第19話 本当に将軍?
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魔王 エリオス・ローエングラム視点
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カザマスタ砦を無事解放できたので、次はアズガバン砦だ。
アズガバンは依然として弓国の兵に囲まれている。
あそこは、セリシアに指揮してもらっているけど、そこで問題が起きている。
彼は、見た目は強面で、体も大きく、いかにも強そうな虎型の獣人だ。訓練では、身体能力や戦闘能力はリンベルさえも上回る能力を持っているけど、その割には、少々、優柔不断なところがあって、決断すべき時に決めきれないことがあるのだ。
そこでケッシ―と言う猫型の獣人を副官として付けていたのだが、今回の戦いの中で、その副官が怪我をしてしまったようなのだ。おそらく、彼女無しでは危ない。
仕方が無い、勇者は居ないようだから、リンベルに行ってもらって、蹴散らしてもらうか! 俺の護衛はピンキーがいてくれれば大丈夫だろう。
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魔王軍 アズガバン砦 司令官 セリシア・ナイトフォール視点
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霧に包まれたアズガバン砦。その石造りの冷たい壁の中で、俺は額に汗を滲ませながら戦況図を睨んでいた。
人間たちの軍勢が砦を完全に包囲して数日。彼らの旗が風に踊り、俺たちに降伏を迫るかのように揺れている。だけど、そんな選択肢はない。
ケッシーのいない戦場が、これほどまでに孤独で苦しいものだとは思わなかった。
「……くそっ!」
手元の机を叩く。俺の拳の衝撃で戦況図の上に置かれた駒が揺れた。
ケッシーは、俺の副官であり頭脳でもある。彼女は、このような状況で的確な判断を示してくれる存在だった。それなのに、先日の防衛戦で、思わぬ負傷を追ってしまった。そのせいで今は医療室に伏せっている。
医者から「動かすのは無理だ」と言われたとき、俺は歯を食いしばることしかできなかった。
優柔不断。自分の弱点を、俺は誰よりも理解している。戦士としては身体能力も戦闘力も申し分ないと自負しているが、肝心の指揮となると途端に迷いが生じる。俺がケッシーにどれほど頼っていたか、その重みを痛感していた。
だが、このままでは砦は落ちる。そんな時だった。窓枠に一羽のカラスが現れた。
「これは、王城からの……」
カラスの脚につけられた筒を開くと、魔王城からの文が入っていた。
「リンベルを派遣する。到着次第、彼女の指揮に従え」
リンベル将軍――その名を見た瞬間、胸がざわめいた。彼女の評判は知っている。戦場では冷酷無比、戦略の天才と名高い女性だ。
彼女が来るなら、この状況は打開できるのかもしれない。だが、同時に俺は不安だった。俺自身の無能さを突きつけられることになるんじゃないかと。
夜になり、霧の中から彼女が現れたとき、俺はその不安が少しだけ和らいだ。赤い髪を後ろで束ねた彼女の姿は、静かで確固たる自信に満ちていた。
周囲の部下たちも全員、精鋭中の精鋭なのだろう。俺たちのような緊張感を見せる者はいない。
「リンベル将軍……到着をお待ちしておりました」
俺が声をかけると、彼女は冷ややかな青い目を俺に向けた。
「状況を報告しなさい」
冷静で簡潔な言葉。無駄が一切ない。俺は彼女にこれまでの経緯を説明したが、どこか歯切れが悪かった。ケッシーがいない今、俺自身が砦を動かしていると言えない状況に自信を持てなかったからだ。
だが、彼女はそんな俺の言葉を遮ることもなく最後まで聞き、鋭い目で地図を確認すると短く指示を出した。
「防衛兵力を再配置する。まず、包囲網に穴を作るための準備が必要だ。セシリア、あなたは最前線で指揮を取りなさい」
「……俺がですか?」
思わず問い返した。彼女は鋭い目で俺を見据え、静かに言った。
「あなたはこの砦の指揮官でしょう?自信がないなら、ここにいる意味がないわ」
その一言が胸に突き刺さった。
翌朝、俺たちは彼女の指示に従い動き出した。リンベル将軍の計画は見事だった。最前線に立ちながら、彼女の指示通りに動くうちに、俺は徐々に迷いを払拭していく自分を感じた。
人間たちの包囲網を破るべく、一か八かの突撃を指揮したときだった。敵の槍を一閃で弾き飛ばし、拳で馬をなぎ倒すたびに、俺の体は自然と動いていた。戦士としての本能が研ぎ澄まされていく。そして、それが周囲の兵士たちにも伝わったのか、みんなの士気がみるみるうちに上がっていった。
「セシリア様、中央の突破口が開きました!」
兵士の声が聞こえる。俺は振り返り、前線に向かって叫んだ。
「全員、俺に続け!」
その瞬間、俺は確かに自分自身を信じられた気がした。
数日間にわたる攻防の末、俺たちはついに包囲網を破り、人間たちを撤退に追い込むことに成功した。砦の中では歓声が響き渡り、俺も心の底から安堵の息をついた。
ケッシーの医療室を訪れたとき、彼女は弱々しくも笑みを浮かべていた。
「……よくやったわ、セシリア。あなたは強いもの」
その言葉を聞いたとき、俺はこみ上げるものを必死で押さえた。彼女が信じてくれた俺を、俺自身も信じられるようになった。
リンベル将軍は最後まで冷静だった。俺の感謝に対しても、彼女はただ一言だけ言った。
「次は、あなたが自分で砦を守り抜きなさいよ」
その言葉を胸に、俺は砦の壁に立ち、人間たちの軍勢が遠ざかるのを見つめていた。俺は変わった。いや、変わらなければいけない。ケッシーや砦のみんなのためにも、俺はこの戦場で立ち続ける。
霧の中、朝陽がうっすらと射し始めていた。それが未来への光のように感じられた。
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魔王軍幹部 リンベル将軍視点
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ぷはぁーー。疲れた!!
久々に将軍だったわ!!
私って、将軍ってガラじゃない気がするのよね。正直言って魔王様親衛隊隊長の方が向いていると思っている。
それにしても、勉強がてらに連れて行った兵士たちも、新米過ぎて何も理解出来なかったかな。とりあえず黙って立っていろと言っておいたら、本当に立っているだけだったな。これだったら、メイドを連れて行った方が役に立ったかもな。
まぁ、これでセリシアが頑張ってくれたら、アズガバン砦は何とかなるだろう。
ところで、虎型の獣人と猫型の獣人って結婚できるのか?
体格差が滅茶苦茶あるけど……まぁ、それもアリか!
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