老いぼれ教皇さん。アタシ相手にどこまでやれるか見せてもらおうじゃない」
ドゥラメルが不敵に笑い、魔法陣を展開する。
「冥府の盾!」
黒い結界が兵士たちを包み込んだ。だが――
「無駄だ!」
教皇の放った聖光が冥府の盾を貫いたが、ドゥラメルが素早く体をひねって躱した。
「冥府の鎖!」
ドゥラメルは続けざまに束縛の魔法陣を展開したが、その鎖ごと、教皇の放った聖光がドゥラメルの体を貫いた。
「ッ……!」
体半分が聖光に消し飛ばされ、ドゥラメルはその場に倒れ込む。
「しぶとい骸骨め。だがもう動けまい」
「ぐ……アタシとしたことが……」
リンベルが前に出た。
「勇者の剣、受けてもらうわよ!」
聖剣を振りかざし、教皇の魔法に対抗するが――
「聖光は、勇者の剣では切れないし、弾くことも出来ないのか!」
「くはっはは。それはそうじゃ。共に聖なる物、互いに邪魔はせぬわ」
「くっ……避けるしかないのか!」
リンベルが放つ魔法は聖光に飲み込まれ、一切、教皇に当たらない。
そして、また、近づくことも出来ないでいた。
「えりおす、あぶない」
気配を感じ取ったのか、ピンキーが俺の前に立つ。
「ピ、ピンキー!? 逃げろ!」
しかし、ピンキーは耳をピンと立てたまま動かない。教皇の放った聖魔法がピンキーを直撃する。
「ピンキーッ!!」
眩しい光が炸裂し、俺は思わず叫んだ。だが――
「えっ?」
ピンキーは無傷だった。教皇も驚愕して目を見開く。
「な、なんだと!? 聖魔法が効かないだと……? まさか貴様は――」
教皇が何かを言いかけたその瞬間、ピンキーがぽんっと一歩前に出た。
「プイ!」
いつものかわいい声と共に、教皇が消えた。
──静寂。
「ピ、ピンキー……お前、すごすぎだろ」
俺が呆然と呟くと、ピンキーはふわりと尻尾を揺らし、にっこり笑ったように見えた。
教皇グレゴリウス三世がピンキーによって消され、侵略の中心が消えた途端、魔王城に満ちていた
緊張感が音もなく霧散した。
「あ、あいつを……やったのか?」
リンベルが目を見開いて信じられないように呟く。彼女の手にはまだ勇者の剣が握られてる。
「終わった……のか?」
俺がつぶやくと、ピンキーはふわりと耳を揺らして俺に向かってこくりと頷く。
その瞬間、城のあちこちから歓声が上がった。
「勝ったぞォォォ!!」
「魔王様万歳!」
「人間どもめ、帰れ! いや、もう二度と来るな!」
兵士たちが次々と剣を掲げ、仲間同士で抱き合い、勝利の喜びを爆発させる。誰もが先ほどまでの死闘が嘘のように笑顔を浮かべていた。
「やりましたね、魔王様」
リンベルが疲れた表情を浮かべながらも微笑みかける。
「俺は何もしてない。やったのはピンキーだ」
そう言って俺は隣にいる小さな勇者――いや、この世界最強の死神ウサギに目を向けた。
ピンキーは控えめに耳をピコピコ動かしているだけだったが、兵士たちの視線はすでに彼女に集中していた。
「ピンキー様……」
「さすが神の使い……いやもう伝説の聖獣じゃないか?」
「やっぱりピンク色が偉大さの証なんだな!」
誰だその妙な解釈を言い出した奴は。
「おい、ピンキーはピンク色だから凄い訳ではないぞ?」
と俺がツッコむと、ピンキーが楽しそうに耳を揺らしていた。
ドゥラメルもいつの間にか復活しており、あっけらかんと笑う。
「いや~アタシもまだまだねぇ。まさか片っぽ吹き飛ばされるとは思わなかったわ。いやぁ、久々にスリリングだったわよ?」
「お前はもうちょっと慎重に動けよ」
「ふふ、怖がるなんてアタシのキャラじゃないでしょ?」
こいつは本当に不死身だからタチが悪い。
城内の賑やかな雰囲気はそのまま宴会ムードへと変わっていった。
城の広間ではテーブルが次々と並べられ、兵士たちや魔人族の住人が盛大な宴を始めていた。豪勢な肉料理やワインが並び、音楽が鳴り響く。
「魔王様! おめでとうございます!」
「乾杯だ!」
「ピンキー様にも乾杯を!」
俺もリンベルも、そして当然ピンキーも引っ張られるように宴に参加する羽目になった。
「エリオス様」
リンベルが俺にこっそり耳打ちしてきた。
「今日の魔王様、とってもカッコよかったですよ」
「……本当か?」
「ええ。でもやっぱり、かわいいのが一番ですね!」
「お、お前な!」
俺が抗議しようとする前に、兵士たちが再び声を上げた。
「魔王様、万歳!!」
歓声が響き渡り、俺は思わず苦笑いを浮かべる。
「……まぁ、たまにはこういうのも悪くないか」
ピンキーは相変わらず俺の隣で大人しく座っていたが、何となく楽しそうに見えた。
「ピンキー、ありがとうな」
そう言うと、ピンキーはにっこり笑う――いや、そんな気がした。
そしてこうして俺たちの国は、人間の脅威を完全に取り除き、新たな平和の時代へと歩み始めた。
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