第37話 求める安息とは
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ピンキー視点
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夜空には無数の星が瞬き、涼やかな風が城の屋根を撫でていきます。エリオス君の腕の中で、その心地よい空気に包まれて、なんとなく幸せな気分でした。今日のわたしたちは特別な時間を過ごしています。
城下町では、祝賀の喧騒がまだ響いていました。槍国が攻めてきたあの日から、ついに魔王城の防衛に成功したのです。槍の勇者はわたしが捕まえて「収納」してしまったことで姿を消し、槍国の軍勢も大半が壊滅。かろうじて生き残った兵士たちも全員が傷を負い、撤退を余儀なくされました。
町は勝利の喜びに沸き立ち、魔王城でも豪華な祝宴が催されています。エリオス君はその騒がしい場から少し離れた場所でわたしを抱っこしながら、二人だけの静かな時間を楽しんでいました。
「ピンキー、今日は本当にお疲れさま。」
『大丈夫。エリオス、リンベル、無事よかった』
エリオス君の声に念話で答えます。たぶん「ププイー」という感じで答えても伝わったかも知れませんね。
「お前がいなかったら、正直どうなっていたかわからなかったよ。槍国の軍勢は強かった。でも……」
エリオス君はわたしを抱きしめる腕に少し力を込めました。
「ピンキーがいてくれたから勝てた。ありがとう」
「プーイ!」と大きな声で答えると、エリオス君は小さく笑います。その笑顔を見ると、わたしの胸の中にふわっと温かいものが広がりました。
その後、エリオス君はわたしを抱っこしたまま、城内を歩き始めました。豪華な装飾が施された廊下を進むと、祝賀の音楽や笑い声がだんだんと近づいてきます。広間では魔族たちが食事を楽しみ、踊り、勝利の喜びを分かち合っていました。
「魔王様、こちらでお待ちしておりました!」
明るい声で出迎えたのは、いつもお世話してくれてるメイドさんの一人です。彼女はわたしを見ると優しい笑顔を浮かべました。
「ピンキーも本当にすごいですね。魔王様をしっかりお守りしてくれて、感謝しています」
わたしは「プイ!」と誇らしげに返事をしました。言葉が伝わらなくても、その気持ちはきっと通じたはずです。
リンベル将軍も近くで酒を片手に笑っています。
「槍の勇者が、魔王様の許に行ったときは、生きた心地がしなかったよ。ピンキー、お前のおかげで助かった!」
「ププイ!」と嬉しそうに返すと、エリオス君がまた微笑みます。
「ピンキー、みんながお前のことをこんなに褒めてるんだぞ。誇らしいな」
わたしは照れ隠しにエリオス君の胸元に顔をうずめました。エリオス君はくすぐったそうに笑いながらわたしを優しく抱きしめ直します。
その後もわたしたちは祝賀の場をあちこち歩き回り、エリオス君はわたしを抱っこしたまま食事や踊りを楽しみました。周りの魔族たちはそんな二人の姿を微笑ましそうに見守っています。
「エリオス様とピンキー、本当にいいコンビですね」
メイドたちが楽しそうに囁き合う声が聞こえました。わたしはちょっと恥ずかしかったけれど、それ以上にエリオス君と一緒にいる時間が楽しくて仕方ありませんでした。
夜も更け、祝賀の賑わいが少しずつ静まっていく中、わたしたちはまた城の屋根の上に戻ってきました。
エリオス君がわたしを膝に乗せ、星空を見上げます。
「ピンキー、こんな安息の日が続くと良いな」
『うん!』
そう念話で答えると、エリオス君は満足そうに目を細めました。夜空の星々は変わらず輝いていて、わたしたち二人のこれからもまた、こんな穏やかな瞬間で満たされることを願わずにはいられませんでした。
風が優しく吹き抜ける中、わたしはエリオス君の温もりを感じながら、ずっとこの安息の時間が続けばいいなと思いました。
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聖国
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高い鐘楼から、響き渡る鐘の音が聖国全土に鳴り響いた。澄んだ音色であるはずなのに、その響きにはどこか歪んだ狂気が混じっているように思える。アグニウム教の教皇グレゴリウス三世は玉座に座したまま、両手を天へ向け、震える声で祈りを捧げていた。
「ヴァリオスよ…聖なる裁きの時が来た。我が信徒たちをあなたの御手で導き給え。殉教者たちに永遠の安息を与え給え!」
その姿はもはや聖職者というより、何かに取り憑かれた預言者のようだった。痩せこけた体は法衣の中で震え、白髪の頭には冷汗が滲んでいる。しかし、信者たちはその姿を「神の啓示を受けし者」として畏怖の念を抱いていた。
教皇の命により、魔王国への侵攻が「聖戦」として正式に宣言された日から、聖国は狂乱の渦に巻き込まれた。
「我らは殉教者となるのです! ヴァリオス様の信徒兵となって異端なる者を焼き尽くすのです!」
聖国の大広場では、戦場に赴く前の信者たちが集まっていた。教皇直属の司祭たちが壇上で祝福を与えながら叫ぶ。
「聖戦にて命を捧げる者の魂はヴァリオス様によって浄化され、永遠の安息を得るでしょう!」
群衆は歓声を上げた。その中には老若男女問わず、聖戦に参加しようとする者たちがいた。幼い子供までが剣を握りしめている姿に、誰も違和感を抱かない。
「ヴァリオスよ…」
一人の母親が祈る。彼女は自分の息子が先日戦場で命を落としたことを知っていたが、涙一つ流さなかった。
「息子は今、神の御許にいるのです。私もいつか、殉教者として共に安息の日を迎えるでしょう」
狂気と信仰が入り混じった民衆の姿は、もはや人間らしさを失っていた。
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