第40話 撤退戦
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魔王軍幹部 リンベル将軍視点
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戦場を突き抜ける冷たい風が、血と鉄の臭いを運んでいた。
「リンベル、あんたも命知らずねぇ。そんな前線で剣振り回して、よくまだ生きてるじゃない?」
不死の大賢者ドゥラメルが肩をすくめながら、歩きにくそうに骨足を動かしている。古びたローブは既に何度も飛び散った血で汚れ、袖が裂けていた。
「皮肉を言う暇があるなら、こっちに魔法のひとつでも飛ばしてもらいたいんだけど?」
私の剣はすでに何度も信徒兵の血を吸い、刃こぼれしている。息が荒い。だが、まだ踏ん張る。
「まったくもう……こんな年寄りに頼らないでちょうだいな。はいはい、やっちゃうわよ」
ドゥラメルが冷たい声で呟くと、乾いた骨の指先が宙を舞った。
「冥府の盾」
黒紫色の結界が周囲に広がり、私たちを包み込む。
――ドォン!
突撃してきた信徒兵たちが次々と跳ね返された。
「さすがだ、ドゥラメル」
「言っとくけど、これずっと張り続けるのは無理だからね? 魔法ってのは便利なようで、案外燃費が悪いのよ」
私は結界の隙間から先を見据えた。
聖なる鎧に身を包む二人――聖の勇者リリアンと剣の勇者セドリック。
リリアンは笑みを浮かべながら信徒兵を癒し続けている。傷ついた兵士たちが次々と蘇る光景は悪夢そのものだ。
「やれやれ、何度倒しても湧いてくるわけだ」
私は息を吐き、剣を握り直した。
「突破するよ。道を開けて」
「んもぉ、わがままな子ねえ。仕方ないわ、ちょっとだけお手伝いするわよ」
ドゥラメルが指を弾く。
「冥府召喚」
地面から骸骨兵たちが次々と湧き上がり、信徒兵に突撃していった。
「リンベル、右よ!」
ドゥラメルの叫びが響いた瞬間、私は地面を蹴って横へ飛び退いた。
――ザシュッ!
先ほどまで私が立っていた場所がセドリックの剣によって真っ二つに裂かれている。
「……お前、いちいち重いんだよ、その剣!」
「逃がすか! 異端者!」
狂信的な笑みを浮かべ、再びセドリックが突っ込んでくる。
――速い!
剣の勇者の能力。攻撃が成功するたびに速度と威力が上昇する厄介極まりない能力だ。
私は彼の斬撃を紙一重でかわし、反撃の一撃を繰り出した。
「くっ……!」
しかし、剣は彼の鎧を掠めるだけで致命傷には届かない。
「次で終わりだ!」
「そう簡単にやられないよ!」
私は地面を強く踏みしめ、魔力を剣に込めた。
「裂けなさい!」
魔力の波動が周囲を揺るがし、衝撃波がセドリックを吹き飛ばす。
「やるじゃない」
ドゥラメルが骨の顎をカタカタ鳴らして笑った。
「だからさっさと逃げるって言ったでしょ? あんたってば本当に戦闘狂よねぇ」
「うるさいわね」
突破を目指して走る私たちの前方で、リリアンが静かに手を掲げた。
「サンクチュアリ……」
浄化結界が展開される。
「まずいわね」
ドゥラメルが忌々しげに呟いた。
「これじゃあ結界内の信徒兵が怪我を恐れず突っ込んでくるわけよ。全員ゾンビみたいなものね」
結界の中では兵士たちの傷が瞬時に癒え、恐れもなく突撃してくる。
「どうする?」
「決まってるだろ」
私は剣を掲げた。
「全力で逃げるのみ!」
新兵レベルだった近衛兵たちも、すでに戦場に慣れ始めていた。隊列を再編成し、槍を構える兵たちが信徒兵を迎え撃つ。
「リンベル! あたしも本気出しちゃうわよ!」
ドゥラメルが指を鳴らし、再び骸骨兵が大量に召喚される。
「砕けなさいっ!」
私は剣を振り抜き、魔力の衝撃波で結界を揺るがせた。
リリアンの表情が一瞬歪む。
バリン!! 大きなガラスが砕けるような音が鳴り響いた。
リリアンの張っていたサンクチュアリが破れたのだ。
「……ふぅ、何とか道が開いたわね」
「ったく、無茶ばっかり」
魔王城への逃げ道は確保できたが、後方ではまだ信徒兵と勇者たちが追撃を続けている。
「リンベル、後ろよ!」
ドゥラメルが叫ぶ。
私は剣を振り返し、迫り来る槍を弾いた。
「あー、もうこれ以上、時間は稼げないぞ」
私は部下たちに命じた。
「全員、最速で脱出しなさい! 私が殿を務める!」
「でも将軍――!」
「命令だ!」
部下たちは苦渋の表情を浮かべながらも、命令に従って脱出を開始する。
「さあ、最後のひと暴れだ!」
私は剣を強く握り、ドゥラメルと共に最後の防衛線を張った。
信徒兵が次々と突撃してくる。
「リンベル、行くわよ!」
「当然!」
不死の大賢者と女将軍――この二人が並び立ったとき、戦場は再び火の海となる。
「さあ、次はどこを切り崩そうかね!」
私は笑みを浮かべながら、再び地面を蹴った。
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